野村総合研究所(NRI)は5月24日、2016年度までの「ビッグデータ」活用の進展とインパクトを予測した「ITロードマップ」を発表した。ハードウェアやソフトウェア技術の進化で、複雑かつ大規模なデータの分析処理が可能になり、企業の競争力の向上や社会問題の解決に役立つと予想する。
同社によると、ビッグデータとは、例えばソーシャルメディアで生成されるテキストや、携帯電話・スマートフォンに組み込まれたGPSから生成される位置情報、リアルタイムのセンサーデータなど、管理や処理が困難で複雑な構造を伴った大容量のデータ群を指す。企業が競争優位につなげたり、社会インフラを高度化しようしたりする動きが欧米を中心に活発化しているという。
その背景には、CPUの高性能化やマルチコア化、ディスクやメモリ価格の低下などのハードウェア面の進化と、膨大なデータを高速かつ安価に処理できる分散処理フレームワーク「Hadoop」などのソフトウェア技術の進化が挙げられるとしている。
ビッグデータの活用で、例えば顧客ごとに複数チャネルにわたる購買履歴や行動特性を詳細に分析して、適切な商品を提案したり、センサーデータをリアルタイムに分析して、電力需要や交通渋滞を高精度に予測したりといったことが可能になる。同社は2016年度までのビッグデータの活用について、次のような見通しを示した。
Googleが提唱した分散処理のプログラミングモデル「MapReduce」と、それをオープンソースとして実装したHadoopが注目を集めている。IBM、HP、EMCなど大手ITベンダーが相次いでデータウェアハウス(DWH)製品の新興ベンダーを買収したが、Hadoopをサポートした高いパフォーマンスを発揮するDWH専用マシンが必要としていた。クラウドコンピューティング上で、Hadoopを利用できるサービスや、GUIツールでHadoop用プログラムを比較的容易に開発できるツールなど、Hadoopを巡るエコシステムが急ピッチで拡大している。企業ではWebアクセスログやPOSデータなどの分析処理の効率化から活用されると考えられる。
DWHはトランザクションデータなどの構造化データだけでなく、Hadoopをサポートすることで非構造化データの処理も可能になる。企業は、自社のWebサイトを訪れた顧客の購買履歴や行動履歴、コンタクトセンターへの問合せ履歴などに加え、ソーシャルメディア上での顧客の声も分析することで、顧客の意図をより深く理解し、最適な商品を推奨したり、適切なクーポンを発行するといったキャンペーンを実施したりできるようになる。分析対象のデータも、企業内に蓄積された業務データやインターネット上のデータに加え、スマートメーターやRFID、各種センサーから収集される実世界のデータへと拡大する。これにより、交通渋滞のリアルタイム予測など新しいサービスの提供が開始されると考えられる。各種センサーから時々刻々と発生するデータに対するリアルタイム処理(ストリームデータ処理)に対するニーズが高まると予想される。
発生したデータを順次データベースなどに蓄積し、蓄積されたデータに対し、一括して集計・分析処理を行う従来の「ストック型」データ処理と、ストリームデータ処理のようなデータ発生時にメモリ上でリアルタイム処理を行う「フロー型」のデータ処理の融合が本格化する。例えば、各家庭に設置されたスマートメーターから収集した電力消費量データと気象情報など電力消費に関係するデータ、これらの過去のデータを組み合わせて分析し、リアルタイムの電力需要予測を行えるようになる。仮に電力不足が予想されれば、オフピーク時間帯の料金を大幅に割り引くなどのキャンペーンを実施して、家庭の電力需要をオフピーク時間帯に誘導し、社会全体の電力不足を回避できるようになると考えられる。
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