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» 2017年10月04日 06時00分 公開

どんなことに向いている? 10分で知る「ブロックチェーン」の使い道 (2/2)

[井上翔,ITmedia]
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勝手に履歴が残るので「トレーサビリティ」を実現しやすい

―― 情報のトレースというと、食料品のトレーサビリティを担保するためにブロックチェーンを使おうという試みも海外ではあると聞きます。日本国内でも実証事例はあるのでしょうか。

樋田氏 有名なものとしては、シビラ電通国際情報サービス(ISID)宮崎県綾町の3者で実施した野菜のトレーサビリティに関する事例があります。

 この事例ではブロックチェーンでトレースした野菜を実際に販売して、包装に付いたNFCタグかQRコードを読み取ると土壌や作付け時期まで確認できるようにしていました。

石原氏 ビットコインに当てはめると、送金情報を何もない所から作ることはできません。「Aさんが持っている5BTC(ビットコイン)から、Bさんに4BTCを送る」「Bさんはもらった4BTCの中からCさんに2BTCを送る」というように、取り引きは必ず連鎖(チェーン化)します。

 トランザクションを重ねることで勝手に履歴が残っていく上、それを後から改ざんできません。ブロックチェーン技術を応用をすることで、トレーサビリティのシステムを作りやすいのです。

野菜のトレーサビリティ 芝平、ISID、綾町の3者が行った実証実験の仕組み(ISIDのニュースリリースより引用)

メッセージサービスにも応用できる

―― 先ほど、FinTechから離れたブロックチェーンの利用法として「メッセージングやコミュニケーション」を挙げていましたが、あまりピンと来ません。どのように使うのですか。

石原氏 実は、弊社(電縁)が開発した「getherd(ギャザード)」というスマートフォンを使った安否確認サービスが、ブロックチェーン技術を応用しています。

 あらかじめ安否確認をしたい「友だち」のリストを作成をしておいて、相手にも登録してもらいます。災害が発生した時に安否情報をトランザクションとして登録すると、その情報がブロックチェーン上に残るので、自分の友だちの最新のトランザクションを検索して安否確認できます。

 ブロックチェーンで仮想通貨のやりとりをする場合、ユーザーには固有のアドレスが割り振られます。この仕組みを応用して、特定の相手にメッセージを送るということもできるのです。

getherd 石原氏が所属する電縁が開発したスマホアプリ「getherd」は、P2P式の災害安否情報共有サービス。ブロックチェーン技術を応用して作られた

ブロックチェーンは「公明正大」 しかし「万能」ではない

―― 他にもブロックチェーンを応用できることはたくさんありそうですね。

石原氏 弊社では三井住友海上と共同で損害保険の鑑定業務をブロックチェーン上で稼働するための実証実験を行っています。

 カジュアルな所では、SNSのアカウントとひも付ける形で、約束をブロックチェーンに登録しようという構想もあります。

樋田氏 海外では、音楽の著作権管理をブロックチェーンを使って行おうという試みもあります。絵画や漫画などをブロックチェーン上に登録して、権利関係の裏付けをしっかりできないかという話もあります。

 先ほどテキストメッセージをブロックチェーンで送る、という話もありましたがその応用で結婚証明をブロックチェーン上でやるという構想もあります。

―― これからブロックチェーンは、世の中をどう変えていくと思いますか。漠然としすぎていますが……。

樋田氏 ブロックチェーンは透明性が高く、改ざんも困難です。この特性を生かして、公明正大にいろいろなことができる基盤を築けるのではないかと考えています。例えば、公平に税金を納めるシステムをブロックチェーン上に築く、といった形で。

 一般的な人がブロックチェーンに直接触れることは、ほとんどないと思います。しかし、インターネット上にブロックチェーンのインフラが乗っかり、その上に私たちの生活が成り立つ――そんな世の中になっていくのではないでしょうか。

石原氏 ブロックチェーンじゃないと実現できないことは、実はあまり多くはありません。大変でも、やり方次第でブロックチェーン以外の手法で実現できることが大半です。

 しかし、ブロックチェーンを使うことで、より短時間でより高品質なシステムを構築できることもあります。

樋田氏 これ(ブロックチェーン)を使わなければいけない、ということはありませんが、メリットは間違いなくあります。だからこそ、いろいろな企業や団体がその使い方を模索しているのです。

石原氏 ブロックチェーンにも得意・不得意があります。何でもかんでもブロックチェーンを使って構築するのが正解とはいえません。例えば、(データへの)ランダムアクセスが必要な場合は、従来型のデータベース式のシステムの方が有利です。

 一方で、権利や権限の所在を明確にするなど、ワークフロー的なものにはブロックチェーンは最適です。個人的には、そのような使い方をするとブロックチェーンの未来は明るいと考えています。

 ただ、システムにブロックチェーンを採用する場合、やりとりするもの(トークン)と、それに付帯する情報の定義をしっかり検討しないとかえって使いづらくなってしまうので気を付けないといけません。

トークンの定義 ブロックチェーンはワークフロー的なものには最適だが、やりとりするものをしっかり吟味しないとかえって使いづらくなる可能性もある(画像提供:電縁)

 ブロックチェーンは、主に契約や権利・権限を明確にする用途での可能性がある反面、ランダムに情報へのアクセスが生じる場面など、用途的に不向きなこともあります。

 ともあれ、ブロックチェーンが私達の生活のバックボーンを支える技術であることには変わりありません。これからどのような進化を遂げるか、注目です。

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