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電子の歌姫誕生から10年 初音ミクが「キーボード」になった理由ボーカロイドキーボード開発秘話インタビュー(3/5 ページ)

» 2017年11月12日 09時00分 公開
[村田朱梨ITmedia]

――そうなると、楽器の形も変わりますね

濱野さん:最初は据え置き型でしたね。初代は基盤むき出しで、2代目も実は中身は変わっていません。初代をただ箱に納めただけという(笑) ニコニコ超会議に出すことになったので、さすがに基盤むき出しでお客さんに何かあったら大変ですし、壊れても嫌だと思いまして。

 今のようなショルダーキーボードに近い形になったのは4代目で、それが2013年の終わり頃。このあたりで歌詞の入力を諦め、「初めから入れておこう」と考えました。実は、ボーカロイドキーボードは自主開発で始めたもので、本業ではありません。普通の楽器も作りながらやっていたので、これだけで2年くらいかかってます。

photo 今の形に近く「ショルダーキーボード」っぽい見た目の4代目

――据え置き型からショルダーキーボード型になったのはなぜでしょう? ヤマハさんは電子ピアノなども出していますし、据え置きのままという発想もあったと思います

濱野さん:歌詞を先に入力することにしたタイミングで、コンセプトも考え直しました。カラオケでもバンドでも何でもいいのですが、本当に歌を歌う時って人前に立つじゃないですか。ステージの後ろや横の方にキーボードがあり、そこからボーカルが出るのって、何か違うなーと。

 それで、据え置き型じゃなく「持って演奏できるもの」「体で歌を表現できる形」がいいと思ったんです。デザインもショルダーキーボードというよりはむしろサックスのような管楽器がベースです。やっぱり、声を出すものなので。

――「キーボード」ではなく「ボーカル」だから、それに合わせた形にしたわけですね。となると、バンドをやる時には……

濱野さん:こいつを持ってセンターに立って歌ってもらうことになります。

photo ボーカロイドキーボードの使用イメージ

――なるほど。「先に済ませる」ことになった歌詞はアプリへ移動したわけですが、アプリでは何ができるのでしょうか

藤原さん:歌詞入力、VOCALOIDのパラメーター調整、ボーカロイドキーボードにはVOCALOID以外の音色も入っているのでその設定や、ボーカロイドキーボード全体の設定もできます。さまざまな機能をアプリが司っていて、楽器と連携する感じですね。

photo アプリ画面

――VOCALOIDを複数入れた場合、アプリから切り替えられるのですか?

藤原さん:そうですね。最初から入っているのはうちの「VY1」だけで、あとは「初音ミク」「Megpoid」「IA」「結月ゆかり」の4人のシンガーから、1人無料でダウンロードできます。有料になりますが、他の子も追加できます。

――シンガーはなぜこの5人になったんでしょうか? リリースが出た後、ネットでは「MEIKOがいない!」「KAITOは!?」といった声もありました

photo ボーカロイドキーボードに追加できるシンガー以外にも、VOCALOIDはたくさん(ヤマハのVOCALOID SHOPより)

藤原さん:いろいろ検討はしていました。このピンクの試作機を作った時は「1台に1人のライブラリ」と考えていたので、緑や黄色のキーボードもありました。でも、製品版として打ち出すにあたり、「いろいろな声を奏でられる」というコンセプトで、複数のライブラリを入れることにしました。そこで色も「誰の色にも染まらない」という意味で白にしたんです。

photo ピンク色の試作機はVY1のイメージ。ミクなら緑、リン・レンなら黄色の予定だったそうだ

藤原さん:ボーカロイドキーボードのVOCALOIDエンジンは、キーボード用に開発した「リアルタイム性に特化したもの」です。各社たくさんのキャラクターがいますが、キーボードとの相性や人気などをふまえて5人に決めました。発売後の反響によっては、他のライブラリの追加も検討していきたいと思っています。

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