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テクノロジーと融合した“新しい”楽器まとめ オモシロ楽器や定番楽器の「進化」も

» 2017年12月26日 10時45分 公開
[村田朱梨ITmedia]

 2017年は楽器が豊作だった――といってもただの楽器ではない。さまざまなテクノロジーと融合し、これまでにない形や機能を持った“新しい楽器”たちだ。

photo ヤマハの「Venova」
photo ローランドの「電子担ぎ太鼓」

「これは何?」 見た目から“新しい”楽器が登場

 「新しい楽器」は大きく分けて3パターンあった。1つは思わず「これは何?」と聞きたくなる見た目の楽器だ。ヤマハが2017年4月に欧州で発売し、日本でも8月から販売している「Venova」(ヴェノーヴァ)は、リコーダーのような見た目で、サクソフォンのような音が出る管楽器。ヤマハ独自の分枝パイプ構造や、サックスと同じ形状のマウスピースを備えており、「リコーダーに似たやさしい指づかい」で2オクターブを演奏できるという。価格はオープンで、1万800円程度(税込)。

photo 「Venova」(ヴェノーヴァ)
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 タカラトミーが6月に発売した「ペロっとアイスDJ」もユニークで、なんとアイスをなめると音が出る。「通電センサーの仕組みを食べ物に応用したら、食べる行為を遊びにつなげられるのではないか」と考え、電子楽器メーカーのKORGに相談し開発したという。

 市販のスティックアイスに対応(一部のアイスやチョコレートコーティングされたアイスなどは対象外)。本体にアイスをセットしたら、グリップ裏にある「通電スポット」に触りながらアイスをなめるだけで音が流れるという。内蔵ボイスが異なる「アゲアゲver.」「クールver.」の2種類を展開。価格はそれぞれ1380円(税別)。

photo ペロっとアイスDJ
photo 「アゲアゲver.」(左)と「クールver.」(右)

和太鼓やキーボードなど、楽器が「進化」

 2つ目は「見た目はそのまま、中身が進化した楽器」。8月にローランドが試作機を発表した「電子担ぎ太鼓」は、見た目こそ伝統的な和太鼓そのものだが、実は電子楽器。たたいた時の振動を、電子音源をならすための電気信号に変換して、ケーブルで外部接続した音源に伝えることで音が出る仕組みになっている。

 和太鼓だけでなくカホンやボンゴなどのパーカッション、スネアやバスドラムといったドラムセット、ピアノやストリングスなどの音も出せる。太鼓芸能集団「鼓童」と共同で開発した。ローランドは電子ドラムの開発で培ったノウハウを生かしたという。

photo 電子担ぎ太鼓
photo 演奏イメージ

 「見た目はキーボード、中身はVOCALOID」という「ボーカロイドキーボード」もヤマハから登場した。キーボードの演奏に合わせて初音ミクなどのボーカロイドが「歌ってくれる」。事前にPCソフトで入力するのではなく、歌詞はスマホアプリ、音は鍵盤でその場で入力するなど「リアルタイム性」にこだわって開発。「PCソフトは難しい」という人でも気軽に使えるよう工夫した。

 開発者や営業担当者によれば「音ゲーみたいな感覚で練習できる」という。オープン価格で、4万円前後を想定している。

photo 「ボーカロイドキーボード VKB-100」
photo 演奏イメージ
photo 最初から歌わせられるボーカロイド「VY1」と追加可能な4人のシンガー

楽器もスマホで楽しめる時代 「アプリになった楽器」たち

 最後は「アプリで楽しめる楽器」だ。KORGのアナログシンセサイザー「Mono/Poly」は、8月にiOSアプリ「iMono/Poly」になった。iPhoneとiPadの両方に最適化し、ポリフォニックモードでも4VCOがフルに利用できる他、KORGのDAW、KORG Gadgetにも対応。他の音源と組み合わせた内蔵音源として音楽制作に使えるという。

photo 「iMono/Poly」

 また、iPhoneやiPadで手軽に作曲ができるiOS版「GarageBand」には、琴や太鼓などの「和楽器」や、スケールには「日本」が追加され、さまざまな楽器で和風の演奏が可能になった。

photo 琴の拡大表示プレイ
photo 太鼓はDrumsのバリエーションとして追加

 iOS用のVOCALOIDアプリ「Mobile VOCALOID Editor」では、ついに「初音ミク」が使えるように。アプリ内で追加購入できるという。

photo Mobile VOCALOID Editorの中の初音ミク

 さらに「アプリと合わせて使う楽器」も登場。ヤマハのクラビノーバ「CSPシリーズ」は、楽器の切り替えやエフェクトの選択など、演奏以外のほとんどの操作をアプリから行う新しいスタイルの電子ピアノだ。スマホやタブレットに保存した曲から40種類の伴奏用のピアノ譜を自動作成する「オーディオ・トゥー・スコア機能」や、次に弾くべき鍵盤はどこかライトの点灯で教えてくれる「ストリームライツ」など、これまでの電子ピアノにはない新しい機能を備えている。価格は22万円(税別)から。

photo 「Clavinova CSP-170」のホワイトウッド調仕上げ
photo オーディオ・トゥー・スコア機能
photo ストリームライツ

 これまで「当たり前」だと思ってきた楽器の姿が、さまざまな形に変化した2017年。楽器以外の分野でもこうした変化は著しく、スピーカーはスマートスピーカーに進化し、フィクションの世界にしかいなかったロボットは現実になり始めた。来年はどんなものが私たちの常識を塗り替えてくれるのか、今から楽しみだ。

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