データと統計を元に、2018年はレバレッジドポートフォリオにトライした。レバレッジというのは借り入れをして投資金額をふくらませる手法で、リターンも上昇するがリスクも上昇する。あらかじめレバレッジをかけた複数のETFを組み合わせることで、シャープレシオと呼ばれるリスクあたりのリターンの向上を狙った。
「レバレッジETFが開始されてからずっと低金利だった。運用手数料を入れて、バックテストをするといいパフォーマンスだということが分かった。レバレッジは強欲なやり方というイメージがあるが、ぼくはシャープレシオを改善するのが目的だった」
レバレッジは借り入れを伴うため金利が上昇するとコスト負担が増加する。そのため現在はレバレッジドポートフォリオは休止しているが、世間一般の論調によらず、データを元に判断する姿勢がここにも現れている。現在は、市場に存在しているといわれる不合理な偏り、アノマリーを生かす投資方法を検討している。
「市場が効率的だと仮定するとありえない偏りが存在する。人気が集中しすぎるような株は割高になりすぎてスコアが悪くなるとか、過去1年の成績と、その後の株価の動きは正の相関をするとか。(アノマリーの1つといわれるバリュー投資も)直近10年を見ると、バリュー投資は機能していないが、2009年まで続いてきたのは見るべきところがある。2009年までのデータを見ると、これは偶然じゃない」
株式投資というと、企業の財務諸表を見て株価の妥当性を判断したり、事業内容を見て先行きを占う手法が過去は一般的だったが、さまざまなデータが入手しやすくなった現在では、個人でも統計を駆使することで、理論どおりになっていない市場のゆがみを投資に生かせるようになってきたのかもしれない。
ただし、資産運用でのお勧めは? と聞かれたら、「(全世界の株式に分散投資するETFである)VTでいいんじゃないか、と答えている」という。アノマリーの研究は知的好奇心でやっている面も大きいからだ。
「AIによる投資も増え、コンピュータを使う人も増えてきている。数字と数字の関係を見つけるのはコンピュータが最も得意とする作業。普通に考えたら、アノマリーはすぐに埋まってしまうというのが、持っておくべき感覚だと思う」
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