米Oracleは7月、パブリッククラウドサービス「Oracle Cloud」の提供基盤をユーザー企業のデータセンター内に構築し、社内で利用できるようにする新サービス「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」を発表した。フルマネージドサービスとして提供するため、ユーザーが運用管理をする必要はない。オンプレミスやエッジ側でパブリッククラウドと同様のサービスを利用できるようにする取り組みは、競合するクラウドベンダーも提供しているが、それらと比べ、Oracleの新しい取り組みはどのような違いがあるのだろうか。
Oracle Dedicated Region Cloud@Customerでは、サーバやストレージ、ネットワーク設備など、Oracle Cloudを構成するハードウェア群を、専用エリアを設定して丸ごとユーザー企業のデータセンターに置く。
提供基盤がOracleのデータセンターではなく手元にあるが、ユーザー企業はハードウェアインフラを意識することなく、パブリッククラウドのように利用できる。Oracle Cloudの管理コンソール上では、東京リージョンや大阪リージョンのように1つのリージョンのように見える。
「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)で構成されるパブリッククラウド環境を、顧客のデータセンターにコピー&ペーストするものだ」と、Oracle創業者でCTOのラリー・エリソン氏は語る。
レイテンシが低い点や、ユーザー企業がデータを外に出さず、自社のデータセンター内で保管できる点などのメリットもある。
Oracle Dedicated Region Cloud@Customerでは、「Oracle Autonomous Database」「Oracle Autonomous Linux」「Oracle ERP Cloud」など、SaaSを含む50種類超のOracle Cloudのサービスを動かせる。
このうち特に注目すべきなのが、Oracle Autonomous Databaseだ。これは、自動化されたデータベース、自動化されたインフラ、自動化されたデータセンターを組み合わせて構築する“自律型”のサービス。自動でパッチ適用がなされ、日常的な運用管理も自動化される。チューニングも自動化され、人が介在する必要はない。そのため運用管理の人件費は大きく削減され、人為的なミスも起きにくい。
「Autonomous Databaseでは人的な管理作業なし、人的なエラーなし、そしてデータ損失もなしだ」とエリソン氏は言う。
Oracle Dedicated Region Cloud@Customerのユーザーは、インフラの運用を気にすることなく、Autonomous Databaseの自律型のデータベースを使える。これは大きなメリットだと言えるだろう。
Oracleは以前から、データベース専用アプライアンス「Oracle Exadata」のハードウェアをユーザーのデータセンターに設置し、Oracleがリモートで管理するサービス「Oracle Exadata Cloud@Customer」を提供してきた。だが、同サービスはAutonomous Databaseに対応しておらず、ユーザーは手元で利用できなかった。今回はこの課題を解消した形だ。
Oracleはこれに合わせ、Oracle Exadata Cloud@Customerの刷新を発表。Oracle Dedicated Region Cloud@Customerと比べると動かせるサービスは限られるものの、Oracle Exadata Cloud@Customer単体でもAutonomous Databaseをユーザー企業の手元で動かせるようにするとしている。
昨今はこのように、クラウド基盤をなるべくユーザーの近くに置き、低レイテンシで利用できるようにするサービスがトレンドになりつつある。海外のカンファレンスなどでは、クラウドはもはや、ベンダーが離れた場所からインフラなどを提供するサービスではなく、テクノロジーそのものを指す言葉だとされている。データセンターの場所を問わず、仮想化やコンテナ技術を使って、アプリケーションの構築、利用を実現する。そのための技術がクラウドというわけだ。
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