と、ソニーのデジタル一眼レフが普通に進化を遂げたのはここまで。
2010年に大きく動く。ミラーレス一眼の誕生だ。
パナソニックが世界初のミラーレス一眼「DMC-G1」を世に出したのが2008年。翌2009年にはオリンパスが“PEN”の名を復活させた「E-P1」を出す。
3番目にミラーレス一眼を投入したのがソニーだ。
6月に発売された「NEX-3」と「NEX-5」である。一応「αNEX」ってことでαシリーズの位置付けではあったけど、一般には「NEXシリーズ」として知られる。
これがEマウントの誕生である。
特にNEX-5の斬新なボディは衝撃的で、これが意外と使いやすかったのである。
そして秋には「普通の一眼レフ」が終了する。
一眼レフの「レフ」は可動式ミラー(クイックリターンミラー)を用いて光学ファインダーに光を送り、撮影の瞬間だけミラーが上がってセンサーに光が当たって画像を作るという方式を指している。レフは「レフレックス」の略で「反射」という意味だ。
ソニーはそれを止めたのである。
代わりに搭載したのが「トランスルーセント・ミラーテクノロジー」。透過型のミラーを入れ、ほとんどの光は常時イメージセンサーに当たり、ほんの一部だけを上に反射させてAFセンサーに当てるという方式だ。
理屈上イメージセンサーに当たる光量がわずかに落ちるが、実用上問題ないレベルだった。
この方式だと「光学ファインダー」を使えない。その代わりにEVFを入れたのである。
ミラーは入っているので「一眼レフ」といえないことはないのだが、原理的には「ミラーレス一眼」そのもの。イメージセンサーに常時光を当て、そこから得た映像をファインダー(EVF)か背面のモニターで見ながら撮影するのだから。
この方式のメリットはAF。
当時、ミラーレス一眼はコントラスト検出AFのみで(当時は)AF速度も遅く、コンティニアスAFを苦手としていた。
トランスルーセントミラーなら、一眼レフ用の位相差AFセンサーをそのまま使えるのでAFも高速で、ミラーが動かない分連写も高速化しやすく、ミラーレス一眼のメリットであるホワイトバランスや露出を反映させた撮影をしやすいし、ボディ内手ブレ補正機構のメリットも生かせる(ボディ内手ブレ補正はセンサーを動かすので、光学ファインダーを覗いている間は補正が効かない)。
もう1つ、動画撮影時に有利だった。
その初号機が「α55」だ。
見た目は普通なんだけど、中身は一眼レフとミラーレス一眼のハイブリッドというか、一眼レフ風ミラーレスというか、そんな感じだったのだ。
その後、APS-Cサイズセンサーの主力モデルとして2011年にα77が、フルサイズセンサー搭載のハイエンド機として2012年に「α99」が登場。
かくしてソニーのデジタル一眼はAマウントのαシリーズと、ミラーレス一眼のαNEXシリーズの2本立てとなった。
が、それもつかの間、2014年にはフルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼「α7」が登場し、APS-Cサイズセンサーの「α3000」や「α6000」が登場してNEXという名がなくなってすべて「αシリーズ」になり、αの主力の座がAマウント機からEマウント機に移り始めたのである。
Aマウント機はその後、2014年のα77II、2016年のフルサイズセンサーのα99IIと主力機をバージョンアップしたところで、止まったままだ。
α99IIが発売されてまもなく5年。
現在のカメラ市場を考えると今後Aマウントの新型機が出るとは思えない。それぞれの国の状況によって変わってくるが(ミラーレス一眼への移行が遅いエリアは遅くまでラインアップに残るとか)、レンズはしばらく残るだろうが(マウントアダプターを介せばEマウントのカメラでも使えるし)、Aマウントのボディはラインアップから消えていくのだろう。
正直なところそれほどショックはない。2010年にミラーレス一眼を発売し、一眼レフに「トランスルーセント・ミラーテクノロジー」を採用した時点で、「あ、ソニーは明確にミラーレス一眼に向かっているな」「いずれミラーレス一眼に一本化しそうだな」となんとなく感じていたからだ。
そのときほんのりと見せていた未来を今しっかり実現してるのはすごいことだよなと思う。
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