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「音がいい」だけじゃ物足りない Qualcommの調査から見えたワイヤレスイヤフォンの未来像小寺信良のIT大作戦(6/6 ページ)

» 2021年09月06日 13時38分 公開
[小寺信良ITmedia]
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もう「音楽を聴くためだけ」ではない

 Qualcommの調査結果に戻ろう。購入に支配的な音質関連機能のうち、高い順からハイレゾ、ロスレスオーディオと続くのはこれまでの調査傾向と同様だが、意外にも聴力の補助といった使い方が同率2位となっている。この機能はこれまであまり注目されてこなかったが、潜在的にはかなり大きな期待感が市場にはあるようだ。

 それを裏付ける動きとして、5月に独Sennheiserのコンシューマー事業を買収したスイスSonovaが補聴器メーカーだったことが挙げられる。8月にはシャープが補聴器事業へ参入すると発表したが、製品の画像を見ると、まさに完全ワイヤレスイヤフォンそのものである。

photo シャープのワイヤレスイヤフォンスタイル補聴器「メディカルリスニングプラグ」

 これまで補聴器は、形状が目立つので人前で着けたくない、常時装着するには体に負担があるといった難点があったが、いつの間にか完全ワイヤレスイヤフォンの技術進歩が補聴器を追い越してしまった。

 昨今の完全ワイヤレスには、装着したままで外音取り込みモードに切り替わるものも増えており、イヤフォンを装着したままで会話する姿が不自然でなくなる可能性もある。そうなれば補聴器の利用者も、以前より抵抗感がなくなってくるだろう。

 今回の調査からワイヤレスオーディオ製品の未来像として見えてくるのは、もはや音楽を聴くためだけの装置ではなくなってきているということであろう。

 もちろんコロナ禍のストレスを和らげるために、日常的に音楽を聴くための装置として、完全ワイヤレスは負担の少ないオーディオ機器であることは変わらない。そうして常時装着しているという前提があるからこそ、通話品質や聴力補助機能といった機能も、同時に求められてくるわけだ。

 われわれは新製品のポイントとして、ハイレゾだロスレスだ3Dだというところに注目しがちだが、市場としてはより「総合力」を求めているようだ。「音がいい」というところ以外で勝負できる製品もまた、今後のワイヤレス製品市場を盛り上げていくことが予想される。

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