西田 じゃ、これで最後の質問にしようと思います。
今回のことって、矢崎さんにとって、良かった? 悪かった?
矢崎 今回のことは、本当に、私にとっては良かったことだと思っている。みんなにとっても、結果的には良かったと思う。
なぜならば、ダラダラと続いても、いつか終わるじゃない? 物事は。
西田 はい。
矢崎 で、このタイミングというのは、自分を見つめ直す良い転換期に、全員がなったと思うのね。
私はもう本当に、50歳を前にやめる、と決めていたから。アラウンド50ぐらいの、ちょっとした気のゆるみはあったんだけれども、こういうことでお尻に火がついて、きちんと決断できたし。
次に進みたかったから、自分にとってはすごく良いことだった。
ただ、唯一心残りだったのは、編集長のバトンをちゃんと後輩に渡したかった。
西田 そうか。
矢崎 それは心残りで、申し訳ないと。
あともう1つ心残りなのは、やっぱり、Ittousaiがね。
Engadgetの看板を背負い続けられなかったから、彼に、後継メディアとして、この後続いていくようなもののフロントマンをやってもらえるように、できる限りのことはやりたい。
西田 これも変な話なんですけど、彼って、Ittousaiというライターをやるよりも、Ittousaiというメディアをやったほうがいい人間なんだと思っているんですよね。
たぶん彼ぐらいの人間だから、ライターとしての引き抜きとか、いろんなところに寄稿してくださいという話は来ていると思うんですよ。でも、僕はそれが良いのかどうかはちょっと分からなくて。
むしろ、Engadgetでやっていたみたいに、「あるテイストで何かを作る」という、フロントマンのほうがいいんだろうな、という気はちょっとしています。
それはライターと同じ資質のように見えて、実は違う資質なんじゃないかと思っていて。そういう意味でも稀有な人だなと思っています。
矢崎 そう。Ittousaiはライターじゃないんだよね。ライターって感じではなくて、やっぱりIttousaiなんだよね。編集者でもライターでもなく、Ittousaiなんだよね。
西田 それはたぶん、ブログみたいなメディアが存在しなかったら出なかった個性だろうとは思うんですよ。そういう意味ではすごく時代性があって面白いなとは思うけど。
矢崎 面白い。天才は天才なんですよ。
彼自身がね、いい居場所、表現できる居場所というのをね……自分で見つけるのはちょっとあんまり得意じゃないみたいだから、そこは全力を尽くしてサポートしたいな、いうのがありますね。
5月某日、ある会社に取材に行くと、そこに矢崎さんの姿があった。
取材に行った企業とは「バルミューダ」。矢崎さんは4月にEngadget日本版発行元であるBoundlessを退社し、バルミューダでモノづくりに関わることになったのだ。
ここまでの彼の話も、これで納得がいくのではないだろうか。筆者も詳しく事情を聞いていたわけではないため、ちょっと驚いた。
彼は広報や広告の担当になるわけではないため、今後表に出てくることはあまりないだろう。しかし、彼らしいこだわりが同社の製品に反映されることを期待したい。
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