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契約書作成ツールはWordを超える? 法務SaaS完全理解マニュアル ContractS CLM&Hubble編リーガルテック最前線(4/4 ページ)

» 2022年12月26日 10時00分 公開
[武内俊介ITmedia]
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22年は日本におけるリーガルテック元年

 リーガルテックという言葉もかなり定義が曖昧であるため、「法務に関わるテクノロジー」程度の解像度でサービスを比較検討しようとすると、機能や思想はもちろん、提供しているサービスが全く異なるため、比較表すらも作ることができない。

 今回は電子契約、AI契約書レビュー、契約書の作成と管理、という主要な3つの分野に絞った上で、計6つのSaaSを紹介してきた。いずれも法務がデジタルシフトしていく上で、自社の課題や実現したい業務プロセスをしっかり洗い出した上で、導入を検討してもらいたい。

 そして、最後に強調しておきたいのは、リーガルテックによって法務業務が大きく変わることはない、ということである。電子契約サービスも既存の契約書締結を電子化したに過ぎず、AI契約書レビューもリスク判定や差異分析を高速化することがメインだ。契約プロセスは従来の流れのまま、それぞれがデジタル化することによってよりスムーズになり、時間と手間、コストが削減されるというものだ。

 リーガルテックが企業法務を膨大な事務作業から解放する方向でこれからも進化していくことは大いに期待するべきだが、AIが人間の代わりに業務をやってくれるという幻想をいただくにはまだテクノロジーの進化は発展途上にあり、弁護士法72条に違反する心配をする必要もない。過度な期待を抱かずに、まずは自社の業務プロセスをしっかりと棚卸しした上で、どこから改善していくかを決め、それに最適なサービスを選択するのが現時点でやるべきことである。

 リーガルテックに限らず、あらゆる領域でSaaSの機能は専門化・細分化が進み、業務プロセスの中で複数のSaaSを組み合わせることが求められるようになってきている。SaaS導入によって魔法のように業務が効率化することはない。必要なのはITリテラシーに加えて、その分野における経験と知識だ。SaaSのポテンシャルを最大限に発揮できるように、専門家が持つノウハウを使って業務プロセスを再構築することが重要である。

 22年は日本におけるリーガルテック元年と言われている。リーガルテックの進化はまだ始まったばかりだ。

執筆者 武内俊介 株式会社BYARD代表取締役、税理士

 

金融の企画部門、会計事務所、ベンチャーの管理部門を経て、税理士・業務設計士として独立。複数社への業務の再構築とITツールの導入支援を提供した後、株式会社BYARDを創業し、業務設計プラットフォーム・BYARDを開発・提供している。

 

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