まずは「集団投資スキーム持分」だ。保有することで利益が配分されるデジタルトークンは、株式や社債などと同様、有価証券と定義される。有価証券にはいろいろな種類があるが、次の3つのすべてに該当すると「集団投資スキーム持分」という有価証券に当たる。
「NFTスニーカーを買ってそれだけで収益が得られるなら集団投資スキーム。STEPNではここに“歩く“というワンクッションが入っているが、歩くだけというのは買っただけで配当が入ってくるのに近い。集団投資スキームに当たると考えるのが無難だ」と高井弁護士は言う。
NFTスニーカーが集団投資スキーム持分に当たるとすれば、その売買を業として行うには金融商品取引業のライセンスが必要になる。このことが、参入を難しくしている。
次に問題となるのが特定商取引法が定める「業務提供誘引販売」だ。これは「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で商品を売る取引を規制するために作られた法律だ。
「歩けば暗号資産が得られます。そのためにはNFTスニーカーが必要なので買ってください、これが業務提供誘引販売取引に当たるのではないか?」(高井弁護士)という懸念がある。
果たしてウォーキングやランニングは業務に当たるのか、スマホをいじったり走らせることが業務提供か? という疑問はあるものの「完全には否定できないので、一応当たり得ると考えるべき」だと高井弁護士は言う。
業務提供誘引販売取引に当たった場合の問題はクーリングオフの対象となることだ。クーリングオフは一定期間内なら契約を無条件で解除できる制度だが、「業務提供誘引販売にあたる場合、“紙”を送らないといけない。紙を送らないと消費者はいつまでもキャンセルできてしまうという落とし穴がある」(高井弁護士)という。
最後の賭博罪は、どんなNFTシューズが出てくるか分からないシューボックスのようなガチャが該当する。実際には、賭博罪に当たるかどうかは「利益の得喪」を争うかどうがポイントだ。これは、勝者が利益を得て敗者はこれを失うことを指す。
「これが生じなけれが賭博に当たらないが、事業者は躊躇(ちゅうちょ)してNFTガチャに踏み切れなかった」(高井弁護士)
しかし、22年10月にブロックチェーン関連5団体が共同でNFTガチャに関するガイドラインを策定(関連記事)。そこでは何も得られない「ハズレ」を明確に設定しない限り、得喪を争う関係は生じないとされた。
「1万円でガチャを引いたら、ハズレはなく最低1万円の価値のものが手に入るのなら、利益の得喪を争うことにならないということ」(高井弁護士)
これによってNFTガチャと賭博罪の問題はいったん解決したという。
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