先週のアクセス1位は、インターネットらしい、いい話だった。月面を探査中の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「SLIM」に関するストーリーだ。
SLIMの太陽電池パネルはシャープ製。1月20日の着陸直後は発電できていなかったため、シャープのX(旧Twitter)担当者が、「月面へ出張修理に行く」とXに投稿した。すると、それを見た同社の呉柏勲(ご・はくくん/ロバート・ウー)社長から、月面への出張申請を許可するという内容のメールが届いた、という内容だ。
冗談のような申し出が、社内の決済ルートではなくSNS発信を通じて上層部に届き、会ったこともないという社長からメールがくる流れは「SNSが人と人をつないだ」2000〜2010年ごろ、Web2.0時代をほうふつとさせてホッコリした。
筆者は2003年、Web2.0が提唱される直前ごろからWeb記者としてSNSを取材し続けてきた。その中で、場所や立場を超えた出会いや新しい創作が花開く様子を間近に見てきた。
だがその後、SNSは“ネット炎上”の中心地になり、誹謗中傷などのイメージがまとわりついてしまった。
ここ10年ほどは「まあ、そんなもんか」と諦め半分でSNSを使っていたのだが、この1カ月で考えが変わった。「ナナロク世代」と呼ばれるWeb2.0時代からのキーマンと再会する機会が増え、誰も諦めていないことを実感したためだ。
Web2.0世代は、1976年前後に生まれた人が多いため「ナナロク世代」と呼ばれているのだが、皆さんが口々に「ネットであたたかくつながれる場をつくりたい」といったことを話していたのだ。
その視線から今のインターネットを見つめ直すと、悪い場でもないとは思う。筆者はXやInstagramを通じて、すてきな創作者をたくさん知ったし、SpotifyやYouTubeMusicで新たなアーティストに出会った。ただ、「創作者とファン」「インフルエンサーとその他」みたいな上下関係に、どうしてもなってしまう。
ナナロク世代のインターネットには、インフルエンサーという言葉はなく、有名人と一般人が対等に語り合える場があった。“見知らぬ普通の人同士”がつながり、それがきっかけで、人生が少し変わったり大きく変わったりした。そんな場がまたあるとすてきだ。
この世代は40〜50代。影響力や決裁権を持っていることもある。みんなで同じ方向を向けば、少しでも何かを動かせるのではないか。今はそんなふうに思っている。
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