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テスラよ、日本を仲間外れにしないで モデル3オーナーのホンネ走るガジェット「Tesla」に乗ってます(3/3 ページ)

» 2024年03月26日 12時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
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先進性に見劣りを感じるTeslaの運転支援

 先日、別件取材でホンダの新型アコードの魅力について、本田技研工業の担当者にインタビューする機会を得ました。 印象的だったのは、「Honda SENSING 360(サンロクマル)」という高度運転支援機能とGoogleの音声認識AIに対応している点でした。1970年代に登場しユーザーの高齢化が進むアコードも、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)への道を確実に歩み、若い層への訴求を狙っていることを実感しました。

 SDVとして最先端を走っていたTeslaですが、ここ日本に限っていえば、その先進性に陰りが見え始めていることも同時に感じました。例えば、Tesla自慢の高度運転支援機能「オートパイロット」ですが、トヨタ、日産、ホンダ、スバルといった国産メーカーの同様の機能に追い付かれていることを感じます。

 例えば、高速道路でのハンズオフ機能などはその典型です。現行のオートパイロットではハンズオフはできません。オートレーンチェンジ機能についても43万6000円のオプション料金を支払う必要があり、国産メーカーに後れを取っていると言っていいでしょう。

 43万6000円を支払えば「エンハンスト オートパイロット」の名目で、現行のオートパイロットに追加してオートレーンチェンジ機能を追加できますが現状ではそれだけです。ユーザー感覚で言えば、オートレーンチェンジ程度なら、オートパイロットの基本機能として提供して欲しいものです。

エンハンスト オートパイロットの説明画面。現状、オートレーンチェンジ機能だけに43万6000円は払えない

 将来的には43万6000円のオプション料金の範囲内で、オートパーキング、サモン、エンハンスト サモン、ナビゲート オン オートパイロットをアップデート追加できるとあります。しかし、Teslaは、その提供時期を約束しているわけではありません。

 上位バージョンとして、87万1000円の「フルセルフドライビングケイパビリティ」を以前から提供していました。これは、前述のエンハンスト オートパイロットの機能に加え、信号機/一時停止標識コントロール、市街地でのオートステアリングを提供予定としています。

 しかし、これにしても、その提供時期を約束してはいません。筆者がModel 3を注文したのは2021年5月ですが、その際もフルセルフドライビングケイパビリティは選択可能でした。あれから3年がたとうとしていますが、いまだに追加機能は未提供のままです。「ケイパビリティ」(対応可能な能力あり)とはいえ、あんまりです。ちなみに、筆者は、オプション追加は見送りました。

 Teslaの文言を信じて、早期にフルセルフドライビングケイパビリティを購入したオーナーは大いに不満を募らせていることでしょう。また、驚いたことに、これらのオプション機能は、新たなTeslaの車両に買い換えた場合でも、引き継ぐことはできないルールです。

 フルセルフドライビングケイパビリティを購入したModel 3ユーザーの中には、2023年9月に登場した新型Model 3への乗り換えを検討している人もいるかと思いますが、87万1000円のオプションを新型へ引き継げないとなると、さらなる不満を募らせるのではないでしょうか。

 ただ、Teslaは、期間限定のキャンペーンとして、新しいTesla車両への買い換え時にフルセルフドライビングケイパビリティを引き継ぎ可能なサービスを実施しています。しかし、あくまでも期間限定のキャンペーンであり、恒久的な措置ではありません。まあ、ガス抜き程度の意味合いでしょう。

 米国では、Full Self Driving(FSD)βバージョン12の一般ユーザーへの提供が開始されました。FSDβバージョン12は、一般ユーザーの走行動画をもとに、全てニューラルネットによる学習で構築した自動運転プログラムです。

 YouTubeでは、一般ドライバーが投稿したと思われるFSDβバージョン12のドライブレコーダー映像を多く見ることができます。フリーウエイでのハンズオフ自動運転走行はもちろん、駐車車両、工事現場、一時停止標識、歩行者など、障害物だらけの混雑した市街地において、ナビ設定した目的地に向かってハンズオフで走行している映像があり、その先進性に驚きを禁じ得ません。

ハザードを付けて停車する郵便車両の後ろでスタックしてしまい、ドライバーによる介入を余儀なくされたのはご愛嬌

 日本の現行法規制下では、FSDβバージョン12をそのまま適用できない事情があるのかもしれません。例えば、国交省の検討会では以前「自動運転を実装するにあたっては、LiDAR(ライダー)やHDマップが必須」といった意見もあったようですが、もしそれが適用されると、ビジョン方式(カメラだけで周囲を監視)するTeslaのFSDβバージョン12は、いつまでたっても論外ということになります。

 日本においては、圧倒的先進性に陰りが見え始めたSDVとしてのTeslaですが、国産車に負けない運転支援機能を早期に提供して欲しいものです。そうしなければ、Teslaを「嫌い」になってしまうかもしれません。

著者プロフィール

山崎潤一郎

音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla


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