先週のアクセス1位は、KADOKAWAが2026年3月期通期決算が大幅減益だった背景を、同社が決算資料で説明している内容を紹介した記事だった。
同期の連結営業利益は前期からほぼ半減の81億円、主力の出版事業が不振で、希望退職も募集している。
筆頭株主である香港のファンド、オアシス・マネジメントは、2021年の夏野剛CEO就任から業績が下がり続けているとし、同氏の解任を提案。夏野氏の経営を問題視する133ページもの資料を公表し、6月24日の株主総会で賛同するよう求めている。
それによると、5年の在任期間中に1株当たり純利益(EPS)が89%減少し、自己資本利益率(ROE)が8.2%から0.5%に低下した。出版・IP創出事業の営業利益率が13.1%から2.6%に悪化した点や、「ELDEN RING」の海外パブリッシングを外部に委託し利益が社外に流出している点なども問題視している。
まず出版事業について、KADOKAWA自身は決算説明資料で、「なろう・異世界系に偏重していた」と説明するが、悪いのはジャンルではない、という指摘が多方面から出ている。
実際、同じ異世界系でも、講談社は「転生したらスライムだった件」コミカライズで累計5600万部(2025年6月時点)を突破。アルファポリス(東証グロース)は「月が導く異世界道中」などの異世界ものが主力だが、2026年3月期は売上高166億円、営業利益34億円で9期連続増収・3期連続最高益更新している。
こうして見ると、ジャンルそのものが低調なわけではない。夏野体制下で行われた“質より量”を追求する出し方が問題だった、というオアシスの指摘は見逃せない。
出版事業は散々だが、2026年3月期の業績をセグメント別に見てみると、ちょっと違う景色も見える。
ドワンゴ発のWebサービス事業(営業利益21億円)と、ドワンゴ創業者である川上量生氏が立ち上げた教育事業(同28億円)だけで、全体の営業利益(81億円)の約6割を稼いでいるのだ。
ニコニコを含むWebサービス事業は前年のサイバー攻撃による赤字から黒字転換した。ニコニコは、ドワンゴがKADOKAWAと合併する前の2008年、夏野氏が「黒字化担当」としてドワンゴに招かれ、2010年に初の黒字化を実現させた事業だ。
また、「N高」「N中」をはじめとした教育事業の成長率は目覚ましい。売上高171億円(+13.5%)、営業利益28億円(+19.4%)で4期連続の増収増益。2025年にはZEN大学も開学し、25年10月時点で4200人超が在籍しているという。
それぞれ川上氏肝いりの事業だが、川上氏は夏野氏を「もっと大きな舞台で指揮を執るべき人」と評し(※1)、「経営は夏野さんに任せて、自分は新規事業に集中するのが1番結果を出せる」とも語るなど、その手腕を高く評価していた(※2)。(※1)2020年、電ファミニコゲーマー「カドカワの社長退任や『シン・ゴジラ』の舞台裏、そして教育事業に賭ける情熱とは?──川上量生・特別インタビュー」より (※2)2020年、BUSINESS INSIDER 「【独占】N高が教育ビジネスで“勝つ”理由 ── 川上量生氏が“ついでに”目指す「脱受験教育」」より。
出版が異世界に転生しすぎている間に、教育とニコニコが屋台骨を支えているKADOKAWA。業績を全体として見ると低調で、出版の不振を招いた責任は夏野氏にもあるだろう。だが好調な事業への夏野氏の貢献をどう見るか。解任議案が採決される株主総会は、6月24日だ。
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