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» 2004年01月22日 20時55分 公開

2004年のAMDが模索する「PC」と「非PC」のバランス

黒字決算で強気の発言が目立ったAMDの「2004 Kickoff Press Conference」 AMDの記者会見で必ず飛び出す「競合他社」への痛烈なコメントが、今回それほどでもなかったのも「余裕」の表れかもしれない。

[長浜和也,ITmedia]

 日本AMDは、米国で発表された2003年第4四半期決算内容と2004年における事業展開の国内向け説明会を1月22日に行った。冒頭に登場した日本AMD代表取締役社長の堺和夫氏が「やっと儲かりました」と発言したように、純利益4300万ドルと四半期ベースで久しぶりに黒字に転換したAMD。

 堺氏は続けて「皆さんは心配しているようですが、我々はお金も持っています」とキャッシュフローも第3四半期比22%増の13億ドルと増えているなど、AMDの体力が順調に回復していることをアピールした。

日本AMD代表取締役社長 堺和夫氏

 この体力回復の理由として、AMDは「景気が悪いときにこそ、AMDは体力回復のために投資をしてきた。その努力がやっと花を開いた」(日本AMD 取締役 吉沢俊介氏)と研究開発関連の積極的な投資を挙げている。とくに第4四半期に限ってみても、研究開発費が6%増の約2億2700万ドル、設備投資が19%増の1億6400万ドルとなっている。

 「総売上げの32%という高い比率を研究開発と設備投資に充てている。苦しいときにこそ将来への投資を行うのがAMDの精神である」(吉沢氏)

 2003年におけるAMDのCPU事業は「AMD64」に終始したといえるが、2004年も引き続き「64ビットコンピューティング」が主要な、そして唯一のキーワードとなるようだ。堺氏のスピーチも吉沢氏のスピーチも、「すべてのレンジで64ビットコンピューティングを展開し、32ビットから64ビットへのシームレスな移行を可能にする」(堺氏)「今年は64ビットコンピューティングが本格的に普及する年になる。選択するのは我々でなくクライアントであり、インダストリーだ」(吉沢氏)と、主張する内容は昨年とほぼ同じでとくに目新しいものではない。

日本AMD取締役 吉沢俊介氏

 ただ、それでも「まもなく登場する予定のWindows XPのServicePack2には、OSとCPUが協調してウィルスプロテクトを実行する機能が実装される」(日本AMD CPGプロダクトマーケティング部部長代理 秋山一雄氏)といった新機能や、今年後半から投入される90ナノプロセス採用の新コア「Athens」「Troy」「Venus」(以上Opteron向け開発コード)「San Diego」(Athlon 64 FX向け開発コード)「Winchester」(Athlon 64向け開発コード)などが2004年に予定されている。

日本AMD CPGプロダクトマーケティング部部長代理 秋山一雄氏
AMDのCPUロードマップ。Athlon MPとDuronは「市場の需要次第」。32ビットCPU「Athlon XP」「Athlon XP-M」は2005年の後半に90ナノプロセスが採用される予定になっている

 2004年における事業展開の説明で、主力たるCPU以上に力が入っていたのが、フラッシュメモリや、AMDが第三の事業と考えている「PCS」(Personal Connectivity Solutions)といった「非PC向け製品事業」。

 Memory Groupが進めているフラッシュメモリの事業については、売り上げが第三四半期比で34%増、前年度比では実に161%増と、CPUを中心とするCPG(Computaion Product Group)の第三四半期比15%増を上回る急速な伸びを示している。AMDも「フラッシュメモリはとにかく勢いがある」(吉田氏)とその絶好調ぶりを強調。売り上げ規模も約5億6600万ドルと、CPGの売り上げ規模(約5億8100万ドル)に迫るまでに成長した。2004年には需要増加に対応するため、フラッシュメモリの製造能力を増強し128Mビット換算で60%引き上げる。

 フラッシュメモリの「SPANSION」、MIPSをコアにした「Alchemy」、そして昨年National Semiconductorから取得した「Geode」と、非PC向け製品で構成されるPCSの事業展開を紹介した日本AMD PCS本部長の中島裕氏は、「テクノロジー中心ではなく、ユーザーが必要とするものを提供し、さらに“どう使う”“どのように役に立つ”といったソリューションを提供していく」と開発のスタンスを述べながら、MPEG-4再生やCFスロット、ワイヤレスLANをサポートしたエンターテイメントプレーヤーとして使える次世代PDAや、Geodeを搭載してPCと同じOSが動作する「PDAとは異なる、PCのようなHandheld端末」(中島氏)を、PCSがターゲットとして期待する製品として紹介した。

「次世代PDA」を手にPCSの事業展開を説明する日本AMD PCS本部長 中島裕氏
スライドで紹介された次世代Handheld端末。Geodeを搭載してPCと同じ環境で動作させる

 久々の黒字決算となったためか、終始、笑顔と強気の発言が続いた説明会だったが、それでも不安材料がないわけではない。一つには多くの半導体ベンダーが本格的に立ち上げる300ミリウエハーについて、AMDは現在建設中のFab36が稼動する2006年まで参入できない。2004〜2005年にかけて成長が予測されている半導体市場も、2006年にいったん落ち着きを見せるといわれているが、Fab36は市場の成長フェーズに間に合わないことになる。

 また、PCSのターゲットとして想定しているのが、PDAにHandHeld端末と現在縮小傾向にある製品であることも、これからの成長を考えるとやや厳しいのではないだろうか。

 この件について中島氏は「やっとインフラとコンテンツが整備され、これから普及段階に向かう」と述べ、吉沢氏も「PDAやHanlheldに関しては、第2の盛り上がりを迎えているのではないだろうか。これからは従来のPDAではなく、ユーザーが求める新しい機能をサポートした新しい端末が普及する」と答えている。

 吉田氏は300ミリウエハーの参入時期についても「確かに2006年に半導体市場は厳しい局面を迎えるかもしれない。しかし、AMDは状況に合わせて、最も適切な量を投入するようになるだろう」という見通しを明らかにした。

会場にはサンマイクロシステムズ代表取締役社長のダン・ミラー氏も駆けつけた。「第4四半期の最も大きなニュース」とAMDが評価する戦略提携について「サンも64ビットコンピューティングを独自に進めているが、一部のユーザーは代替えソリューションを望んでいる。以前クレイからSPARC事業を吸収して、サンが革新的なメインフレームを投入できたように、AMDとの提携も成功するだろう」と述べている

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