去年の陰鬱さがウソのように、2004年はあっさり梅雨明け。あっという間に夏のうだるような暑さが充満し、花火の季節がやってきた。昨年は花火もあまり売れなくて大変だったようだけど、今年はそんなことありますまい。
花火といえば打ち上げ花火と線香花火。どちらも夏の風物詩で避けられないので両方ともいこう。特に打ち上げ花火の撮影は、もう打ち上げ花火マニアがいるくらい好きな人は大好きなジャンルで、それだけきれいに撮るのは難しくて、なおかつうまく撮れたときの気持ちよさは大きい。何千、何万発も連続して上がる中で、とっておきの1枚を撮るのは非常に難しいのだ。
だからまずは打ち上げ花火から。
打ち上げ花火の撮影に必要なのは、一も二もなく「三脚」。これは間違いない。打ち上げ花火は非常に明るく見えるけれども、あれは真っ暗な夜空に打ち上がるから相対的に明るさが増すだけで、実際には夜の屋外なのだ。だからシャッタースピードをかなり遅くしないと鮮やかなあの色は出ない。
もうひとつ、花火は火の粉が弧を描いて飛んでいく軌跡が美しい。光の軌跡を撮るにはやはりシャッタースピードがそれなりに遅くなければならない。1〜2秒が最適だ。
よって、三脚がないとどうしようもないのである。それもあまりに細くて安価な三脚だと1秒は持たないし、シャッターを押した時の振動すら拾ってしまうので、それなりに頑丈なものがおすすめだ。ただ使うカメラはコンパクト機でいいので、一眼レフ用の大きくて重いものじゃなくても平気だ。
花火会場についたら、いい場所を確保して三脚をセットし、カメラを置く。そしてセッティングをする。まずスローシャッターが使えるデジカメは必須。最適なシャッタースピードは2秒前後だ。あまりに遅いと花火よりも爆発になっちゃう。逆にシャッタースピードが速いと花火がかすかにしか写らない。カメラに「打ち上げ花火モード」があればそれを使うのもいいが、もしなければいろんな機能を駆使して、最適なセッティングを見つけよう。
もしリモコンが使えるデジカメならシャッターを手で押すより、リモコンを使った方がブレなくていい。
1番目は、ソニーのDSC-W1を使って撮った写真。DSC-W1はマニュアル露出モードを持っているので、シャッタースピードは2秒、絞り値はF7、ISO感度は100、ホワイトバランスは太陽光に固定した。参考にして欲しい。マニュアル露出でちゃんとセットし、タイミングが合えば、これだけきれいに撮れるのだ、という参考に。
マニュアル露出が使えないときは、夜景モードにするのもよい。ただ、機種にとっては背景の暗さ(背景は夜空なので非常に暗いのだ)にひっぱられて、無理矢理明るく撮ろうとしちゃうことがある。つまり明るく撮ろうとしすぎちゃうのだ。そういうときはマイナスの露出補正をかけてみるのも手。
2番目はカシオのEXILIM Z40の花火モードで撮った写真。シャッタースピードは2秒でF2.8だった。これだとちょっと明るく撮れすぎていて、煙がたくさん写ってしまっている。
花火大会によって違いはあるが、昨今の都会の花火は1発1発の風情よりも連続でバンバン打ち上げて迫力を楽しむという演出が多くて、そういうときは空中に前の花火の煙が残ってしまって、夜空がきれいに撮れないことが多いのだ。
さらに明るく撮るとどうなるか。キヤノンのIXY DIGITAL 500は「長秒時撮影」機能を持っているので、それを使って6秒間という超スローシャッターで撮ってみた。
ISO感度は50でF2.8。6秒もシャッタースピードを遅くすると花火というより爆発か、というほど派手な写真になる。特に花火が連続で上がっていると(この写真だけでもいくつの花火が写っているか)、明るいところが白飛びし、空は前の花火が残した煙だらけという具合。
まことに花火は難しい。コンパクトデジカメの場合、機種によって暗いところにどれだけ対処できるかは違ってくるので一概にはいえないが、マニュアル露出が可能ならそれで、ダメなら花火モードや夜景モードを使い、できればISO感度は固定してマイナスの露出補正をかけるくらいがいいだろう。
もっとも、それより重要なのが構図とシャッターチャンス。
何しろ打ち上げ花火は同じところから連続で打ち上げるわけではなく、ある程度の範囲に打ち上げ用の筒をいくつも用意して打ち上げるため、カメラを構えて狙っていた場所と実際に打ち上がった場所がずれてはしょうがないし、花火の上がる高さも違うので狙った構図で捉えるのは難しいのだ。広角気味にして地面を入れると花火の高さがわかるし、ちょっと望遠気味にして花火を大きく入れると迫力がある。
シャッターを押すタイミングも難しい。速すぎると花火が広がった一番迫力ある瞬間を逃すし、遅いと、気が抜けた花火になっちゃう。慣れないと難しいので、たくさんの失敗の中に成功した写真が何枚か入っていればOKという感じで撮ろう。いくらでも失敗できるのはデジカメのよさだ。
(協力:横浜開港祭)
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