あるアキバPCパーツショップ店員のA氏。
東京中野区に住み、早朝に満員電車で出勤し、終電後にタクシーで帰宅する日もある。夜は早いというイメージもあるアキバではあるが、店員となれば仕入れや棚卸し、Webの更新といった雑務でここまで遅くなってしまうこともある。
だが、アキバそしてPCが好きなのでこの仕事が嫌なわけではないし、休日には一般のお客としてアキバに出かける――つまりほぼ毎日アキバに行く。そのような“リアルアキバ人”であれば、いっそアキバに住んでしまった方が楽そうなものだが、それをしていない。
ほかのアキバショップ店員氏らにアキバに住みたいか聞いてみても、8割以上がノーと答える。
その理由は、
などさまざまだが、つまるところ「アキバは住む街ではない」と考えているようだ。
一方、イエスと答えた人であっても
という理由で断念しているという。先に挙げた中野区在住の店員氏もこの理由を挙げている。
第三者として話だけを聞くと、たしかに住みにくいのではとも思われる街なのだが、実際にはどうなのだろうか。
アキバを歩き回るとやはり、PCパーツショップに家電量販店、アニメショップにPCパーツメーカーなどの入るオフィスビルが印象に残る。ただしそれは仕事として行っているからかもしれず、改めて眺めると、アキバのメインストリートとなる中央通りから離れれば民家やマンションなども結構ある気がする。
世界的にも有名な電気街だけに、街の要素が商業側に偏っているのは否めない。ちなみに、秋葉原電気街振興会Webサイト内にある秋葉原の歴史を紹介するコーナー「Akihabara History」は、戦前・戦後から現在におけるアキバの歴史が紹介されており、かなりおもしろい。ご一読をお勧めする。
ただしいくら商業地として偏っている感があるといっても、例えば銀座などの高級商業地区と比べれば高額所得者でなくても住める余地はあるはずだ。
実際住んでいる人ももちろん存在する。実際にアキバに在住する人に話を聞いた。
アキバの大手PCパーツショップの一つ「T-ZONE. PC DIY SHOP」店員のT氏だ。T氏は同ショップから歩いて2分にある、とあるビルに住む。PCパーツショップ密集エリアのど真ん中だ。
――日々の生活で不便に思うことはありますか。
「2年間アキバに住んでいますが、特に不便を感じたことはありません。コンビニは普通にありますし、スーパーであれば24時間営業のハナマサがありますし、先日、深夜営業も行うディスカウントストアのドン・キホーテもできたので、衣・食に関して困ることはほとんどありませんね」
ハナマサとは、JR山手線の御徒町駅方面高架下に店を構える(どちらかといえば)業務用向けのスーパーだ。レトルト食品や保存食材などは業務用で量も多いが、肉や野菜は小分けして販売もされているるため、個人的な需要も十分満たしてくれるという。また24時間営業なので、夜遅くに買い出しに行けるのはうれしいらしい。
また最近世間を賑わしてはいるが、深夜5時まで営業するディスカウントストア「ドン・キホーテ」が、24時間スーパーを便利だと思う人にとって同じく便利なのはご存じの通り。衣類や家具もあり、その気になればすべての生活必需品はここで揃う。アキバらしさがない普通のドンキと評されることもある同秋葉原店であるが、T氏は逆にそうでなければ困るという。
もちろん、いつも同じ店だけで済ますわけではない。
――いつも同じ店だけでは飽きませんか。
「いえいえ。上野かアメ横が近いので、休日にはよく行きます。中央通りをまっすぐ進むだけ、自転車なら数分ですから」
T氏の感想と実地検証から「スーパーなど、生活に必要な店が少なすぎる」ということは当てはまらないと言える。むしろ、アメ横やデパートの松坂屋上野店、上野ABAB、JR秋葉原駅南側には書泉ブックタワーといった大型の店舗も存在する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.