そもそも、HPは1992年にアップルコンピュータがNewton MessagePadを引っさげてPDAの概念を提唱する前から、この手のPIM製品を世に出しており、造詣が深い。ベテランユーザーの中には、DOSベースのPIM製品として高い人気を集めたHP 200LXに、深い思い入れを持っている人もいるだろう。さらにさかのぼれば、関数電卓や金融電卓などでお世話になった人も多いはずだ(米国では今でも発売しているが、日本では2002年に自社製電卓の発売を終えた)。
話が横道にそれてしまったが、電卓やパームトップコンピュータ、そしてPDAと形を変えつつも、同社の小型端末への情熱は絶えることなく今でも続いており、下の写真にもあるようにさまざまな製品が投入されている。
かつてPDAといえば、OS別にPalm、Windows CE、独自仕様のZaurusと選択肢は豊富だった。ところが、Palm Computing(現PalmOneとPalmSource)が2002年に日本を撤退、今年2月にはソニーが自社製PDAのCLIEシリーズの新機種投入終了をアナウンスするなど、残念ながらPDAを巡るニュースは明るくないのが現状だ。Zaurusシリーズにもかつての勢いはないが、このような状況下で、HPは2004年のPDA市場において日本国内およびワールドワイドともに出荷台数ベースでシェア1位と気を吐いており(Windows OS搭載PDAとして/IDC調べ)、孤軍奮闘ぶりが際立つ。
ところで今の日本では、PDAを多くの人が携帯電話で代用していることだろう。個人用の携帯情報端末として、これほど普及している製品はほかに見あたらない。しかし、いくら携帯電話が多機能になったとはいえ、住所録はともかく、スケジュールの管理やメモなどのPIM機能は未だに貧弱で、PC上のデータはもちろん、メールの添付ファイルが開けなかったりと、何かと不便で制約が多く、まだまだPDAにかなわない部分もある。
ことパソコンとのデータ連携を考えた場合、Windows搭載PCとの連携を前提として開発されたPocket PC搭載PDAならば、手軽にパソコンのデータを持ち運びできる。特にOutlookをはじめとしたMicrosoft Officeアプリケーション製品(Word/Excelなど)との親和性は高く、日本で人気の高いシャープのZaurusシリーズや、ソニーのCLIEシリーズに対する大きなアドバンテージとなっている。また、Webの閲覧をはじめ、前述のビジネスアプリケーションだけでなく、動画や制止画といったエンターテインメント系のデータも楽しめる、マルチビュワーとしての役割も見逃せないところだ。PCに接続されたクレードルにPDAを置くだけでデータを同期してくれる手軽さも、Pocket PCならではメリットといえるだろう。
マイクロソフトのPDA向け最新OSは、昨年9月にリリースされたWindows Mobile 2003 Second Edition software for Pocket PC 日本語版だ。前バージョンからの主な強化点は、640×480/480×640ドットの画面表示のネイティブサポートや横長(ランドスケープ)画面の対応のほか、無線LANのセキュリティ強化(WPAのサポート)、Pocket Internet Explorerの横一列表示機能の装備などが挙げられる。
HPの現行モデルはすべてこのOSを採用しており、最上位モデルのhx4700では上記の機能をすべてサポートしている。ラインアップの詳細は次項に譲るが、120gの軽量モデルをはじめとして、指紋認証機能を内蔵してセキュリティー機能を重視したモデル、さらにはデジカメ機能やWMA/WMVのネットワーク再生が行なえるモデルまで多彩な顔ぶれを誇る。
ここでは画面キャプチャーを中心に、最新Pocket PCの充実したビュワー機能を見ていきたい。もちろん、HP iPAQ Pocket PCシリーズならではの特徴・機能もあわせて紹介しよう。
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