中国人民元切り上げはPCコストに影響なし

» 2005年07月25日 10時22分 公開
[IDG Japan]
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 中国による為替制度の見直しは、同国内にある数千のエレクトロニクス工場の人件費を押し上げたが、アナリストらはPCやサーバといったIT商品のエンドユーザー価格には影響を及ぼさないとの見方を示している。

 7月21日、中国は10年間に及ぶ対米ドル固定制から、人民元を複数通貨と連動させる「通貨バスケット制」に切り替えると発表した。今回の切り上げ幅は2%の1ドル=8.11元。見直し前は1ドル=8.28元だった。

 2%は小幅なようだが、為替の変動は商品価格に大きな影響を及ぼす可能性がある――そして中国は、ノートPCやデスクトップPCなどのエレクトロニクス完成品の生産で世界最大量を誇る。

 「それでも(人民元の切り上げが)これら製品の生産コストに及ぼす影響は比較的小さいだろう」と市場調査会社IDCのアナリスト、フリント・パルスカンプ氏は言う。

 PCやノートPCの部品――そして最も高価なCPUや液晶ディスプレイなど――の大部分は、中国で生産されていないため、今回の為替変動の影響を受けることはない。中国のエレクトロニクス製造工場の主な価値は労働力にあるが、全体的なコストに占める割合は比較的小さいとパルスカンプ氏は説明している。

 「強い人民元」は、中国で事業展開する企業の労働コストを引き上げると同時に、それを相殺する効果ももたらす。世界中から輸入する日用品やDRAMのようなコンピュータ部品も米ドル建てで取引されるため、中国の工場主は切り上げのおかげで得をすることになる。

 Merrill Lynchでは、例えばキヤノンの場合、人民元切り上げによって中国にあるデジタルカメラなどのイメージング製品工場では、生産コストが90億円上乗せされると予測している。しかし一方で部品コストが削減され、高くなった製造コストの約半分を補うことになると、メリルリンチ日本証券のリサーチアナリスト、高橋亮平氏は語っている。

 長期的に、中国の通貨は緩やかに上昇するだろう――その割合は向こう数年間は年間2〜3%を上回ることはないと、香港の投資銀行UBSのエコノミスト、ダンカン・ウールドリッジ氏は見ている。

 年間数ポイントとしても、いずれはコストを抑えるために中国からベトナムなどさらに低コストの発展途上国へ生産拠点を移す動きが起きるかもしれない。ただし数年以内に、中国の人民元切り上げによってエレクトロニクス業界が受ける影響はさほど大きくない。

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