中国の金型産業の強さとその裏側(前編)山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2006年01月05日 11時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

「Made in Japan」を支える金型産業

 金型を簡単に言ってしまえば、プラスチック、金属、ゴム、ガラスなどの「素材」を流し込んで、成型するための「枠」だ。そして「金型産業」とは、この金型を作り出す業種、業界である。ITmediaでもおなじみの「PC」「デジカメ」「携帯電話」や、それらの周辺機器、そして「車」「飛行機」「スペースシャトル」といった大掛かりなものを構成するパーツから、100円ショップにならんでいる「アクセサリ」に使われる部品まで、とにかく、あらゆる工業製品が金型から大量に生産されている。金型産業は「ものつくり」のほとんどに関わる、屋台骨的な産業なのだ。

とある町工場。従業員は金型職人ただ一人

金型と完成品。金属で出てきた「枠」に素材を流し込み成型する

 金型の良し悪しはなんだろうか? 精度が高く図面に精密に忠実であればあると「いい金型」である。また、その金型からどれくらい部品が生産できるか、といった「耐久性」も重要だ。100万個の部品を産み出した金型は、1万個を産み出しただけで使えなった金型より「優秀」ということになる。

 部品の設計はメーカーが行うが、「部品を作る道具」である金型は金型業者が作る。金型業者はメーカーからの依頼を受けると、CADソフトを使って「依頼を受けた部品のための」金型を設計し、その上で経験豊かな職人のみが持つ「勘」で、CADが描いたデザインに修正を加える。設計が終わったら金型製造専用機械を使い、さらにCAMも駆使し、金型を加工する。

このように、多数の突起、凹凸が複雑に入り組んだ部品を成型する「金型」は非常に難易度が高い

 金型の出来不出来は、その金型から生み出された部品を使って作られる製品の品質を大きく左右する。設計図に寸分違わない部品を使って組み立てられた製品は、ガタが来ることなく長く使うことができる。「日本製の工業製品は壊れない」という世界中から寄せられる信頼は、良質な金型によるところが大きい。

 では「いい金型」はどこで作られているのだろうか。メーカーには、自前の「金型製造部門」を有しているところもあるが、しかし、その多くは従業員数の少ない町工場で作られている。中でも東京都大田区と大阪府東大阪市に金型工場が集中している。

 1960年代の高度経済成長期における町工場の多くは、大メーカーの1社と「親子」の関係を築き、その親会社からのみ発注を受ける完全なる下請けであった。しかし、1970から1980年代に起こった2度のオイルショックによって、唯一の発注先である親会社からの仕事量が減少、さらには、それまでいろいろと無理を聞いて尽くしてきたはずの親会社からコストダウンの圧力を加えられるようになった。

 もう、親会社から受注する仕事量とその仕事から得られる利益だけ経営は成り立たない。そこで町工場は特定の技術に特化することで複数の企業と取引を行うスタイルに変更した。

 大田と東大阪の両地域は、そういった特定分野に専業化したスペシャリストを擁する町工場が1つの地域に集中した「高度加工技術集積地」を形成するに至った。しかし、その特殊技術を見込んで各メーカーから山のように発注された試作品の製作もバブル景気の崩壊後とともに、生産拠点の中国移転といった製造業の構造変化に伴い激減。町工場の数は半減した。

典型的な町工場の町、大田区六郷羽田周辺
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