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進化したスタンド機構ArcSwing 2とコントラスト比1000:1の実力を見る EIZOの新17インチモデル「FlexScan S170」レビュー(前編)

EIZOブランドから、液晶モニターの新作が2モデル登場した。1000:1という高いコントラスト比で注目を集めている、17インチの「FlexScan S170」と19インチの「FlexScan S190」だ。さっそく、主力である17インチモデルのレビューをお届けしよう。開発陣へのインタビューや、ラインナップ詳説と上手な選び方なども掲載していく予定だ。

昨年登場のArcSwingがさらに進化

 EIZOブランドの液晶モニターには3つのシリーズがある。高機能タイプの「SlimEdge」シリーズ、スピーカー内蔵で個人向けの「MultiEdge」シリーズ、価格を抑えた「PrimEdge」シリーズ、その他だ。

 今回の新モデル「FlexScan S170」(以下、S170)はSlimEdgeシリーズに属し、同シリーズでは初の17インチSXGAモデルとなる。ベゼル幅がさらに狭くなり、左右でわずか11.1mmしかない。マルチモニター環境にも最適だ。アナログRGBとDVI-Dの2系統入力を備え、各インタフェース用のモニターケーブルが2本付属するのもポイント。


円弧状のスタンド


スイーベル部とインタフェースの様子

 S170は、スタンド部に新開発の「ArcSwing 2」機構を採用している。機能的には、チルト(上60度/下5度)、スイーベル(右172度、左172度)、高さ調節(104mm)を備えたスタンドだが、高さ調節の仕組みが独特だ。パネル背面がアーチ状になっており、スタンドとの接点を軸として、円弧を描きながら昇降する。チルトとの併用で、画面の高さと角度を柔軟に設定できるのが特徴だ。ユーザーの体格や姿勢に合わせ、見やすい位置や疲れにくい位置、映り込みが少ない位置などに、フレキシブルに調整することが可能だ。例えば、画面の位置を机上ギリギリにして上に向けると、ノートPCの液晶に向かうのと同じ感覚になる。

 高さ調節はちょうどいい力加減だ。画面の左右を持ち、上下にスライドさせるようにして昇降する。動き出しはスムーズで、目的の高さにも固定しやすい。

 余談だが、PCモニターの高さは、ユーザーが見下ろす位置がよいとされる。首や肩、腕と目の疲れ、ドライアイなどの障害を予防するには、画面を見下ろすほうがよいのだ。見下ろしと見上げの疲れ具合の差はすぐに実感できるので、イスの高さを変えながら一度試してみるとよいだろう。



同時に発表された19インチのモデル「FlexScan S190」(右のブラックのほう)。ちなみにS170もS190もセレーングレイとブラックの2モデルがある

高品質なPVA液晶パネルを採用

 S170の液晶パネルは、8ビット処理の1677万色フルカラー表示に対応している。コントラスト比が1000:1と非常に高く、黒が引き締まったメリハリのある表示が印象的。輝度は250カンデラ/平方メートルと、数字的には低く感じるかもしれないが、実際は十分な明るさだ。筆者がS170を試用したとき、100%の輝度では目が痛かった。個人的には、通常のWindowsやアプリケーション操作は30〜50%の輝度に落ち着いた。暗めの動画を見るときも、100%にすると明るすぎるくらいに感じたほどだ。

 応答速度は25msで、やはり数字的には遅いというイメージが先行するのではないだろうか。動画やゲームなどで残像感が少ないことから、最近は20ms以下の高速応答が好まれる傾向にある。ただし現在スペックとして各社が記載する応答速度の数字は、画面が「白→黒→白」と切り替わる時間を計測している。しかし、表示の大部分を占める中間調の応答速度は、スペック上の数字よりも遅く、どの液晶パネルも、実は大差ないのだ。また年内に業界団体で中間調の応答速度の規格化が図られるという話もあり、現在の各社のスペック表示を気にする必要はないと言っても過言ではない。

 次に視野角と発色について見てこう。スペック上の視野角は、水平/垂直とも178度と広い。その通り視認性は上下左右とも広範囲だが、色調の変化は大きめだ。これは中間色が顕著で、画面正面から上下左右に視点をずらしていくと、彩度が落ちて色褪せが始まるポイントが早い。話題が前後するが、常に正面から眺めるためにも、ArcSwing 2のスイーベルとスライド昇降が実に効果的だ。

 ちなみに視野角による色変化の少なさだけを見ると、S-IPSパネルを搭載した「FlexScan L567-R」のほうが優れている。ただし、S170の発色はとても良好だ。特に、sRGBモードの色調が正確なのはありがたい。コントラスト比が高く階調表現も上々で、立体感があって見栄えする。画面全体の輝度ムラ(特に四隅)も、ごくわずかだ。

 また、S170はナナオ独自のガンマ調整機能を持っている。ビデオカードから出力された8ビット(256階調)信号を、S170内部で10ビット(1021階調)に変換し、最適な8ビットに再マップして階調のズレを補正する機能だ。通常の液晶パネルはガンマカーブに独特のクセがあることが多く、無調整のまま採用した安価なモデルには、色再現や階調性に難を残す製品がある。特定の階調でトーンジャンプ(階調ロス)が発生したり、輝度によって色調が変わってしまうのだ。S170の表示には、こうした不自然さは確認できなかった。推測だが、内部的な信号処理やパラメータ調整で、相当な苦労をしたのではと思ってしまう。

 アナログ接続とデジタル接続では、やはりデジタル接続のほうが高画質だ。アナログ接続はコントラストがより強調され、派手な発色になる。クロックとフェイズのオートアジャスト精度、表示ドットのシャープさは申し分ない。

 なおS170は、SXGA以下の解像度は常に全画面拡大となる。SXGAの液晶モニターに対しては、アスペクト比固定拡大や実解像度表示のニーズが根強いものだ(特にゲーム環境で切実)だが、最近のATIテクノロジーズやnVIDIAのビデオカードであれば特定の実解像度表示が可能だし、相性によってはアナログ接続でも可能となる。

 今回、風景などを撮影した写真を、S170と他の17インチモニターとで比較する簡単な実験を行ってみた。対戦相手となった現在市販のモニターも決して悪い液晶パネルではないのだが、コントラスト比1000;1というパワーに圧倒されたと言って過言ではない。次回乞うご期待! このスペック値とナナオの味付けの実力が明かされる。

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