タブレットや高機能スマートフォンも続々 Snapdragon最新事情:COMPUTEX TAIPEI 2011
ハイエンドスマートフォン市場で人気を博したQualcommの高性能プロセッサ「Snapdragon」だが、タブレット市場ではNVIDIAの「Tegra 2」による攻勢も強まっている。Snapdragonはこの激しい競争をどう勝ち抜くのか。台北でQualcommの幹部が説明した。
ポストPC時代が叫ばれる昨今、ARMプロセッサコアを擁立する半導体メーカー各社の動きが活発化している。米QualcommはCOMPUTEX TAIPEI 2011の開催が翌日に迫った5月30日(現地時間)、台北市内のホテルで記者会見を開き、間もなく登場する最新のSnapdragon搭載スマートフォンやタブレットの数々を披露。さまざまなOSやフォームファクタで動作し、利用シーンの拡大するQualcomm製品のエコシステムをアピールした。
デュアルコアに対応した第3世代Snapdragon搭載製品が続々登場
2010年は、1月6日に発売されたGoogleの「Nexus One」に始まり、ハイエンドスマートフォン市場を席巻したSnapdragonプロセッサだが、2011年に入りタブレットやデュアルコアプロセッサ搭載スマートフォンなどが出始めると、米NVIDIAのTegra 2が採用される事例が増えてきた。
一方でQualcommもSnapdragonの強化を進めており、2010年後半になるとシングルコアで1.4GHz駆動が可能な第2世代の製品が登場し、現在はデュアルコアで最大1.5GHzの動作に対応した第3世代の製品が出つつある。また2011年2月にスペインのバルセロナで開催されたMobile World Congress 2011において、第4世代となるクァッドコア対応製品のアナウンスを行っており、2011年末にNVIDIAがリリースを計画している第3世代の「Tegra 3(開発コード名:Kal-El)」と並ぶ形となる。なお、この第4世代製品は「Krait」の開発コード名で呼ばれており、当初のアナウンスどおり来月6月にも最初のサンプルが出荷開始される。
会見に登場した米Qualcommコンピューティング&コンシューマ製品部門担当SVP プロダクトマネージメントのルイ・ピネダ(Luis Pineda)氏は、「現在20社がSnapdragonベースのタブレット端末の開発を進めており、そのうち8つの製品がすでに製品化、40以上の製品が開発段階にある」とエコシステムが順調に成長しつつあることをアピールした。
SnapdragonはAndroid搭載スマートフォンやAndroid搭載タブレットのほか、BlackBerryやwebOSデバイスでも採用されていることが知られている。また最近ではWindows Phone 7の標準フォームファクタとして採用されているほか、QualcommによればChrome OSもサポートしているという。さらにピネダ氏は来年2012年の登場が予告されるWindows 8に触れ、「これがさらにARMならびにSnapdragonの利用シーンを広げることにつながる」と予測する。
また会見ではQualcomm Atheros部門SVPでアジア太平洋地域ジェネラルマネージャのジェイソン・ツェン(Jason Zheng)氏が登場し、2011年1月に買収を発表したAtherosの位置付けと、今後のQualcommを含めた製品戦略について説明を行った。AtherosはPCや組み込み製品向けのIEEE802.11(Wi-Fi)コンボカードやチップセットを提供するメーカーとして広く知られているが、このほか端末向けイーサネット、Bluetooth、電力線ネットワーク(PLC)、GPSといったネットワークやモビリティに関する各種チップセットソリューションを備えているのも特徴だ。
ツェン氏によれば、特にPLCは8割以上の市場シェアを持つなど、既存の実績が強みになっているという。このQualcomm Atherosのチップを組み合わせ、3GだけでなくWi-FiやBluetooth、GPS、さらにはFMバンドなど、ニーズに合わせたソリューションをPCや昨今のモバイルデバイス各種に提供できると、買収による両社の技術を組み合わせたメリットをアピールした。
ショウケースで見る最新Snapdragon事情
また会場ではSnapdragon搭載製品や関連技術を集めた展示コーナーが用意されており、実際にその動作を確認できた。すでに発表された製品も多いが、一方でHoneycomb搭載Androidタブレットなどプロトタイプの製品もいくつか用意されており、まだ今後も新製品が登場することに含みを持たせている。
Snapdragonは第2世代の高クロックモデルが「MSM8x55」、第3世代のデュアルコア製品が「MSM8x60」という形で区別されており、前者が省電力性能を重視しつつ既存機能のブラッシュアップ、後者がAdreno 220といった高機能GPUやデュアルコア搭載によるパフォーマンスモデルという形で区別されている。「MSM」という型番は基本的にチップセットという扱いで、Wi-Fiや3G接続などの機能がすべて包含されている点が特徴だ。
またこれとは別に、通信機能などプロセッサ以外のコンポーネントを抜き出したチップセット製品「MDM」も用意されており、こちらはPCなどのデバイスにネットワーク接続機能を与える役割を果たす。直近では、Verizon Wireless版iPhone 4などでCDMAとGSM両系列をサポートするMDMがベースバンドチップとして採用された例が知られている。今回の例でいえば、GoogleのChrome OS搭載マシン「Cr-48」はプロセッサにIntelのシングルコアAtomを採用しているが、このベースバンドチップにはMDMが利用されている。
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