「自分で作ったパソコンが動いたぁっ!」──今年も“全員稼動”の手づくりLet's note工房

» 2006年08月28日 11時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 神戸の工場とは松下電器産業のLet's noteシリーズ生産拠点である神戸工場である。毎年この時期に行われる恒例の「手づくりLet's note工房」が今年も8月26日に行われた。子供たちが自分でPCを組み立てるイベントも最近では多くなってきたが、手づくりLet's note工房はその先駆けともいえる。

 開始当初から人気を集めていたこのイベントは回を重ねるごとに注目を集め、7回め(開始してからは5年めだが、一年で2回行っていた時期もあるため)となる今回の応募総数は実に914人に達した。募集人数は48人であるので実に18倍の競争率になる。今回、参加できた家族でも「兄弟で応募したが弟だけが参加できた」というケースが聞かれた。

まずは、手づくりLet's note工房の開校式から。登壇した松下電器産業パナソニックAVCネットワークス社システム事業グループITプロダクツ事業部事業部長 高木俊幸氏は、「(このイベントで)手づくりの楽しさを知ってもらいたい。きょうは思う存分楽しんでください」と参加者を歓迎した
「先生のお話」のあとは、みんなが作るLet's note T5の説明だ。組み立てるPCの部品を理解してもらうため、外装部品の名称や、内部に実装されたパーツの名称を紹介していく

説明するのは「自分でもまだキャラクターがつかめていない」ハカセとブタのブースケだ。(赤い枠で囲んだ液晶ディスプレイを指して)「さぁ、これは何かな?」「ノートパソコンっ!」「うーん、これはLCDというんだよ〜」 って、いきなりLCDとは、むずかしいっす
部品の名前を覚えたら、Let's note T5の「いいところ」を知っておこう。Let's note T5は「とにかく軽い!」「電池で長い時間使える!」「衝撃に強い!」のだ。うううっ、おじさんも自分のLet's note T5を作りたいよっ!

 開校式が終わったら工場に移動して組立作業が始まる。Let's noteシリーズの組み立ては、今ではおなじみとなった「セル方式」で行われている。昔の流れ作業のように「1人が担当するのは一部だけ」ではなく、1つの作業台「セル」についた1人の作業者で1台のノートPCの組み立てをすべて行ってしまう。この方式のおかげでこのような組み立てイベントができるようになったともいえる。手づくりLet's note工房でも参加者1人にセル1つが割り当てられる。Let's note T5を組み立てるのは子どもたちだが、要所要所で神戸工場の熟練が助けてくれる。この指導員が参加者2人に1人ついてくれる。

実際にLet's noteが作られている“生産現場”に集結した参加者一同。自分に割り当てられたセルを前にしてちょっと、いや、かなり緊張していたようだ
セル台にはLet's note T5を組み立てるのに必要な部品がきれいに整理して用意されていた。すでに基板はボトムケースに実装されインタフェースとの接続はできている。セル台の左下にあるのは「ぱちぱち君」と指導員が呼んでいた静電気による破損を防ぐためのアースバンドだ

まず最初に手をつけるのは「HDDフレキピン」と、いきなり難しいところから始まった。しかし、子どもたちは器用なんだな〜。苦もなくつなげていくのであった
HDDを組み込んだら次は液晶ディスプレイの組み立て。こちらもケーブルを接続してからヒンジをネジで固定する。この工程も結構難しいのだが、こういうときはお父さんお母さんにも参加して組み立ててもらおう。こういうときも主役は親と参加者。指導員はサポートに徹する

参加者2人につき1人の指導員が加わる。物怖じしないイマドキの子ども、とはいっても最初は緊張して会話もぎこちない。でも、作業を一緒にやっているとすぐに打ち解けて笑顔になる。「先生の印象はどう?」「やさしい〜」「おもしろい〜」「いつも“見ため”で怖がられるから、とてもうれしいっす」
手づくりLet's note工房は回を重ねるごとに問題点を洗い出して改善を加えている。最初は実際に使われている作業指示書から図面をそのまま引用していた組み立て説明書は、写真を多用した視覚的に分かりやすいオリジナル編集に進化した。作業の説明も、実際に作業をしてる手先の動きをビデオプロジェクタで見せている

液晶ディスプレイを接続したら、パームレストを装着する。このとき難しいのがタッチパッドから伸びるフレキケーブルを基板のコネクタに接続する作業だ。差し込みが弱いと抜けてしまうし、コネクタのロックが正しくかかっていないとこれまた抜けてしまう。作業員も「フレキケーブルの作業が難関ですね」と想定していたが、意外にも参加者たちは難なくこなしてしまうのであった
パームレストを組み立てたら次は無線LANのアンテナカバーの取り付けとキーボードのフレキケーブルを接続。アンテナカバーは苦戦する参加者が続出。ここは指導員の出番となったが、キーボードのフレキケーブルは器用にこなしていた

キーボードケーブルを接続したらいよいよキーボードを固定する……、おっとその前に「放熱板」を取り付けようね。これをしないと大事な部品があつうなって壊れてしまうで。あ、そのとき、ねずみ色のグリスにさわんといて。取れてしまうさかいな
で、やっとキーボードをつけたら、おお、ついにノートPCらしくなってきたぞ。うへへっ、ちょっとうれしい

バッテリーのコネクタを取り付けたらいよいよ組み立ての最終段階「底面のビス止め」だ。組み立て説明書には取り付ける順番も指定されている。ちなみに、手づくりLet's note 工房では手回しのドライバーを使っているが、その作業方法は「ドライバをかるーく回す」「締めすぎない」というもの。指導員によるとネジ山をなめないなどの「安全第一」のため、ということらしい。
底面を固定したら組立作業は終了。いよいよ、バッテリーを取り付けて電源が入るかチェックする。「どきどきして不安だった」と参加者がきょう一番緊張したのがこの瞬間だったという。学校でパソコンクラブに入っている彼も「とても不安だったけど、(電源)ランプがついたときはうれしかった」と笑顔になった。「どんな気持ちだった?」「うーんとね。ガッツポーズをしたくなった」

組み立てが終わって無事電源が入ったLet's note T5。これから検査工程をすませて完成となる。Let's noteの直販サイト「マイレッツ倶楽部」ではLet's note T5用のカラー天板が14色用意されているが、参加者は希望する色で自分のノートPCを組み立てた。「自分で組み立てたパソコンが動いたときはとてもうれしかった」とは多くの参加者の弁。そうそう、それが“ものづくり”の原点なのだ。その気持ちを大事にして「自作PC」の世界にいらっしゃい
松下電器産業のスタッフによると、今回希望のあったカラー天板で一番人気だったのはホワイトの「アイスキューブ」だったという。おっ、これは“マイレッツ倶楽部限定のITmediaモデル”としても用意されていたキールロワイヤルじゃありませんかっ。お嬢さん、この色を選んだのはなぜ? 「大人になっても使えそうな色を選びました」とのこと。ほかにも「これは妻の好きな色なのであります」と指導員に説明していたお父さんもいましたね

参加者が昼食と工場見学を行っている間に通電試験を行っていたLet's note T5は、午後から参加者自らが動作検査を行う。用意された検査ツールを動かしてインタフェースの動作やLEDの点灯をチェックする
この機械ではパターン識別機能を利用して筐体やキーボードに印刷された文字のチェックを行っている。この工程は従来目視で行っていた

検査をすべて終了すると、検査内容をチェックしてそのデータを製品管理サーバに登録する。ディスプレイに「OK」が表示されたら全工程が正常に終了したことになる。完成したノートPCは一台一台参加者に手渡された。「クール」だった参加者もこのときは笑顔になる

完成したLet's note T5は当然ながらお持ち帰り。なので、自分でパッケージングすることになる。このときもきちんと作法が定められている。それは「(パッケージの箱は)白い取っ手が手前になるように自分の前において」「“Panasonic”のロゴが自分に向くようにして入れる」というもの。皆さん知っていたかな?
松下電器産業によると過去行われた手づくりLet's note 工房で動作しなかった参加者は1人もいないとのこと。今年も全員が無事「自分だけの」Let's note T5を完成させた。閉校式で神戸工場工場長の藤田尚住氏が「(完成したときに見せてくれた)あの笑顔を見たさにまた1年間パソコンを作っていこうとがんばれます」と述べた想いは参加した工場スタッフ全員同じだったようだ。「また来年参加したい人は手を挙げて〜。あ、保護者の皆さんも手を挙げていますね」

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