NVIDIAが発表したnForce 680iは、ハイエンドユーザーを想定したインテルのCore2 Extreme、Core2 Duoに対応したチップセットだ。nForce 680iの最大の特徴は、インテル製のIntel 975X、Intel965シリーズでは利用できない、マルチGPU技術「NVIDI SLI」の構築が可能になることだ。ハイエンドゲーマーにとって、コストはかかるものの3D性能を大幅に引き上げるNVIDIA SLIは、いまや必須ともいってよい。
従来、市販のタイトルを用いたゲームベンチにおいてAthlon 64 X2を基幹とするシステムがPentium Dを組み込んだシステムのそれを上回っていたため、ハイエンドゲーマーにとって「Athlon 64 X2+nForce 4 SLI+NVIDIA SLI対応グラフィックスカード2枚差し」という組み合わせが標準環境であったが、Core2 ExtremeとCore2 Duoシリーズを登場させたことで、インテル製CPUを使うハイエンドゲーマーも増えている。彼らにとってとって、インテルの最新CPUでNVIDIA SLIが使えるnForce 680i SLIは要注目のチップセットになるのだ。
2006年6月に行われたCOMPUTEX TAIPEI 2006の取材で、いくつかのマザーボードベンダー関係者と話をする機会を得た。ちょうどNVIDIAがnForce 590 SLIをリリースした直後で、関係者に「“for AMD”と“for Intel ”、どっちの出荷を優先するのか」と聞いたことがある。この質問に、関係者は例外なく「AMDが優先だ」と返事をしてくれた。
その理由として彼らは2つあげてくれた。1つは、今のところnForce 590 SLIがターゲットにするようなハイエンドゲーマーはAMDを選択するというマザーボードベンダーの分析だ。確かに、ここ数年はゲームベンチマークの結果においてAMDのCPUがインテルのCPUを凌駕している状況だったので、ハイエンドゲーマーにAMDプラットフォームは人気だった。ただ、Core2 ExtremeにCore2 Duoがリリースされた今となっては状況が変わりつつある。
もう1つの理由として、NVIDIAが、AMDプラットフォームを優先して立ち上げているという点を指摘する関係者も多かった。実際、nForce 590 SLIで、“for AMD”はCOMPUTEX TAIPEI 2006のすぐあとに市場に投入されたが、“for Intel”は2006年の秋にようやく市場に出回った。なぜ、NVIDIAはインテルよりもAMDを優先したのか? それは、インテルがNVIDIAに対してなかなかバスライセンスを与えなかった(インテルがNVIDIAにライセンスを与えたのは04年11月になってからだ)という積年の事情があったためで、それゆえにNVIDIAはAMDの市場を非常に重視してきたのである。
だが、この状況も変わりつつある、最大の変動要因はAMDがATI Technologiesを買収したことだ。AMDがATIのチップセット事業を手に入れたため、NVIDIAにしてみれば、AMDのチップセット事業でいつ足をすくわれるのか分からない状況になった。AMDの幹部はATIを手に入れた今でも、従来と同じようにパートナーとの協力関係を続けるとは明言しているが、「きのうの友はきょうの敵」が当たり前のビジネス界。となれば、インテルにも何らかの保険をかけておこうとNVIDIAが考えるのは当然のことではないだろうか。
そうした中で、NVIDIAはnForce 600シリーズは“for Intel”を先に投入してきた。NVIDIA SLIをサポートした最新のチップセットがCore2 ExtremeとCore2 Duoで使えるようになったとくれば、ハイエンドゲーマーならずとも気になるのではないだろうか。
今回登場したnForce 600シリーズの最上位モデルとなるnForce 680i SLIは2つのチップから構成されている。ノースブリッジは開発コード名「C55」で呼ばれてきた680i SLI SPPで、サウスブリッジが「MCP55」で知られる680i SLI MCPとなる。基本的にMCP55は従来のnForce 590 SLI for Intelと同等であり、大きな改良が加えられたのはノースブリッジ側だけと考えていい。nForce 590 SLI for IntelではC19と呼ばれる、nForce 4世代でも使われてきたノースブリッジが使われてきたので、実に1年半ぶりの変更、となる。
nForce 680i SLIのSPPは、PCI Express x16を1スロットとPCI Express x1を1スロット実装できる。さらに、インテルプラットフォーム向けに最適化されたメモリコントローラを内蔵しており、NVIDIAとCorsairなどが共同で規定したメモリのオーバークロックを手軽にできる「EPP」にも対応する。これは、「SLI Memory」と呼ばれるNVIDIAが認定したメモリを利用することで、DRAMの細かなパラメータの意味が分からないユーザーにも手軽にメモリをオーバークロックできる機能だ。さらに、従来のnForce 590 SLI for Intelに比べてメモリのレイテンシが削減されるなど、パフォーマンスの改善も図られている。
サウスブリッジとなるMCP55に関しては、nForce 590 SLI for Intelと同様で、PCI Express x16とPCI Express x8をサポートする。ノースブリッジのPCI Express x16とあわせてフルx16によるNVIDIA SLI構成が可能になる。このほか、6ポートのSerial ATA、HDオーディオ、10ポートのUSB 2.0、2ポートのギガビットイーサネットなどのスペックも同様だ。
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