レビュー
» 2008年05月01日 11時45分 公開

Adobe RGB比123%の広色域:“超Adobe RGB”液晶ディスプレイは“超高画質”なのか?――「SyncMaster XL24」 (3/3)

[林利明(リアクション),ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

“見えなかった色が見える”広色域を実感

24.1インチワイド画面はA4実寸の見開き表示が可能。1920×1200ドットの高解像度と合わせて、作業効率が上がる

 XL24の画質面における特徴は、Adobe RGB比123%という広色域と、内部14ビット処理のガンマ補正だ。前者は冒頭で述べた通りだが、後者はPC側からの8ビットRGB出力をXL24内部で14ビットに多階調化し、再び8ビットに整えてから出力するというもの。これにより、RGBガンマカーブのブレが補正され、シャドウからハイライトまで階調表現の正確性が大幅に向上するのだ。

 実際の画質では、特にAdobe RGBモードの発色に目を見張るものがある。デジタル一眼レフカメラで撮影したAdobe RGBの写真データを、Photoshop(Adobe RGB作業スペース)で表示してみたところ、高彩度の赤や緑でXL24の広色域を実感できた。sRGB対応の一般的な液晶ディスプレイと比較すると、色域の広さと階調性は雲泥の差だ。sRGB対応の液晶ディスプレイでは色飽和して階調が失われる赤や緑、くすんでしまう赤や緑も、XL24のAdobe RGBモードなら鮮やかに表示され、高彩度領域の微妙な階調も判別できる。

 ただし、他社のAdobe RGB比90%台の広色域液晶ディスプレイに対して、色域が広いぶんだけ高画質と考えるのは間違いだ。デジタルカメラで撮影したAdobe RGBの写真データなどでは、RGBのピークの色まで含むようなケースは多くないこともあり、Adobe RGBの色をほぼ正確に再現できるという意味では、XL24とAdobe RGB比90%台の機種に大きな違いはない。Adobe RGBを超える色が出せるという特徴は、特殊な印刷環境など、もっと限定された業務用途や研究用途で生かされるもので、一般ユーザーが享受できる恩恵はあまりないのが現状だ。

 とはいえ、XL24の表示性能がカラーマネジメント対応の液晶ディスプレイとして十分なものであることは確かだ。試しに、黒から白の無段階グラデーションを表示しても、トーンジャンプは皆無に近かった。ただし、シャドウ寄りの階調が若干つぶれやすいようなので、XL24をCustomモードで使うときは輝度とコントラストをしっかり調整したい。同様に、Calibrationモードでターゲット輝度を100カンデラ/平方メートルくらいにすると、シャドウ寄りのつぶれが少し大きくなるので、環境光が明るい場合などは注意が必要だ。

カラーとモノクロのグラデーションパターンを表示した例(写真=左、中央)。掲載した写真はJPEG圧縮の関係で、一部階調が崩れて見えるが、目視ではきれいなグラデーションに見える。Adobe RGBの色域をエミュレーションし、Adobe RGBモードで撮影した写真データを表示した例(写真=右)。こちらもWeb上の画像データではうまく伝わらないが、鮮やかな青から緑にかけての発色は広色域のディスプレイならではだ。ただし、このような一般的な風景写真では、Adobe RGB色域のピークにある非常に鮮やかなRGBの色は含まれないため、数パーセントのAdobe RGB比の差が発色の大きな違いを生むことはない

このような淡い色を全画面で表示すると、表示ムラが確認しやすいが、XL24の表示は従来モデルより均一性が高かった

 SyncMaster XLシリーズは小型のLEDアレイをバックライトユニット全面に垂直に多数並べているが、通常の冷陰極管バックライトと比べて、輝度の制御が難しく、技術的に輝度ムラを抑えることは難しい。しかし、XL24では24.1インチワイドの大画面にもかかわらず、使用中に輝度ムラをほとんど感じないレベルにあった。また、広色域の液晶ディスプレイでは構造的に色ムラが目立ちやすいが、こちらも問題ないとの印象を持った。

 じっくり表示を確認すると、画面の周辺で若干の輝度低下と色の変化は見られるものの、画面全体では高いレベルの均一性だ。今回は念のため、20.1インチスクエアの従来モデルであるXL20と新モデルのXL20 Plusも入手したのだが、この2つを見比べても、画面の均一性はわずかながらXL20 Plusが勝っていた。

 視野角に関しては、液晶パネルがVA系のS-PVAパネルなので、視野角による多少の色度変化は避けられない。画面と正対した位置から上下左右に視点を移動すると、少しずつ見た目の彩度が低下していく。とはいえ、50センチ程度の一般的な視聴距離ならば、画面全体の発色はほぼ均一に見える。画面に目を近づけて詳細なカラー作業を行う場合は、画面上の作業点を正面から見ることが多いので、やはり大きな問題にはならないだろう。

豊かな発色は大きな魅力、今後はソフト面の機能強化に期待

 SyncMaster XL24をしばらく使ってみて、その広色域と発色性能には確かなものを感じた。先に述べた通り、改善を望みたい部分はいくつかあるが、これらを差し引いても広色域で優れた階調性の魅力は大きい。

 もっとも、ハードウェアキャリブレーション機能を備えたカラーマネジメント対応液晶ディスプレイは、ソフトウェアの完成度に最終的な表示の精度が依存する部分も大きい。今後は潜在能力の高いハードウェアの実力をさらに発揮するためにも、Natural Color Expertの機能アップに期待したいところだ。繰り返しになってしまうが、特に環境光と印刷用紙の色温度を計測し、その色温度をキャリブレーションの目標値にできる機能があれば、XL24とプリンタのカラーマッチングが大幅に省力化されるだろう。

 量販店での実売価格が24万8000円前後と高価なのは否めないが、これだけの発色性能に加えて、キャリブレーターと専用キャリブレーションソフト、遮光フードまでがワンパッケージであることを考えれば十分に納得できる。Adobe RGB色域でのカラー作業を行いたいユーザーや、広色域でカラーマネジメント環境を構築したいユーザーにとって、強力な選択肢になることは間違いない。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia PC USER に「いいね!」しよう