PC電源に求められるスペックは向上する一方だ。市場には大容量で国産コンデンサを多用した高性能PC電源が数多くリリースされており、ユーザーからの人気も高い。
高性能の見返りとして価格が高めなのは仕方ないところ、と誰もが思うが、実際には、CPUやグラフィックスカードに予算を多めに考えておきたい自作PCユーザーは多いだろう。そういう事情もあってか、安価に購入できるPC電源ユニットにも依然として根強い人気がある。
確かに、パーツショップでは3000円も出せば入手できるPC電源ユニットが数多く出回っている。しかし、メーカー名も製造している工場の国籍やら、素性がちょっと分かりにくい製品も少なくはない。
低価格の電源ユニットを購入しているユーザーの中には「イチカバチカ勝負っ!」的な勢いで使っていたりする場合もあると聞く。最近では「ピーク電力=スペック」、と考えるユーザーも少なくなってきたが、素性の分からない電源ユニットに高価なCPUとグラフィックスカードの電力供給を任せるのはいささか気が引けるはずだ。
今回取り上げる、エバーグリーンの「Power Glitter」シリーズは、これまでのバリュークラス電源ユニットと同程度の実売価格ながら、その中身はだいぶはっきりとした素性を持った、安心して使えるモデルといえる。
このシリーズには正式名称を縮めた、“パワグリ”という愛称がつけられている。直訳すれば「強烈なキラメキ」ということになるが、エバーグリーンの製品情報ページにはそれを印象づけるかのような「キラキライメージ」がどぉーんと掲載されている。
このキラキラの正体はサイコミュを操るニュータイプのひらめきでもなければ、ミノフスキー粒子を散布しているわけでもない。あくまでも、電流や空気の流れが整然としている様子をイメージしたものなので「製品を買ったら、キラキラ輝くイルミネーションがないっ!」とクレームを入れないよう注意すべし。
おっと、大事なのはそういうことではなくて、“パワグリ”がバリュークラスの価格でありながら、驚くべきスペックを有していることであった。
“パワグリ”には500ワットモデルの「Power Glitter EG-500PG」と400ワットモデルの「Power Glitter EG-400PG」が用意されている。このワット表示はピーク出力を表しているわけではない。この値は、実際の使用時に安定した電力を連続して供給できる「定格出力」を示しているのだ。500ワットモデルにおけるピーク出力は550ワット、400ワットモデルで450ワットとなる。多くの製品がピーク電力表示なのに対して、定格表示を標準としたメーカーの英断は評価されていいだろう。
エバーグリーンのPC電源ユニットの多くには安全回路が実装されているが、それが、バリュークラスの“パワグリ”にも搭載されている。用意されているのは、ショートが発生したときに自動停止する「SPC」(Short Circuit Protection)と各出力に過大電流が発生した場合に自動停止する「OCP」(Over Current Protection)、同じく、各出力に過大電圧が発生した場合に自動停止する「OVP」(Over Voltage Protection)、そして、消費電力が最大出力を超えた場合に自動停止する「SCP」(Short Circuit Protection)の4種類だ。
低価格帯のラインアップでありながら、高い耐久性を実現できるこれらのセーフティー機能は、製品の寿命を延ばしてくれるはずだ。この価格帯の電源ユニットとしては特筆に値する。また、素性の分からない廉価な電源ユニットにありがちな、“粗悪な部品”は使われていないので、システムの安定動作に大きく貢献してくれるだろう。
自宅のデスクの上に設置してPCを使うユーザーにとって気になる稼働音についても、低速回転でも大風量をもたらす12センチ角の大型ファンを搭載することで「18デシベル」という優れた静音性能を実現している。また、昨今「にわかに」盛り上がりつつある環境問題に対応すべく、素材やパーツはRoHS指令をクリアしている。
イマドキの電源ユニットで、その使い勝手を大きく左右する電源コネクタ類だが、400ワットモデルにはATX12ボルト24ピン、CPU12ボルト8ピンが2本、PCI Expressが1本、デバイス用(大)のコネクタが合計で4本、同じくデバイス用(小)が1本、Serial ATA用が2本となっている。ちなみに500ワットモデルには2系統のPCI Express端子と4つのSerial ATA電源端子が追加されており、マルチGPUシステムやRAIDの構築にも対応できる。ただし、各ケーブルの長さは400ミリであるため、どちらかというと小ぶりなミドルタワーを上限とする比較的小さいPCケースに向いているだろう。
ゲームユーザーとしてもっとも気になる+12ボルトのラインは400ワットモデルが18アンペア、500ワットモデルにおいては20アンペアとなっている。正直、ハイエンドクラスのパーツで構成されるPCにはちょっと足りないかもしれないが、ミドルレンジクラスのPCなら問題のない。最新のクアッドコアCPUに複数のグラフィックスカードを組み合わせる、あるいはRAIDを構築するといった場合は、必要とされる消費電流量をよく計算してから“パワグリ”で間に合うか判断されたし。
これだけの機能を持ちながら400ワットモデルの「Power Glitter EG-400PG」の実勢価格が3900円前後(+D Shoppingによる価格はこちら)、500ワットモデルの「Power Glitter EG-500PG」で5400円前後(+D Shoppingによる価格はこちら)と抜群のコストパフォーマンスを実現している。パッケージも電源ユニットとケーブル、そして取り扱い説明書だけとシンプルだ。こういったところにコストを抑える努力に励むメーカーの良心を感じるのは筆者だけではないはずだ。
また、“パワグリ”シリーズにはメーカーの1年保証がついてくる。廉価というだけで、地雷原を歩くような買い物をしなくて済むのはバリュークラスの電源ユニットを探しているユーザーにとって、大きな選択理由となるだろう。安く、そして安心、安全なPC電源が必要なユーザーにとって、パワグリはこの上ない候補といえるはずだ。
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