AMDから45ナノメートルプロセスルールで製造されたクアッドコアCPU「Phenom II X4 940」「Phenom II X4 920」(開発コード名“Deneb”)が登場した。Denebコアは将来的にDDR3 SDRAMに対応したSocket AM3版も予定されているが、今回発表されたのは、現行のSocket AM2+に対応したマザーボードと安価なDDR2メモリで動作するモデルとなっており、既存プラットフォームからの移行が容易にできることと優れたコストパフォーマンスがインテルプラットフォームに対するアドバンテージとしてAMDはアピールしている。
今回の評価作業ではクロックが変更できる「Phenom II X4 940」のサンプル版を用いて、Phenom II X4 940とPhenom II X4 920のパフォーマンスについて検証していきたい。
Phenomシリーズからの変更点をスペックウからチェックしてみよう。繰り返しになるが、最大の変更点はプロセスルールが65ナノメートルから45ナノメートルにシュリンクされたことだが、3次キャッシュメモリが従来の3倍になる6Mバイトと大幅に増量されたことも改善点として挙げられるだろう。ただし、1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの容量については、65ナノメートルプロセスルール版と同じになっている。
| 製品名 | コアクロック | HTバスクロック | 1次キャッシュ | 2次キャッシュ | 3次キャッシュ | メモリサポート |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Phenom II X4 940 | 3.0GHz | 3.6GT/s | 128KB(64KB+64KB)×4 | 512KB×4(2MB) | 6MB | PC2-8500(DDR2-1066) |
| Phenom II X4 920 | 2.8GHz | 3.6GT/s | 128KB(64KB+64KB)×4 | 512KB×4(2MB) | 6MB | PC2-8500(DDR2-1066) |
| Phenom X4 9950 Black Edition | 2.6GHz | 2.0GT/s | 128KB(64KB+64KB)×4 | 512KB×4(2MB) | 2MB | PC2-8500(DDR2-1066) |
| 製品名 | プロセスルール | トランジスタ数 | ダイサイズ | TDP | Max.TEMP | コア電圧 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Phenom II X4 920 | 45ナノ | 7億5800万 | 258平方ミリ | 125ワット | 62 | 0.875〜1.50ボルト |
| Phenom II X4 940 | 45ナノ | 7億5800万 | 258平方ミリ | 125ワット | 62 | 0.875〜1.50ボルト |
| Phenom X4 9950 Black Edition | 65ナノ | 4億5000万 | 285平方ミリ | 125/140ワット | 61〜64 | 1.05〜1.30ボルト |
キャッシュメモリ容量が大幅に増えたことで、トランジスタ数はPhenomシリーズから1.6倍程度増えているが、プロセスルールのシュリンクにより、ダイサイズは約9割程度に小型化されており、コストパフォーマンス面での改善にも寄与している。
なお、データシートで示されているTDPや最大周辺温度については、従来のPhenom X4よりわずかに抑えられている。メモリコントローラは、従来と同じPC2-8500(DDR2-1066)への対応となっている。
では、実際にベンチマークテストでPhenom II X4 940と同 920の性能を見ていこう。なお、Phenom II X4 920の性能は、Phenom II X4 940のCPUのクロック倍率を変更して2.8GHzにしたものを用いている。製品版と完全に同じ条件とはいえないが、参考データとして参照していただきたい。
今回は比較用に従来モデルであるPhenom X4 9950 Black Editionに加え、DDR2版のライバルと目されるCore 2 Quadの上位クロックモデルであるCore 2 Extreme QX9770(3.20GHz)とIntelの最新製品であるCore i7 965 Extreme Edition(3.20GHz)を加えている。Core i7 965 Extreme Editionについては、倍率とQPIの設定を変更して、Core i7 920(2.66GHz)、同 940(2.93GHz)相当の測定結果についても掲載している。Hyper-threadingはON、TurboモードもONに設定している。こちらの数値についても、参考データ程度と考えていただきたい。
| テスト環境(AMD) | |||
|---|---|---|---|
| CPU | Phenom II X4 940(3.0GHz) | Phenom II X4 920(2.8GHz) | Phenom X4 9950BE(2.6GHz) |
| マザーボード | GA-MA790GP-DS4H | ||
| チップセット | AMD 790GX+SB750 | ||
| メモリ | Patriot PSD24G800KH DDR2 PC2-6400 (5-5-5-15) 2Gバイト×2 | ||
| グラフィックスカード | ASUS EAH4870/HTDI/512M | ||
| グラフィックスドライバ | Catalyst Drivers 8.12 | ||
| HDD | Deskstar P7K500 HDP725050GLA360 | ||
| OS | Windows Vista Ultimate SP1 英語版 | ||
| テスト環境(Intel) | ||||
|---|---|---|---|---|
| CPU | Core 2 Extreme QX9770(3.2GHz) | Core i7-965 Extreme(3.2GHz) | Core i7 940(2.93GHz) | Core i7 920(2.66GHz) |
| マザーボード | ASUSTeK P5K-E | ASUS P6T Deluxe | ||
| チップセット | Intel P35+ICH9R | Intel X58 Express+ICH10R | ||
| メモリ | Patriot PSD24G800KH DDR2 PC2-6400 (5-5-5-15) 2Gバイト×2 | Qimonda IMSH1GU03A1F1C-10F(7-7-7-20) 1Gバイト×3 | ||
| グラフィックスカード | ASUS EAH4870/HTDI/512M | |||
| グラフィックスドライバ | Catalyst Drivers 8.12 | |||
| HDD | Deskstar P7K500 HDP725050GLA360 | |||
| OS | Windows Vista Ultimate SP1 英語版 | |||


開発コード名“Deneb”と呼ばれていた45ナノメートルプロセスルール版Phenom「Phenom II X4 Black Edition」。動作クロック3.0GHzで上位モデルにあたる。OPNは“HDZ940XCJ4DGI”だ(写真=左)。評価作業ではマザーボードにGIGABYTEの「GA-MA790GP-DS4H」を使用した。今回登場したPhenom IIはSocket AM2+に対応したマザーボードがそのまま利用できる(写真=中央)。グラフィックスカードはRadeon HD 4870を搭載したASUSの「EAH4870/HTDI/512M」の初期ロットタイプを使用した。GDDR5を512Mバイト搭載している(写真=右)Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.