期待が膨らむWindows 7に対するアレコレ:元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2009年06月25日 18時33分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

Windows Vistaの改良版がWindows 7

Windows 7 RC版の画面

 RC版(製品候補版)のパブリックダウンロードというマイルストーンを終え、いよいよWindows 7のリリースが近づいてきた。現在提供されているWindows Vistaが必ずしも好意的に迎えられているとは言えないだけに、おのずと新しいWindows 7への期待は膨らむ。その一方で、Windows Vistaの改良型であり、フルモデルチェンジではない以上、Windows 7に大きな期待は持てないという意見も存在する。

 Windows 7がWindows Vistaの改良型であるのはマイクロソフトも公言している通りであり、そうであるがゆえにWindows 7はWindows Vistaと高い互換性を持つとしている。Windows Vista用に提供されているアプリケーションソフトウェアとデバイスドライバの大半が、Windows 7でも動作する。逆にWindows XPとの互換性は、Windows Vistaと同程度か、せいぜい少しよくなる程度だろう。その理由は上で示したように、Windows 7がWindows Vistaをベースに改良したものであり、Windows XPの改良版でない以上、Windows XPとの互換性が根本的に高くなる理由がないからだ。

さまざまな変更点が加えられたWindows Vistaだが……

Vistaで導入されたフリップ3D

 マイクロソフトにとってWindows Vistaは、Windows 2000以来、6年ぶりにリリースするフルモデルチェンジのOSだった。Windows 2000の改良型であるWindows XPから数えても5年ぶりの新OSとなる。Windows Vistaでマイクロソフトはさまざまな改良を加えたが、これは同時にシステム(アーキテクチャ)を変更したということであり、完全な互換性が維持できなくなるのは当然である。どこかを変えた以上、多少なりとも互換性は必ず損なわれる。それはWindows Vistaに限らず、過去のWindows、あるいはWindows以外も含めたすべてのOSに当てはまることだ。

 Windows Vistaでの変更ポイントは数多い。デバイスドライバモデルにWindows Driver Foundation(WDF)を導入したことに始まり、APIとして.Net Framework 3.0を標準搭載し、ユーザーインタフェースに新しいAeroを採用した。セキュリティについても、Windows XPよりもさらに強化されている。

 WDFは、それまでデバイスごとにバラバラだったデバイスドライバの仕様に一定のガイドラインを設けると同時に、原則的にカーネルモードで動作していたデバイスドライバをユーザーモードへ移行しやすくするものだ。つまりデバイスドライバの作成を容易にすると同時に、不注意に作成されたデバイスドライバ1つでシステム全体が不安定になる、あるいはブルースクリーンになることを回避しやすくなる。

Vistaにおけるユーザーアカウント制御の画面

 WinFXという開発コード名で知られていた.Net Framework 3.0は、プログラマの記述量を減らしつつ、高機能でセキュアなアプリケーションを作成できるようマイクロソフトが提供するアプリケーション開発・実行環境である.Net Frameworkの最新版だった(当時)。グラフィックスをはじめとするユーザーインタフェースをつかさどるWindows Presentation Foundation(開発コード名:Avalon)や、通信サブシステムのWindows Communication Foundation(開発コード名:Indigo)など、さまざまなコンポーネントで構成される。

 .Net Frameworkそのものは2002年から正式に提供されているが、OSに最初から標準搭載されるのはWindows Vistaが初めてだった。WDF同様、開発者の負担を減らす(コード記述量を減らす)ことが狙いの1つにあり、Windows Vistaは開発者に優しいOSとなることを目指していた。

 セキュリティの強化は、2002年1月にビル・ゲイツ会長がTrustworthy Computingを唱えて以来、マイクロソフトが全社的な取り組みを行っており、Windows Vistaにおいても重要なテーマであった。それを象徴するのがUAC(ユーザーアクセス管理)だが、これも互換性を損なう一因となった。従来の規制のない状態に規制を加えた以上、全く影響がないということはあり得ない。マイクロソフトは、セキュリティの強化は企業ユーザーにアピールすると考えたのだろうが、互換性問題など別の問題を伴っては、導入に慎重にならざるを得ない。

記事初出時、ビル・ゲイツ会長(当時)とありましたが、現在も会長でした。おわびして訂正させていただきます。

Netbookの登場など、さまざまな誤算が積み重なったVista

 それでもWindows Vistaは、このような改良を加えた結果、開発者に優しく、セキュアで高機能なOSとなったはずだった。利用者にとっての直接のメリットは、最新のGPUを生かしたユーザーインタフェース(Aero)など、あまり多いとは言えなかったが、強化されたセキュリティがマイナスに働くことはないし、開発者に優しいOSは利用者にとっても堅牢なデバイスドライバや優れたアプリケーションの提供という形で、よい結果をもたらすとマイクロソフトは考えたのだと思われる。

 しかしマイクロソフトの狙いは必ずしも的中したわけではない。高機能なライブラリやフレームワークを搭載したWindows Vistaは、快適に利用するためにハードウェアリソースを大量に必要とするようになった。インストール容量の増大は、ストレージを圧迫すると同時に、起動の遅さをもたらした。その結果、Windows Vistaには「重い」というレッテルが張られることとなる。

 おそらくマイクロソフトは、Windows Vistaがある程度「重く」なることは分かっていたはずだ。それでも、Windows XPをリリースしてから5年におよぶハードウェアの進化が、それを補って余りあると考えたのだろう。問題は、5年に渡るハードウェアの進化が、すべてのセグメントで一定でなかったことかもしれない。デスクトップPCやA4サイズの標準クラスのノートPC、モバイルノートPCなど、市場セグメントにより、ハードウェアの性能向上比率は異なる。熱や重量など制限の多いモバイルノートPCにおける性能の伸び率は、デスクトップPCに比べどうしても小さくなるから、こうしたシステムのユーザーは不満を持ちやすい。

2007年末の登場から瞬く間に市場を獲得したNetbook

 それが極端な形で現れたのがNetbookだ。高機能化し肥大化したWindows Vistaは、初期のNetbookにはインストールすることさえできなかった。CPUの処理能力、グラフィックス性能、メモリ搭載量などにおいて、時計の針が逆回転したNetbookがWindows Vistaの理想的なプラットフォームになれるわけがない。マイクロソフトはNetbook向けにWindows XPのライセンスを継続せざるを得ず、結果としてWindows XPの寿命を延ばすことになった。これがWindows XPのままで構わない、という空気を余計に助長してしまった。

 これとは別に、最初にリリースされた初期バージョンの完成度が低かったことも、Windows Vistaの評判を落とす結果となった。こうした不具合の大半はService Pack 1のリリースまでには解消されたが、初期のトラブルが、Windows XPのままで構わないどころか、Windows XPの方がよいという評判を招いてしまった可能性はある。

 もちろん、マイクロソフトは6年ぶりのフルモデルチェンジとなるWindows Vistaの開発に万全を期していたはずだった。マイクロソフトがWindows Vistaのベータ(β1)をリリースしたのが2005年7月、以降、ほぼ2カ月ごとにCTPと呼ばれる中間ビルドの提供を行い、RC1をリリースしたのはβ1のリリース後1年以上経過した2006年9月である。これだけ時間をかけたにもかかわらず、途中WinFSの開発中止など、大幅な仕様変更が生じたこともあり、2006年11月の正式リリース(RTM)までに十分な完成度に達しなかった。しかし、それでも出さざるを得ないところまで、当時のマイクロソフトは追い込まれていた、ということだったのだろう。

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