連載
» 2009年07月30日 11時00分 公開

山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」:ただのNetbookじゃ、VAIOになれぬ (2/3)

[山田祥平,ITmedia]

VAIOのNetbookだからデザインは妥協できない

武上 横並び状態のNetbookの中でもVAIOの一員であることを主張できるように、VAIO Wは、デザインに力を入れています。例えば、デザインを意識したNetbookの中には、ボディに付いた指紋がとても気になるモデルもあります。VAIO Wでは、いつでもどこでも好きなところに持ち運ぶことを想定しているので、外で人に見られることを考えると、できるだけ指紋が目立たないのが望ましいですよね。そこで、ツヤ消しの表面加工を取り入れました。このために意外とコストが掛かっています。VAIO Wは価格を抑えたとはいえ、お金を払って購入してもらうのですから、高級感が出るように工夫しています。

 WAIO Wでは、当然ながらサイズのコンパクト化も意識しています。コンパクト化の要求は持ち歩いているときだけではありません。テーブルに置いてディスプレイを開いたときにもコンパクトになるように逆ヒンジを使っています。キーボードも、アイソレーションキーボードで高い質感を実現しています。

 そのほかにも、Webブラウジングの使い勝手をよくするために、タッチパッドの面積を広く確保し、パームレストも手を置いて心地良くなるような形状とサイズにしています。Netbookといえど、一目で好きになってもらわないと使ってもらえないと思うのです。見た目で勝負することもVAIOシリーズには重要なポイントです。

 VAIO Wのデザインで妥協したところはありません。設計とデザイナーの努力と工夫でコストを抑えながらそれを意識させない外観と質感を実現できました。社内でVAIO Wを披露したときも、「このコストでよくここまで」とみんなが驚いていました。

 パームレストやタッチパッドの色が、ボディのカラーバリエーションに合わせて変わっていますが、コストを抑えるために、ここのカラーリングを共通にすることもできたのです。Netbookの中には、カラーバリエーションを用意していても外側とボトムの色だけ変えているモデルが多いので、液晶ディスプレイを開いたときにボディカラーの違いが感じられません。VAIO Wでは、使うために本体を開いたときの表情も大切にしようと判断して、パームレストとタッチパッドの色を変えているのです。

──デザインにかなりのコストが掛かっているようですね。

それぞれのカラーバリエーションに合わせて基調色と異なるパールカラーを混ぜているので、光の具合で見た目の質感が変わる。黒いパールを混ぜたピンクモデルでは、金属のような光沢感が表現されている

武上 コストというより手間ですね。技術者やデザイナーが手間を惜しまなかったということです。それに、ほかのメーカーのNetbookが数多く存在している中で登場するVAIOのNetbookは、先行するモデルを超えるデザインが期待されます。それに応えないわけにはいきません。

 普通のNetbookで塗装というと1つの色を塗るだけなのですが、VAIO Wでは何層かに分けて塗っています。こういう工夫で、深みのある色合いが表現できるだけでなく、例えば、ブラウンの場合は、赤みのあるパール、ホワイトでは黄色のパール、ピンクには黒っぽいパールを混ぜるなど、ちょっとした工夫で高級感を演出できます。

 コストの抑制は確かに重要なのですが、企画を検討するときには考えないようにしました。デザインでWAIO Wに必要とされる要素を最優先したのです。塗装のコストだけではなく、いろいろなところでバランスをとって、最終的にうまくまとまればそれでよかったということです。個々のコストをすべて切り詰めていくより、必要に応じたメリハリが重要ではないでしょうか。ですから、デザインを重視した一方で、薄さと軽さはあまり追求していません。優先順位はかなり低かったですね。10グラム、1グラム単位で軽量化を追求することをVAIO Wではしていません。

──今回は、製品のパッケージにもこだわったそうですね。

武上 そうです。パッケージへの思い入れは、ぜひ実物を見て感じてもらいたいですね。今回は、購入層の幅を広げたかったので、パッケージを開ける瞬間、言い換えれば、VAIO Wと初めて出会う瞬間のわくわくする感じを、うまく演出しようと考えました。

 Netbookの価格ならプレゼント需要にも応えられるでしょう。そういうことを意識して、パッケージのデザインはギフト仕様になっています。単なる“段ボールの箱”にしたくありませんでした。箱を開けるとタッチパッドの柄とそろえたアクセサリボックスが現れます。次にアクセサリボックスを取り出すと、今度はVAIO W本体を入れた袋が現れます。その袋にもこだわりました。ハンドバッグを入れる袋みたいですが不織布を使っています。本当は色も同じにしたかったのですが、さすがにコスト的に無理でした。試作段階では、外箱の外側から本体が思いっきり見えているようなパッケージデザインも考えていました。しかし、輸送中の破損に耐えられるだけの強度が確保できないなどの理由で、今のタイプに落ち着きました。

パッケージを開けるとブラウンモデルのパームレストと同じデザインを取り入れたアクセサリボックスが姿を現し、それを取り出すと不織布に包まれたVAIO Wが出てくる(写真=左)。外箱のカットを工夫してアクセサリボックスを取り出しやすくしている(写真=右)

安いものを探しているユーザーではなく、やりたいことが分かっているユーザーに選んでもらう

──今回から製品名の“type”が取れて、アルファベット一文字になりました。この“W”の由来はなんでしょう。

武上 “W”は“Web”につながっていくことを意味します。いまのユーザーには製品の実力を正しく判断できるスキルがあります。ですから、Atomの性能は、ある程度以上のことをさせるには無理があることも知っています。Atomを搭載したVAIO Wもメインとなるのは“Web”なんですね。

伊勢 Blu-ray Discドライブを搭載して高画質のフルHD動画再生に対応するVAIOシリーズとは、マーケティングを明確に区別しています。Blu-ray Discドライブを搭載することで、より多くの付加価値を提供できるVAIOと、NetbookのVAIOはできることが全然違うことをアピールしていく予定です。

武上 だからこそ、ライトな使い方をするような提案がVAIO Wならできると思います。

伊勢 若年ユーザー層では、小学校からPCを使った授業を普通に経験しています。これから先、その子たちが成長したときに最初に与えられる自分専用のPCとして、VAIO Wのような存在があってもいいと思うのです。

 いずれにしても、とにかく安いものが欲しいユーザーではなく、自分のやりたいことが分かっているユーザーにVAIO Wは選んでもらえると思います。Netbookであっても、安物で間に合わせるのではなく、VAIOであること、VAIOを選んでもらえることが重要です。

武上 ユーザーのやりたいことに合ったVAIOを用意するということですね。そういう意味で、VAIO WはVAIOユーザーに用意した数多くの選択肢の1つなんです。ただ、ユーザーが間違ったVAIOを選ばないように正しいメッセージを確実に伝えることが求められます。どのモデルでもそのメッセージはきちんと出していて、カタログやWebページを見れば分かるはずです。

 VAIO Wはモノとして一目で好きになってもらえることを最も大事にして開発しています。出来上がったVAIO Wに対しても、そこには絶対の自信があります。

 VAIO Wで初めてVAIOシリーズを購入するユーザーも多いはずです。そのようなユーザーに、VAIOシリーズの持ち主になった喜びを感じてもらえないと、次につながりません。子どものころに買ってもらったソニーの製品でうれしいことがあったりすると、大人になってもソニーの製品を買うということがありますよね。

伊勢 今、ノートPC市場の3割をNetbookが占めるようになり、そのことで、PCが1人1台という家庭が当たり前になりつつあります。しかし、従来からあるVAIOシリーズでは、1人1台の需要に対応できないんです。だから、VAIO Wでその需要に応えていくようになります。VAIO Wは先行するNetbookを超えられる部分が必ずあるはずなので、そこを訴求しながら1人1台の環境をVAIOシリーズでもっと広げていきたいと思っています。

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