ただのNetbookじゃ、VAIOになれぬ山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(1/3 ページ)

» 2009年07月30日 11時00分 公開
[山田祥平,ITmedia]

 ソニーが満を持して投入するNetbookのVAIO Wは、“後発の強み”のアドバンテージを十分に発揮している。それに加えて、VAIOという称号が与えられる以上は、廉価なNetbookであってもVAIOであるための条件を満たしていなければならないと開発者は主張する。

 では、その条件とは何であるのか。VAIO Wの製品企画とマーケティングに関わった武上有里氏(ソニー ネットワークプロダクツ&サービスグループ VAIO事業本部企画戦略部門企画部Mobile Device課)とVAIO全般のマーケティングに関わる伊勢由樹氏(ソニーマーケティング ITビジネス部門IT営業部企画課 マーケティングマネージャー)に話を聞いた。

Netbookなら友人にも買ってもらえる

──ついにVAIOシリーズのNetbookが登場しました。この製品の開発で、お二人はどのような役割を果たされましたか。

伊勢 私は、開発された製品をどのようにして国内市場に広めていくかを考える立場です。マーケティングですね。VAIO Wだけではなく、VAIOシリーズ全体を見ています。

武上 私は、各VAIOシリーズを企画する立場で、コンセプトやターゲット、仕様などを決めます。VAIO Wの担当となって、いま挙げた項目について具体的に決定していきながら商品化を進めました。

VAIO Wの製品企画を担当したソニー ネットワークプロダクツ&サービスグループ、VAIO事業本部企画戦略部門企画部Mobile Device課の武上有香氏(写真=左)と、VAIOシリーズのマーケティングを担当しているソニーマーケティング ITビジネス部門IT営業部企画課 マーケティングマネージャーの伊勢由樹氏(写真=右)

──VAIO Wの外観は、これまでのVAIOシリーズと同様、見るものにスタイリッシュな印象を与えますね。ユーザー層では女性をかなり意識されたのでしょうか。

武上 意識はしましたが、女性を100%ターゲットにしていたわけではありません。VAIO Wの商品企画に配属された当初から、ターゲットとして幅広い年齢層を考えていました。ノートPCの利用場面をいろいろ調べてみたところ、既婚女性の多くが1台のPCを家族と共有していたので、そういう人に自分専用のPCとして使ってもらいたいと考えるようになったのです。

 ただ、自分の友達でもそうなのですが、買い物をする場合、電化製品の優先順位がとても低いですね。女性は、洋服やアクセサリー、バッグなどにお金を使ってしまい、高額なPCにまでお金を回さないようです。でも、Netbookの価格帯ならなんとかなるんじゃないかと。ボディカラーにピンクを用意したのは、そのような購買層にも買ってもらいたいという考えもありましたね。

「女性を100%ターゲットにしたわけではない」という武上氏だが、ピンクのカラーバリエーションを用意して、PCにまでお金を回さない友人達にも自分専用のVAIO Wを買ってもらいたいと考えている

インターネットコンパニオンだからプレーンなVAIO Wがいい

──VAIO Wには、ほかのVAIOシリーズのようにオリジナルのソフトウェアなどがあまり用意されていません。そのことが、新しく登場したVAIO Wを十分に主張できていないようにも感じます。

武上 VAIO Wでは、機能をたくさん盛り込むより、そのままの構成でこんなことができるという提案を考えました。使い方指南ではなくてライフスタイルの提案ですね。VAIO Wを使ってどのように楽しんだらユーザーのライフスタイルが向上するのか、いろいろなライフスタイルに対応するためにカタログも工夫しています。

 これまでのVAIOシリーズでは、機能をたくさん盛り込んでも、多くのユーザーがすべてを使いこなせていないというフィードバックがありました。しかし、インターネットで提供されるサービスやメールだけを使うと決めていて、それらを利用するのにAtomを搭載したPCで十分だと分かっているユーザーには、VAIO Wが最適だと判断してもらえると思います。

 すでにVAIOシリーズを愛用しているユーザーは、モバイル利用に特化したVAIOのラインアップを見て、小さいPCを持ち歩いて使うのがごく普通のことのように考えています。でも、VAIOユーザー以外では、小さいサイズのノートPCを使っていないケースが意外と多いですね。空港の待合室で観察すると、ノートPCを使っている人をよく見かけるようになりましたが、その中にはかなり大きなノートPCを開いている人も少なからずいます。モバイルコンピューティングを実践していても、小型のモバイルPCを使っていないユーザーが、まだたくさんいるのです。

──VAIO Wを、処理能力の低いNetbookと知らずに購入してしまうケースはないでしょうか。そういうユーザーにVAIOのイメージが悪くなるようなことはないでしょうか。

武上 そうならないように、メーカーとユーザーのコミュニケーションは重要です。VAIO Wの購入を検討されている人には、VAIO Wを使う用途はインターネットが中心であることを強く訴求する必要があります。そこは、製品プロモーションでも注意してもらっています。

 VAIO Wの基本的なコンセプトは「インターネットコンパニオン」です。Atomのパフォーマンスを考えると、インターネットコンパニオンという性格が最も適しているといえます。すでにPCを1台持っていて、さらにインターネットアクセスに特化して使うもう1台のPCとしてVAIO Wを選んでもらうことになるでしょう。

 Atomを搭載したPCでインターネットから利用できるサービス以上のことをやらせると、性能が不足してユーザーは不便を感じるようになります。Atomの限界を知っているユーザーは、Netbookでできることの範囲を理解しているので問題ないのですが、このような制約を知らないユーザーはNetbookで何でもやってしまうんですね。

 ただ、一般的なユーザーがPCを使うとき、今では、インターネットサービスを利用する割合が多くなっています。特に、自宅で利用することが多いユーザーほど処理が重いアプリケーションを使いません。仕事で使うPCではないからです。そういう事情を考えると、家庭ではインターネットコンパニオンが必要とされていると思うのです。

 日本でもNetbookは多くのかたに認識されてきました。そのおかげで、後発のVAIO Wが登場した今ではNetbookの性能とその主な利用場面が広く理解されています。VAIO Wでは、処理能力が低いことを理解しているユーザーが、メインのPCとして購入するケースも考えました。だから液晶ディスプレイの解像度は1366×768ドットを採用しています。ここは譲れなかったですね。企画当初に存在したNetbookのほとんどは縦600ドットだったので、VAIO Wでもその解像度を検討しましたが、企画を進めていく段階で、Netbookユーザーの圧倒的多数が解像度の低さに不満を持っていることが判明したのです。

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