「iPad」はネットとコンピュータを再発明するiPad Wi-Fi+3G版で知った“違い”(2/3 ページ)

» 2010年05月26日 00時01分 公開
[神尾寿,ITmedia]

ネットやコンテンツに“触れる”新たな体験

 iPadの初期設定はiPhoneと同様であり、PCやMacと接続して、iTunesでアクティベーションを行う。すでにiPhoneやiPod touchを使っているユーザーならば、ユーザー認証を行うことで、iTunes上の設定や音楽コンテンツ/アプリなどを引き継ぐことが可能。この一連の流れはAppleのモバイル製品でおなじみのものだ。

 しかし、実際に動くiPadを初めて触ると、その操作感と表現力の違いに感動する。マルチタッチ対応タッチパネルと、スムーズな操作感を持つタッチパネル技術は、iPhoneやiPod touchで実現されているものだが、iPadのユーザー体験は、先行するiPhone/iPod touchとは別次元の感動をユーザーにもたらす。

Photo iPadは直感的にネットやコンテンツが使えるため、パソコンに慣れた大人よりも子どもの方が自然と使いこなせるのも特長。我が家では小学二年生の長男が、iPadに夢中になっている

 いったい何が違うのか。

 1つには画面サイズや解像度の違いによる差が、予想以上に大きい。iPadの画面サイズは9.7インチで、解像度は768×1024ピクセル。一方のiPhoneは、画面サイズが3.5インチで、解像度は320×480ピクセルなので、表現力の差は2倍以上ある。しかし、Webサイトやメールの閲覧、iPad専用アプリを使ったときの印象は、この数値以上に“のびのび”としているのだ。

 そして、この広い画面でも、すべての動作がサクサクと小気味よく動くことが気持ちいい。AppleはiPadを作るにあたり、専用のプロセッサー「A4」を独自開発し、搭載するソフトウェアもすべてiPadのために再設計や再調整を施した。その効果は絶大で、大きな画面に大量の文字や写真を表示させても、指先の動きに自然に反応する。また、スリープ状態からの解除も一瞬なので、iPadを使っている際には「待たされる」ということがない。その動作の小気味よさは、高性能なPC以上である。

 この高い表現力と快適な動作速度、そしてマルチタッチ対応のタッチパネル技術により、iPadではiPhoneやiPod touch以上に「インターネットやコンテンツに触れているような」独特の操作感を実現している。まるでデジタル情報に直接触って動かしているようだ。直感的にインターネットやコンテンツが使える“手応え”はiPhone以上であり、これまでのPCやNetbook、デジタル家電や家庭用ゲーム機にはなかったものだ。

バッテリーの「残り時間」は気にしない

 もう1つ、筆者がiPadを使っていて感嘆したのが、とにかく「バッテリーが長く持つ」ことだ。

 iPadのバッテリー稼働時間は、Wi-Fi+3Gモデルで最長9時間、Wi-Fiモデルで最長10時間。PCや携帯電話・スマートフォンなどたいていのモバイル端末は、インターネット閲覧やアプリの利用、コンテンツの視聴などをするとカタログ値ほどバッテリーが持たないのが通例だが、iPadは違う。Webサイトの閲覧やメールの処理、映像の視聴をしてもバッテリーがなかなか減らないのだ。

 実は筆者は日本市場向けのiPad Wi-Fi+3Gモデルを試すよりも前に、北米市場向けのWi-Fiモデルを海外出張時にじっくりと試用していた。その時には2時間モノの映画を2本見てもバッテリーを30%ほどしか消費しておらず驚いたのだが、このロングバッテリーライフはWi-Fi+3Gモデルでも健在だ。さすがに3G通信を多く行うとWi-Fiモデルよりはバッテリー消費が早いが、それでもネットを連続的に使い続けでもしなければ、十分に1日以上バッテリーが持つだろう。誤解を恐れずにいえば、iPadはバッテリーの残り時間を気にする必要はない。これは地味なことのように見えるが、モバイルでのインターネットおよびデジタルコンテンツ利用において、とても画期的なことである。

 そして、iPadのバッテリー性能の高さは、Wi-FiモデルとWi-Fi+3Gモデルのどちらを買うかという判断にも影響を及ぼすだろう。筆者はiPadが発表された当初、手持ちの「Pocket WiFi」にiPad Wi-Fiモデルを組み合わせて使おうと考えていたのだが、iPadのバッテリーがここまで持つと、モバイルWi-Fiルーターの方が先にバッテリー切れになってしまうことが考えられる。一方で、Wi-Fi+3Gモデルなら“3Gも込み”でバッテリー持続時間が長いので、外出先でたくさんiPadを使いたいという人は、Wi-Fi+3Gモデルを買った方が使い勝手がよさそうだ。

快適なネット環境、日本語入力環境も改善

 iPadは基本がiPhone OSベースの設計になっているため、インターネットとの親和性は高い。

 とりわけ快適なのがWebサイトの閲覧だ。iPadが搭載するSafariは、モバイル端末の中ではトップクラスの高速動作と再現性を誇っているが、これがA4プロセッサと組み合わさることで、より高速なサイト表示が可能になっている。しかもWi-Fi環境でのWebサイト閲覧が快適なだけでなく、3G環境下でもiPhoneより表示が高速だ。この“サクサク表示”と、iPadならではの画面の見やすさや心地よい操作性により、Webメディアが紙メディアのように快適に利用できる。実際、筆者はiPadを使い始めたことで紙の新聞をやめて、日本経済新聞電子版を毎日読むようになった。

PhotoPhotoPhoto iPadのSafariは表示画面の大きさとA4プロセッサによる高速描画により、PC並みかそれ以上に快適にWebサイトの閲覧ができる

 メール利用も快適だ。iPadのメールソフトはiPhone向けのものが拡張されたもので、広い画面に合わせてUIが最適化されている。メールの一覧表示やプレビュー、返信などが見やすくなったため、わざわざPCを持ち出さなくても、気軽にメール処理ができるようになった。

Photo iPad付属の「Mail」画面。iPhoneよりも大画面であるため、横向きではメール一覧と本文表示を一画面でできる

 そしてiPhoneで「弱点」だと筆者が感じていた日本語入力周りも、iPadではずいぶんと改善された。まず、ソフトウェアキーボードのサイズが拡大されたために、入力時の打ち間違いによるストレスは激減した。日本語変換の精度も従来より改善しており、Twitterやメール利用といった短い文章の入力だけでなく、Evernoteで議事録を取ったり、ワープロソフトのPagesで文章を入力するといったことも無理なくできるようになった。実はこの原稿も、半分くらいはiPadとPagesで書いている。

PhotoPhoto iPadではiPhone同様に、タッチパネルを用いたソフトウェアキーボードで文字を入力する。画面サイズが大きくて動作が高速なため、日本語入力は快適だ。漢字変換の精度もiPhoneより向上しており、メールの返信やTwitter利用などコミュニケーション用途だけでなく、ワープロの利用でもほとんどストレスは感じない。なお、iPadは別売りでハードウェアのキーボードにも対応している

 iPadは一般的なモバイルノートPCやNetbookと設計思想が異なり、PCに詳しくない人が求める「ネット利用」やモバイルでの「コンピュータ利用」のニーズのおおよその部分を、手軽かつ簡単に使えるように設計されている。そのため“モバイルでもPCと同じ事をしたい”という人には、iPadだともの足りない部分はあるだろう。しかし、外出先やリビングルームで、ちょっと調べ物をする、メールの返信を書く、Twitterでつぶやく、ブログのコメントを返す、といった用途ならば、むしろPCよりもiPadの方が使いやすい場面が多い。iPadは、カジュアルにネットを使うというスタイルに適しているのだ。

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