MSIのオーバークロック設定グラフィックスカードは、同社のハイエンドマザーボードと同様、Hi-c CAPやスーパーフェライトチョークといった「Military Class 2」コンポーネントを採用して回路の品質を高めている。また、製品によってはリファレンスデザインから電源フェーズ数を増強しており、電源供給でも余裕を持たせている。このことで、オーバークロックでの過酷な動作条件でも安定した動作を実現するわけだ。
さらに、標準で付属するオーバークロック用ユーティリティ「After Buner」を利用すれば、ユーザーがさらにオーバークロック設定をチューニングできる。After Burnerには、状態監視やファンの回転数制御などの機能を統合している。特にファン回転数機能では、GPU温度と回転数という2軸のグラフによって回転数が設定できる。可変ポイントも追加できるので、静音化を目指す場合にも活用できる。
クーラーユニットの特性を調べるために、Radeon系 GPUを搭載したグラフィックスカードでGPUの温度とファンの回転数をアイドル時、3DMark 11実行中の最大値で確認してみた。なお、測定にはGPU-Zを用いている。まず、温度に関しては、どのGPUもリファレンスデザインから大幅に低い温度に保たれている。特にRadeon HD 685では高負荷時で20度以上の差がある。
ファンの回転数は、それぞれのグラフィックスカードでおよそ40〜50%の範囲で制御されている。リファレンスデザインのクーラーユニットでは製品によっても異なるが、おおよそ20%以上の範囲でダイナミックな回転数制御をしていることが多い。そのおかげで、MSIのクーラーユニットでは動作音がほぼ一定に感じる。リファレンスデザインの音量が回転数にあわせて“ダイナミックに”変化するので、MSIのグラフィックスカードは静か、という印象が強い。実際、ベンチマークテストで負荷をかけてみても、回転数のパーセンテージ示度は若干高めになってもMSIのクーラーユニットは静かで、ファンノイズが耳につくこともない。
回転数で注目したいのがRadeon HD 6850搭載グラフィックスカードでの比較だ。パーセンテージ示度が高めなCycloneが、リファレンスデザインのクーラーユニットよりも回転数が低い。実際に聞こえる音も、Cycloneは静かだ。もっとも、Radeon HD 6950搭載グラフィックスカードでは、Twin Frozr系のクーラーユニットが高回転にもかかわらず静かであったりするので、発生する音量は回転数とともにファンの形状も影響する。
その、Twin Frozr系クーラーユニットでも。AfterBurnerでファンの回転数を最大にすると、さすがにうるさくなる。オーバークロック設定と発生する音量はバランスが肝心で、出荷時設定では静音を重視する傾向にある。オーバークロックを重視する設定はAfterBurnerを使うユーザーに委ねていると考えることもできるだろう(なお、Radeon HD 6870のみ回転数情報が取得できなかったため、これを除くグラフィックスカードでの考察となる)。
今回集めてたグラフィックスカードは、すべてオーバークロック版だ。その性能をベンチマークテストで確認してみる。Core i7-980Xを用いた構成で、メインメモリを4Gバイト×3としている。
評価用システム構成 | |
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CPU | Core i7-980X(3.3GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大3.8GHz) |
マザーボード | ASUS Rampage II Gene |
チップセット | Intel X58 Express+ICH10R |
メモリ | DDR3-1066(4Gバイト×3) |
HDD | WD7680AAKS(768Gバイト、7200rpm、16Mバイト) |
OS | 64ビット版Windows 7 Ultimate |
オーバークロックモデルといっても、クロックアップは小幅なので、リファレンスデザインと比較しても大きな差はない。Radeon系で最もスコアが高いのは当然ながらR6950 Twin Frozr II OCだが、R6850 Cyclone 1GD5 PE OCは、Radeon系3製品で設定されたオーバークロック幅が最も大きいだけに“誘惑”される。
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