いま最も勢いのあるIT企業、Evernoteの秘密に迫る:Evernote Trunk Conference訪問記(前編)(2/2 ページ)

» 2012年09月06日 19時52分 公開
[林信行,ITmedia]
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日常業務の中に「型」を持ち込む

階段の中央でドラを鳴らすリービンCEO。ミーティングの始まりを告げる合図だ

 Evernoteでは週に1度、全社員が一堂に集まって各製品開発の進ちょくがどうなっているかや、今後の会社の方向性、そしてそれほど大きな話題がなければ、社員ひとりひとりの仕事とは何も関係のない近況などを話し合うミーティングらしい。

 木曜日の夕方ごろ、社員たちが仕事をする4階と5階をつなぐ大階段の真ん中から「ゴワワワワワ〜〜ンン、ゴワワワワ〜〜〜ン」とドラの周辺をバチでこする音がして、ある程度、社員が集まったところでリービンCEOが「グウォウォウォウォーン」とドラの中心を打ち会議が始まる。

 Evernoteは、このようにちょっとした会社の仕事や行事まで、面白い「型」にしてしまう(あるいは「文化」にしてしまうといってもいいかもしれない)。例えば、以前の記事でフィル・リービン氏が披露していた「おーい、お茶」の巨大ハリボテを飲むポーズ。こちらも今ではEvernoteを訪問したゲストのあいだで人気で、みんなこの階段でこのポーズをして記念撮影する習慣が定着してきた(それに気をよくして伊藤園からは、ほかのお茶のハリボテも提供されたようだが、階段に置かれているのはEvernoteのコーポレートカラーでもある緑の「おーい、お茶」だけだ)。

 さて、ETC前日の会議では、部外者が多かったこともあり、翌日から開催するETCの最終確認、それから最近入社した新人スタッフの紹介だけに留まった。急成長中のEvernoteだけあって、この週のミーティングだけでも4人ほどの新入社員がいたが、中でも注目株は、今後リービン氏の“付き人”となる代田常浩氏だ。

Evernoteで注目の新入社員、代田常浩氏

 東京大学を卒業後、スタンフォード大学の留学を終え、日本へ帰ろうかどうかを悩んでいた時期に、たまたまEvernoteが人を採用していたのを聞きつけて面接を受けてみたところ、採用を通ってしまうどころか、なんとリービン氏について世界中を回る付き人として大抜擢されてしまった。

 最初は自分がいかにEvernoteを愛しているか面接で熱弁したことが効いたと思っていたようだが、どうやら面接をしたリービン氏や外村氏に聞いたところ、彼の多様なバックグラウンドが重要だったという。

 実は代田氏は、柔道の黒帯を持っていたらしく、この点でリービン氏に、ただの秘書だけでなくボディガードとしての腕も期待されているようだ。しかし、それ以上に重要だったのがリービンCEOや、CFOの外村氏が愛して止まない日本のラーメンの名店、あの「一風堂」で、代田氏がちょっと変わった経歴を持っていたことだ。

 なんと、代田氏はおそらく一風堂始まって以来初めて、国立大学の卒業生で麺をゆでることを許された男、という変わった経歴の持ち主なのだ。彼は大学時代アメフトの選手だったのだが、ケガで試合に出られなかったのを機会に一風堂でアルバイトを始めた。最初は店で「おい、東大」と、やや小馬鹿にされて呼ばれていたが、その後、どんどんと実力を発揮し、一風堂ではかなり重要なポジションである“麺茹で”をまかされるまでに出世した。

 ものすごい経歴の持ち主と驚くかも知れないが、よく考えてみればEvernoteではすごい経歴を持つ人はザラ。むしろ、これくらい特徴がないとダメということなのかもしれない。Evernoteのオフィスで、どっちの方向をみて必ずロシア人と日本人がいる、というのも、同社の「型」の1つといえるかもしれない。

 いずれにしても、親日派であるEvernoteのトップの側近に、またひとり日本人がついたということは、日本からEvernoteを応援している我々としてもうれしいニュースだろう。

 続く中編では、ほかのどんな開発者会議ともひと味違う、ETCカンファレンスの全ぼうに迫っていく。

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