“質”で勝負がアップル流――「iBookstore」日本版が読書体験に変革をもたらす日本文化に根ざした選書も(3/3 ページ)

» 2013年03月06日 20時55分 公開
[林信行,ITmedia]
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新しい書籍購入文化を生み出すさまざまな工夫

iPhoneやiPadを使っている子どもに毎月コンテンツをせがまれている親は、ぜひ、アローアンス(お小遣い)機能を使おう。お小遣いの残りの額を見ながら、どのアプリとどの音楽と、どの本を買うか悩むのも立派な社会勉強

 ちなみにファミリー向けの展開という点では、筆者はこのiBookstoreとiTunesに用意された「アローアンス(お小遣い)」という機能の組み合わせにも大きな期待を寄せている。

 筆者自身も昔は、毎月の決まった小遣いの中で本やオモチャを買っていた。アローアンスは親から子どもへ毎月決まった額のお小遣いを自動で与える機能で、PC版iTunesのトップ画面右側から「iTunesギフトを贈る」を選び「詳細設定」で設定できる。

 例えば、子どものiTunesアカウントに毎月3000円の「アローアンス」を設定すれば、子どもは毎月3000円をやりくりして、欲しい本やマンガ、音楽、映画そしてiOSのアプリケーションを購入(あるいはレンタル)できるようになる。リアルな社会のリアルな暮らしに近いやりとりを再現するこんなディテールのこだわりもアップルらしいうまいやり方だと言わざるを得ない。

 iBookstoreを勢いづける要素としては、さらにアフィリエイトやソーシャルメディア連携も挙げられると思う。今のところ公式な発表や動きはないが、これまでiTunes StoreやApp Storeで売られてきた音楽や映画、アプリは、LinkShareを通してアフィリエイト収入を得る仕組みが提供されてきた。そう考えるとiBookstoreで発売される電子ブックについても、同じ仕組みでアフィリエイトが用意されると考えるのが自然で、これはブックレビュー系のブログやメールマガジンでiBookstoreの電子ブックを紹介してもらうよいインセンティブになる。

 また、iBookstoreで売られている各書籍のページには、TwitterやFacebookにその本のリンクを投稿する機能や、購入した本の5つ星評価やレビューを書き込む欄も用意されている。こうした5つ星評価やレビューは、最初についた何件かのレビューによって雰囲気が左右され、場合によっては目も当てられないくらいひどい言葉が書かれることもあるが、App Storeで同様のシステムを提供してきたアップルだけあって、そうした部分にも、情報を消すことなく、うまく場の空気をリセットする工夫がされている(イタズラをする人を避けるためにあえて詳しくは書かないが)。

 すでに250億の楽曲を販売してきた世界最大の音楽販売サービス「iTunes Store」のノウハウを生かし、お気に入りの著者の新刊情報をメールで通知してくれるアラート機能や、その本を買った人がほかにどんな本を買っているかを教えてくれる機能など、面白い本を発見しやすくする工夫が随所に凝らされている。

 アップルといえば、最先端の技術を駆使してガラスとメタルの素材を宝石のように美しく仕上げる、工業デザインに優れた会社というイメージが強いが、iBooksやiBookstoreは、この会社がソフトウェアのデザインにおいてもいまだに世界のトップクラスにあるということを思い出させてくれる。

献本は是非iBooksで!

 iBookstoreの最大の魅力は、その体験(おもてなし)のすばらしさだと思うが、世の中には質の善し悪しで評価するのが苦手な人がいる。そんな人のためにiBookstoreの機能上のアドバンテージを追記したい。

 特に個人的に非常に期待しているのが献本だ。私のような仕事をしていると毎月10冊近く本が送られてくるが、取材や講演で国内/海外へ移動していることが多く、紙の本は持ち歩くとしても1冊が限度。新幹線に乗ったり飛行機が水平飛行に入ると結局、機内誌や電子書籍ばかりを読んでいる。

 もし献本が電子書籍ならどこへでも持ち歩けるし、レビューで取り上げたい部分には下線が引けるので圧倒的に便利なのだが、これまできちんとした電子献本の仕組みを取り入れている電子ブックストアは私が知る限りでは存在しなかった。

 これがiBooksでは可能なはずだ。少なくとも同じエンジンで動いているiTunesでは指定曲をコードを入れてダウンロードしたことがあるし、アプリもレビュー用のコードをもらってダウンロードしたことがある。映画とiBookは、まだレビュー用のコードをもらったことはないが、ほかの人にギフトとして送る機能はあるので、献映画、献本が可能だろう。

 今後私に献本をされる方は、本棚を圧迫する紙の本よりも、パーティなどで人に見せて紹介しやすい電子書籍で送ってくれるとうれしい。iTunesのコードで献本する風習が増えれば本についての話題も広がりやすくなるし、知り合い同士でオススメの電子ブックを贈り合う文化が広がるかもしれない。


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