タブレット本体のサイズは309.6(幅)×199.3(奥行き)×11.9(高さ)ミリ、重量は約980グラム(実測値では967グラム)だ。ブラックで統一されたボディの背面は樹脂製で、細かなドット調のテクスチャが施されており、金属製ボディのような高級感はないが、ザラザラした質感で手が滑りにくい。
とはいえ、1キロ近い重さなので、手で持って使うのは短時間に限られる。通常はテーブルや膝の上に置いて使うことになるだろう。10型クラスのタブレットよりかなり大きいものの、薄型のA4ファイルに近いサイズなので、A4の書類が入るビジネスバッグなどには収まりやすい。防水・防じんのボディに第4世代Coreと冷却ファン、12.5型フルHD液晶ディスプレイを搭載していることを考慮すれば、理解できるサイズではある。
ちなみに、同CPUを搭載した日本マイクロソフトのWindows 8.1タブレット「Surface Pro 2」と比較した場合、QH77/Mは画面サイズが大きいこともあり、重量は約73グラム重い一方、厚さが約1.6ミリ薄い点に注目したい。
ファンの排気口は横位置の状態で左側面の上部にある。左手で下のほうを持てば、手が排気口にかぶさることはない。時計回りに90度回転して縦位置で使う場合は排気口が上面に来るので、両手で握って左右の親指でソフトウェアキーボードを問題なく使える。
内蔵のセンサー類は、GPS、加速度、ジャイロ、電子コンパス、照度と、タブレットに必要なものは網羅し、背面にはFeliCa対応NFCやスライド式の指紋センサー(WindowsログオンやWebサイトの認証などに対応)も備えている。指紋センサーが背面にあることを疑問に思うかもしれないが、実際は本体を横位置で持って、画面を見たまま、右手の人さし指や中指で自然に触れる場所なので使いやすい。
通信機能はIEEE802.11a/b/g/nの無線LANと、Bluetooth 4.0+HSを標準搭載する。ワイヤレスWANや、Windows 8.1のInstantGo機能には非対応だ。
タブレットとしては大ぶりなボディを生かし、フルサイズのUSB 3.0をはじめ、Micro USB 2.0(Micro AB)、SDXC対応microSDメモリーカードスロット、音声入出力の端子、有効約500万画素のアウトカメラ(カメラライト付き)、有効約200万画素のインカメラ、ステレオスピーカー、モノラルマイクも内蔵する。
後述の着脱式キーボードにインタフェース類はないので、クラムシェル型ノートPCとして見ると、拡張性は高くないが、タブレット単体としては充実した装備といえる。ただし、HDMIやMini DisplayPortなどの映像出力は欲しかったところだ。
タブレット本体における最大の特徴は、第4世代Core i5-4200U(1.6GHz/最大2.6GHz)を搭載し、本体に冷却ファンも内蔵していながら、防水(IPX5/7/8)と防じん(IP5X)のボディを実現していることだ。
CPUにAtom Z3000(開発コード名:Bay Trail-T)シリーズを採用したタブレットでは、発熱量が小さく、ファンレス設計が可能なため、防水・防じん設計の難度が下がるが、第4世代Core Uシリーズは高性能な半面、発熱量が大きく、冷却ファンも必要になることから、防水・防じん設計と両立するのは非常に難しい。これを可能にしたところが、QH77/Mの大きな強みだ。
さすがに水中では利用できないものの、側面のカバーを完全に閉じれば、キッチンや浴室(温度は10〜35度、湿度は20〜80%、使用時間は2時間以内の範囲)、プールサイド、雨の中(1時間の雨量が20ミリ程度)で使ったり、砂ぼこりが立つ運動場や作業現場などでも使える。リビングやカフェでタブレットを触っていて、うっかり水をこぼしてしまっても問題ない。実際に浴室でシャワーを浴びせてみたが、ファンも含めて問題なく動作した。
さらに、QH77/Mは本体に収納できるスタイラスペンも付属しているが、このペンも防滴(IPX2)仕様だ。防水タブレットに注力してきたARROWS Tabブランドの一員らしいこだわりが感じられる。タッチパネルはガラスの表面や手に付いた水滴で誤動作することもよくあるが、このペンを使えば、細かい操作も可能だ。
ただし、防水ではないので、しぶきのかかる場所や、水没の可能性のある場所でペン操作はできない。付属のスリムキーボードは、防水・防じんに非対応となる。
第4世代Core Uシリーズに冷却ファン、防水・防じん性能、そしてタブレットとして不満のない薄さ。これら対立する要素をすべて満たすため、QH77/Mは内部構造に独自の工夫を凝らしている。
まず、ボディ内部を浸水不可のエリアと浸水可のエリアに区切り、CPUなどのパーツは前者に配置して防水・防じん性能を確保した。しかし、浸水不可エリアは気密性が高く、CPUの発熱もあるため、ボディ表面からの自然放熱だけでは冷却が不十分だ。
そこで、水中でも駆動できる薄型の防水ファンを浸水可エリアに配置し、空気や水の流れを作る厚さ約1.5ミリの断熱層を挟み込み、防水ファンとCPUをヒートパイプでつなぐことで、防水と放熱を両立した。この防水ファンは洗濯機の洗濯羽のような構造で、水中でも浸水せずに回転する。
QH77/Mの開発者によれば、こうした放熱機構の作り込みが構造設計で最も苦労したという。十分な放熱ができるように、3Dデータを用いた熱解析によるシミュレーションを繰り返し、ボディ内部のエアフローと各パーツにおける熱伝導の最適化を図り、無事に製品化を果たしているのは見事だ。
QH77/Mが対応する防水・防滴・防じん仕様 | |
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防水・防滴規格 | 内容 |
IPX5 | 内径6.3ミリの注水ノズルを使用し、約3メートルの距離から12.5リットル/分の水を最低3分間注水する条件で、あらゆる方向から噴流を当てても、タブレットとしての機能を有する |
IPX7 | 常温で水道水、かつ静水の水深1メートルのところに本機を沈め、約30分間放置後に取り出したときにタブレットとしての機能を有する |
IPX8 | 常温で水道水、かつ静水の水深1.5メートルのところに本機を静かに沈め、約30分間放置後に取り出したときにタブレットとしての機能を有する |
IPX2 | 鉛直から15度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響を受けない。※防水ではないので、しぶきのかかる場所や、水没の可能性のある場所でペン操作はできない |
防じん規格 | 内容 |
IP5X | 直径75マイクロメートル以下の塵埃(じんあい)が入った装置に本機を8時間入れてかくはんさせ、取り出したときにタブレットの機能を有し、かつ安全性を維持する |
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