個人的な感想として、このようにデバイスカテゴリを分けるディスプレイサイズをMicrosoftが一方的に設定するのは違和感あるのだが、同社はOSライセンシーであり、Windows認定プログラムの絡みもあって、メーカー側はこの要請に従う必要があるだろう。
Windows 10がまだ発売されておらず、ライセンス条件の詳細が不明であり、かつ“例外が存在する”可能性も否定できないが、主に次のような弊害が考えられる。
1つめは、例えばWindowsのレガシーアプリケーションが動作するハンディ端末の開発だ。1月に米ニューヨークで開催されたNRFの小売・流通業界向けイベント「Retail's Big Show 2015」において、Intelプロセッサを搭載した6型のWindows端末が展示されていた。産業用のハンディターミナルを想定したものだが、これは上記の8型の条件からは外れる端末となる。
ただ例外として、産業向けWindows Embeddedやエンタープライズ用途でのライセンス条件は異なる可能性があるため、あくまで8型の制限は「コンシューマー向け」なのかもしれない。
2つめはWindows Phoneに起因する制限だ。Microsoftは何らかの理由により、Windows Phoneに採用するプロセッサをQualcommのSnapdragonに限定しており、これまで発売された端末はすべてSnapdragonベースのものだ。一方で同じARMアーキテクチャのWindows RTについては、「Surface(RT)」に見られるように、Tegraプロセッサを搭載したものも存在する。
もしタブレット用のOSもWindows Phoneの拡張となるならば、今後発売されるWindows 10 for phones and tabletsのデバイスはすべてSnapdragonとなる可能性が高いと考えられる。
Microsoftは主に新興国でのWindows Phoneデバイス開発を推進するため、Qualcommとの提携で同社QRD(Qualcomm Reference Design)を使った製品開発支援や期間の短縮化を発表している。デバイスドライバの準備の問題もあるため、Microsoftが特に支援しない限り、今後もハイエンドからローエンドまで、ARM向けWindows 10はQualcommに固定化される可能性がある。
現在、マウスコンピューターが日本国内へのWindows Phone投入を発表し、京セラが同社初のWindows Phone端末をMWCで展示することを予告している。おそらくだが、これらはすべてSnapdragonを採用すると筆者は予測する。
2つめのもう1つの問題は、小型タブレットやスマートフォンでx86プロセッサの採用が難しくなったことだ。Windows 10 for phones and tabletsがARM専用とは明言されていないが、事実上ここで言われるWindows 10はWindows Phoneの延長線上にあるOSであり、前述のSnapdragonの制限も引き継いでいる可能性が高い。特に100ドルタブレットの市場を考えれば、このクラスにx86プロセッサベースの製品を投入するのは難しくなる。
最近、AndroidにおいてもAtomプロセッサの(リベートも含めた)積極アピールでARM一色だった市場の切り崩しを狙うIntelだが、少なくとも低価格Windowsデバイスからは、IntelとMicrosoftともに一歩引いた立場へと移ろうとしているのかもしれない。
こうした中、ひっそりとその役割を終えようとしているのが、3つめのWindows RTだ。これまでもWindows RTの消滅には度々触れてきたが、今回の8型サイズ制限により、基本的に10型以上を想定していたWindows RTタブレットは事実上終了となった。
Surface(RT)向けにWindows 10のアップデートを提供しないことが表明されているほか、最後のWindows RTデバイスとなった「Surface 2」と「Lumia 2520」の生産終了宣言を受け、Windows 10登場を前にWindows RTはその歴史に幕を閉じることになった。
Windows RTが失敗した理由はいろいろ考えられるが、そもそもユーザーの(Windowsに求める)ニーズと乖離(かいり)していたことが理由として大きかったのではないか。
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