話題の“スティック型PC”はどれを買えばいいのかな?m-Stick開発担当者に聞く(1/2 ページ)

» 2015年04月09日 21時00分 公開
[後藤治ITmedia]

 超コンパクトサイズのボディにフルのPC機能を搭載したスティック型PCが話題を集めている。

 2014年に登場したマウスコンピューターの「m-Stick MS-NH1」は、“多めに見積もった”という供給量をはるかに上回る注文が殺到し、入荷と売り切れを繰り返していたことは記憶に新しい。

 また、m-Stickシリーズのファン搭載モデル「m-Stick MS-PS01F」をはじめ、ユニットコムから「Picoretta」、インテルから「Compute Stick」が登場し、同カテゴリの製品は選択肢の幅が広がりつつある。おそらくこの流れに追随する他メーカーも出てくるはずだ。

右から「m-Stick MS-NH1」、「Picoretta」、「m-Stick MS-PS01F」

 その一方で、製品のスペックを見ると、タブレット端末で採用例が多いAtom Z3735F(1.33GHz/最大1.83GHz)を中心とした基本システムは、ほぼ共通であることが分かる。制約のある小型フォームファクターゆえに、差別化が難しい製品カテゴリといえるだろう。

 小型スティックPCの可能性にいち早く注目し、冷却ファンの有無でラインアップを拡充したm-Stickシリーズの開発担当者である平井健裕氏に改めて話を聞いた。

ファンを搭載した新モデル「m-Stick MS-PS01F」と平井健裕氏

同一のシステムでもモデルごとにBIOSが異なる

 m-Stickシリーズ販売後、同社には非常に数多くのフィードバックが寄せられている。同製品の利用シーンで多かったのは、リビングのテレビに挿すという一般的な使い方に加えて、「旅行などで持ち歩く際のサブ機としての用途が意外と多いという印象です。逆に、個人的に密かに期待していた分解して新しい使い方を探す人はあまりいなかったですね」と平井氏は語る。

 新しいカテゴリの製品としてm-Stickシリーズが市場に受け入れられる一方、もちろん不満の声もある。特に多かったのが無線LANと発熱だ。「テレビやディスプレイの裏など、これまではデバイスをつけないような場所で使われるため、ユーザーの環境によっては無線がつながりにくいという声もありました」と平井氏。こうしたユーザーの無線LAN環境に対応するため、同社は「弱いけどつながりやすいもの、(電波が)強くて高速なもの」など無線LANのドライバを3種類用意して公開した。

 また、期待する用途がユーザーによって異なり、特定の用途では熱でスムーズに動作しないと指摘する声もあった。これに対応するため、BIOSアップデートによる最適化や、さらに今回新モデルとして、ファンを搭載したMS-PS01Fを投入している。

 もっとも、ファンレスのMS-NH1、ファン搭載のMS-PS01F、そして巨大なヒートシンクを搭載したPicorettaも含め、「どれが上位モデルということではなく、用途によってそれぞれ最適なモデルを選んでほしい」と平井氏は語る(ちなみにPicorettaを販売するユニットコムはマウスコンピューターと同じMCJグループ)。

 例えば、3モデルの中で最もコンパクトなNS-NH1は「スティック型PCという意味ではやはりこのモデルを最初に検討してほしい」と平井氏は話す。また、すでに長い期間販売しているため、ドライバやBIOSのノウハウがあり最適化が進んでいるのもメリットという。

初代のNS-NH1。ヒートスプレッダで冷却するシンプルな排熱設計だがそのぶんコンパクトなボディになっている

 一方、ファンを搭載したMS-PS01Fのコンセプトは非常に分かりやすく、平井氏は「Bay-Trailの限界値ぎりぎりまでStickで使いたいならこれがいい」と話し、高負荷環境でも安定して性能を発揮させたいという用途に向くと説明する。同社によればファンの採用により、負荷継続時で10度の温度低下が見込めるという。

 ただし、ファンという駆動部分を持つため、ホコリ対策や駆動する部分の耐久性といった発熱以外ではファンレスに劣る部分もある。なお、本機に搭載されたSUNON製ファンのノイズレベルは、1メートルの距離で公称25.6デシベル。「音が出ているテレビの裏に装着してもまず気にならないレベルだとは思います」とのことだ。

 また、MS-PS01Fと共通のボディに、ファンではなく大型ヒートシンクを搭載したPicorettaは、強力な冷却性能を確保しつつ、ファンレスという特性から「環境適用性に優れている」と平井氏。無音のデジタルサイネージや店頭ディスプレイなどでもファンノイズを気にすることなく、MS-NH1よりも広い用途で利用できるというわけだ。ただし、大型ヒートシンクによって重量は約1.5倍に増え、銅製ヒートパイプを搭載するため、いったん上昇した温度が下がりづらいという特性もある。平井氏は「どのモデルが絶対的な上位ということはない」と改めて強調し、「使う目的に一番しっくりくるものを選んでほしい」と結んだ。

MS-PS01F(上)とPicoretta(下)は共通のボディでそれぞれファンの有無が異なる

MS-PS01FはSUNON製超小型ファンを内蔵(写真=左)。Picorettaはヒートシンクを搭載する。内部に銅製ヒートパイプが入っているのが見える(写真=右)

すべて同じ基本システムを採用するがBIOSなどが異なり、Turbo Boostの有効/無効や発熱による制限によりパフォーマンスが異なる。ファンを搭載するMS-PS01Fが最も性能が高い傾向にあるが、GPU系ベンチではクロックを固定したほうが性能が出やすい場合もあるという(写真=左)。初期モデルに搭載されていたBIOS(A05)と、新BIOS(A06)の比較。グラフはフルHD動画(H.264)をコマ落ちなく再生し続けた際のCPUクロックと温度の状態。A06ではCPU動作が最適化されている。なお、A06は64Gバイトモデルで初めて採用されており、最終確認が終わり初期ロット向けにもダウンロード提供する予定という(写真=右)

 なお、4月末の発売が予定されているインテルのCompute Stickとの差別化について、平井氏は「(マウスコンピューターは)PCメーカーとしてすでに多くの販売実績があり、サポート面も含めてノウハウが蓄積されている」と自信を見せる。

 また、Windows 10へのアップグレードも「何らかの形で」提供予定という。さらに次世代CPUを搭載する次期モデルがm-Stickの上位シリーズとして展開され、大幅なデザインの変更はしないが、ケンジントンロックのような物理的な盗難防止の仕組みなども検討しているとのことだ。

マウスコンピューター/G-Tune

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