その結果として編み出されたのが、冒頭で紹介した「故障品の返送は不要、ただし確実に動かなくなったことを証明するための動画の送信を求める」という、エキセントリックな方法だったとみられる。「捨てておいてください」だけではインチキも発生しかねないので、破壊する様子を動画で撮影してもらい、それをもって証拠とするわけだ。
こうすれば、製品の二重取りを目的に、実際には故障していない品を偽って故障と申請してくるユーザーへの対策として完璧に機能する。またデバイスがバッテリー内蔵だと、返送元が離島であればさらなるコスト増になる他、廃棄にもコストがかかるので、これで済めばメーカーにとってももうけものだ。
といった具合に、ユーザーの反発を考慮しなければ、メーカーとしては八方丸く収まる方法だったわけだが、しかし実際には製品を自らの手で破壊することに抵抗を感じるユーザーは少なくない。幾つかの口コミを発端にしてネットで賛否両論(の否寄り)が巻き起こり、最終的に取り下げられたというのがこれまでの経緯だ。
これまでのところ、同社が取り下げに至った理由は不明だ。売り上げに露骨な影響があったようには見えず(本稿を読むまでこの出来事自体を知らなかった人も多いだろう)、タイミングからすると春先にネットで話題になったことが引き金になったように見えるが、真相は分からない。
ただこの手法の是非はともかくとして、現実的に失敗に終わった以上、少なくとも日本国内では、この手法は(他社も含めて)禁じ手になったとみてよい。メーカーにとって頭の痛い問題になっている返品交換のコストは依然として解決されておらず、今後露骨にではないにしても、価格に転嫁されていく可能性は十分にありそうだ。
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