共有メモリの強化については、M1のLPDDR4x-4266に対し、M1 ProおよびM1 MaxではLPDDR5-6400を採用している。このためM1が毎秒68.2GBのメモリ帯域だったのに対して、M1 Proで毎秒200GB、M1 Maxでは毎秒400GBまでメモリ帯域が広がった。
メモリ帯域が倍々ゲームで増えているのはメモリチップへのアクセスチャンネルが増えているからで、アクセスを並列化することで帯域が広がっている。ダイの写真からもメモリインタフェースがM1 Maxでは4領域に増えている様子が伺えた。
このことは、異種の高性能処理回路が混在するプロセッサでは大きな意味がある。例えば、ProResフォーマットの高ビットレート動画データなどを処理する際は、メモリ上に処理対象のデータをプールしておき、用途に適した回路を順番に使いながらデータ転送を伴わない形で処理を進めたい。
また並列化が容易な処理も多いが、そのために処理できる回路の数を増やしてもデータプールにアクセスする帯域が渋滞していたのでは投資(処理回路の追加)に見合う性能向上は得られない。
ダイを見ると、M1 Proに対してM1 MaxはGPUコアが2倍実装され、メモリインタフェースが倍増。相互のパートを行き交うインタフェースの配線が拡張されている様子がみえる。
4Kや8Kといった高精細ビデオでもProRes RAWなどの特に高スループットが必要なメディアデータをターゲットに、処理容量がスケールするように設計してある。
CPUのコア数は、M1の高性能コアと高効率コアそれぞれ4基の合計8コア構成から、M1 ProとM1 Maxでは高性能コア8基、高効率コア2基の合計10コア構成に変更された。
M1が対象とするモバイル向けパソコンではなく、バッテリー容量が大きく瞬発力と絶対的な性能が求められることが多いハイスペックなパソコン用途では、省電力だが性能が抑えられた高効率コアを2基に減らした方が合理的な選択だ。
一方で高性能コアは2倍の8基に増え、メモリ帯域が2倍以上になっているため、素直に増えたリソースの分、性能も上がっていると考えられる。
そもそもCPU性能に関しては、M1の段階でもモバイル向けとしては驚くほど高性能だった。もちろん、アプリによってはCore MLやMetalを十分に使いこなさず、CPUに頼っているものもあるかもしれないが、ここ数年のMac向けアプリの開発トレンドに沿って作られているものであれば、ハイエンド向けと考えても十分どころかそれ以上の性能と予想される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.