こうした色の配合にまつわるトラブルは、スマホやタブレットよりも、むしろPC周辺機器やアクセサリーのかいわいで発生しやすい。特に1990年代から2000年代にかけて、iMacをはじめとしてカラーバリエーションが大量に投入されたときには、こうしたトラブルがつきものだった。
なぜPC周辺機器やアクセサリーでこうしたトラブルが起こりやすいかというと、PC本体の横に並べて使われるせいで、色味を常に比較されるからだ。メーカー純正の周辺機器やアクセサリーではこれらの色は完全一致しているため(多くは同じ業者が生産しているので当然だ)、こうした問題は起こらないが、サードパーティーのメーカーにとっては、色を合わせるというのは文字通りの生命線なのだ。
しかし前述のiMacや初期のVAIOなど、当時ヒットしていたPCは、繊細なカラーであることがほとんどで(ボンダイブルーはその最たる例だ)、サードパーティーの事業者は色を合わせるために涙ぐましい努力を強いられた。勘頼みで色を調合して初回ロットは好評を博したものの、増産時にその色を再現できずにクレームが付き、店頭から回収された後、それっきり廃番になる事例もあったほどだ。
もっとも色がそっくりに調合できたときの効果は抜群で、中身、つまり周辺機器本体の性能が悪くとも、色がPC本体と酷似しているというだけで爆発的に売れることもあった。メーカーの倉庫で眠っていた過剰在庫のHDDが、たまたまiMacのあるカラーに本体色が酷似していたというだけで、在庫が瞬殺された例もある。
最近のスマホやタブレットでは、あえてカラーが異なるケースなどを組み合わせるのもファッションとして定着しているので、こうしたPC周辺機器のような例はまず聞かない。しかしこうした色の調合の難しさが、モデルチェンジの度にカラーバリエーションを微妙に変更する一因になっているのは間違いない。
逆にホワイトやブラックが、なぜ定番のカラーとして確立されているかというと、色の調合が簡単で、再現するのが容易だからだ。PCやスマホ、タブレットを買い替えても周辺機器やアクセサリーはそのまま使い続けたいという場合、ホワイトやブラックでそろえておけば、こうした問題は起こりにくいだろう。
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