―― エプソンは、「環境」という切り口からの提案を積極化しています。エプソン販売でもその取り組みが加速していますね。
栗林 この数年で商品を選択する際に、価格や性能に加えて、環境という要素が重視されるようになっています。当社では、社会課題である「環境」「省人化」「DX/共創」を軸にした価値提供を進めていますが、特に環境においては、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の重要な柱に据える一方で、「環境ビジョン2050」を掲げ、「脱炭素」「資源循環」「お客さまのもとでの環境負荷低減」「環境技術開発」の4点から環境戦略に取り組んでいます。
商品や技術そのものによる環境対応だけでなく、乾式オフィス製紙機「PaperLab」による紙の循環を始めとして、さまざまな商品を組み合わせたトータルでの環境提案ができるようになっています。
その一方で、お客さまからは脱炭素への取り組みを、何から始めたらいいか分からないといった声や、環境への対応要請が取引先からきているが、どう対応したらいいか分からないといった声をよく聞きます。
上場企業では、サステナビリティに関する情報開示が求められていますが、中小企業も、取引先である大手企業からの依頼によって、環境に関する回答を行わなくてならず、環境対応への取り組みや見える化が、避けては通れないものになっています。先に触れた「サステナビリティ経営の推進支援サービス」も、こういった課題を解決し、お客さまを支援する提案の1つになります。
―― 環境対応としては、ペーパーレス化の動きがあります。しかし、プリンタメーカーの立場では、印刷をしてもらい、より多くの紙を使ってもらった方が収益性が高まるのは明らかです。エプソンは、ペーパーレス化にはどう向き合っていきますか。
栗林 ペーパーレス化の流れは止めることができません。お客さまのペーパーレス化において、そこでエプソンは何ができるかということを考えていきます。ペーパーレス化の取り組みは、エプソン販売社内でも進めており、既に紙の使用率を従来比で6割減らすことに成功しました。
社内には、どうすればペーパーレス化ができるのかといったノウハウが蓄積できたので、それを業務改革サービスにして提供することも考えていきます。その一方で、4割の紙がまだ残っているわけですから、ここに関しては単に廃棄するのではなく、PaperLabによって、紙を循環し、再利用する提案を進めていきます。ペーパーレス化を、エプソンの新たなビジネスチャンスにつなげたいと思っています。
―― エプソンでは、個人ユーザーに対してもプリンタを長期間に渡って安心して利用するためのサービスを強化しています。これらの手応えはどうですか。
栗林 5年間の安心サポートを提供する「カラリオスマイルPlus」は、お客さまのご希望に合わせて修理料金を全額サポートするプランと、半額サポートする2つのプランを用意しており、落下破損や水こぼし、火災/落雷などの物損対応も修理対象としている他、廃インクメンテナンスエラー発生時も無償で交換できますし、修理が発生した場合には、自宅まで商品を引き取りに伺い、面倒な梱包(こんぽう)も発送作業が必要なく、しかも利用回数にも制限がありません。
2021年10月からサービスを開始してから、累計で約14万件の利用実績となっており、サービス購入の満足度は70.7%に達するなど、非常にいい手応えを感じています。
また2024年1月からは、プリンタの月額サブスクリプションサービスである「ReadyPrint」を、有料テストマーケティングとして開始しましたが、これも好評です。プリンタ本体の貸し出し、インクがなくなる前の自動配送、不具合発生時の本体交換などを組み合わせたもので、400人限定としていましたが、定員オーバーとなってしまったため追加で200人を募集しました。
こちらも既に定員に達しています。応募はたくさんいただきましたが、このサービスが、本当にお客さまのお役に立っているのかといったことをしっかりと見極めてから、正式サービスを開始するかどうかを決定したいと考えています。今後も、お客さまの声を聞きながら、プリンタに関連するサービスは増やしていきたいと考えています。
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