引き算ではなく「厳選」の1台 実機で分かった「iPhone 17e」が“2026年の本命”になる理由:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/4 ページ)

» 2026年03月09日 22時30分 公開
[本田雅一,ITmedia]

少し気になる「UWB非搭載」

 ただ、iPhone 17eについて、不満点が全くないかというとそうでもない。筆者なら、まずUWBに対応していないことを挙げたい。

 120Hz表示に対応していないことは、画面をよく見れば分かる。カメラに超広角レンズがないことも、撮れば分かる。しかし、UWBは「最初はなくても困らない」と思いがちだが、Appleのエコシステムに“深く”組み込まれているがゆえに、ないと不便を感じる場面も多い。

 UWBに対応していれば、例えば「AirTag」などで探し物の方向が分かるだけでも便利だし、「AirDrop」の相手の方向、「探す」機能の精密さ、空間の中で「どこにあるか」が分かる気持ちよさ――これらを享受できる。

 もちろん、先述の通りUWBやWi-Fi 7は誰にとっても必須というわけではない。Wi-Fi 7の普及にはまだ少し時間がかかるだろうし、こうした新しい無線機能を重視するユーザーには無印モデルやProモデルが用意されている。

 その上でなお、“UWBの省略”が長期的な体験にどう響くかは、UWB活用の幅が今後広がるほどにじわじわ効いてくるはずだ。

UWB非対応 iPhoneにおけるUWBは、iPhone 11以降は無印モデルでも対応してきた。iPhone 17eで対応していないことは、体験面においてジワジワと“効いてくる”かもしれない

 なお、日本で販売されるiPhone 17eはeSIMのみの対応で、物理SIMスロットを持たない。これは他のiPhone 17ファミリーも同様だが、機種変更の際には事前の確認が必要だ。

 一方で、iPhone 17eが前世代から明確に改善した点として、最大15WのMagSafe充電に対応したことは挙げておきたい。最大7.5W止まりだったiPhone 16eに対し、MagSafeの使い勝手が一段と“普通のiPhone”に近づいた意味は大きい。

MagSafe対応 MagSafe対応は地味ながらも大きなメリットといえる

 Ceramic Shield 2の採用も同様だ。前世代比で3倍の耐擦傷性、7層構造の反射防止コーティング、画面反射の最大33%低減という改善は、派手ではないが“使用感”という数字に現れにくい価値を確実に引き上げている。

10万円の壁を、ただ下回ったのではない

 そしてiPhone 17eを語る上で重要なのは、やはり「9万9800円から」という価格設定だろう。

 日本市場において「10万円」というラインは、スマホを高いと感じるかどうかの1つの境目で、個品割賦(分割払い)の審査方法にも影響する。iPhone 17eの価格は「日本の消費者」の持つ感覚に向けて、はっきりと目標を定めて設定されていると感じる。

 しかし、10万円を切ることを目標としてグレードを落としたわけではない。最新のA19チップ、Apple Intelligenceへの完全対応、無印と同様に256GBから始まるストレージ容量、MagSafeへの対応、Ceramic Shield 2――つまり、iPhone 17eは“今の”iPhoneの本質を10万円以内に収めているのである。

値段設定 256GBストレージで9万9800円の価格に収めたのは、かなり戦略的だと思う

「メモリ危機」の今だからこそ、この値段設定は効く

 この価格設定は、昨今話題に挙がるIT機器の部材不足を考えると、別の意味を帯びてくる。

 AIサーバ向けのHBM(広帯域メモリ)需要が膨張している影響で、HBMとウエハを共有するPC/モバイル向けメモリの調達コストは確実に押し上がっている。この影響で、Androidスマホでは特にミドルレンジ以下のモデルで「先代と同じSoC(プロセッサ)に据え置く」とか、場合によっては「先代からSoCのランクを少し下げる」といった形で価格を維持するか、「先代からの値上げに踏み切る」という決断を迫られている。

 そうした状況は、今や業界では周知のことだ。

 このような状況下で、AppleはiPhone 17eに最新のA19チップをおごり、ストレージを従来比で2倍の256GBを基準としたのに、価格を先代の128GBモデルと同じ9万9800円に収めてきた。これは「安いiPhoneを作った」というより、長期的な調達力と商品設計の総合力で押し切った結果だろう。

 メモリや内蔵フラッシュメモリ高騰に対する弾力性を持つのは、恐らくAppleと、自らメモリを製造できるSamsung Electronicsくらいのものだ。

サムスン電子 サムスン電子は、間もなく最新フラグシップスマホ「Galaxy S26」シリーズを発売する。ハイエンド機なので単純比較は難しいが、先代と比べても価格設定で“頑張っている”点においてiPhone 17eと通じるものがある

 また競合と比べると、Appleの競争の“やり方”が違うこともよく分かる。Androidスマホは「120Hz表示」「複眼アウト」「Wi-Fi 7」のように、“目立つ”装備を訴求することが多い。しかしiPhone 17eは、最新世代のSoCを採用し、Apple Intelligenceのフル機能を動かせるようにして、MagSafeの充電体験を引き上げ、長期のOSアップデートに対応するといった、数年使って初めて効き目が分かる“基礎体力”に重きを置いている。

 Androidスマホの方が派手なのは確かだが、5年後にどちらが楽に使えているか――ミドルクラスのユーザーほど買い替えサイクルが長いことを考えれば、iPhone 17eの方がよほど長期戦を見据えた製品であることが分かる。

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