Appleが「iPhone」のラインアップを”静かに”再編 進むエコシステムの強化本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2025年09月10日 13時50分 公開
[本田雅一ITmedia]

 Appleは9月9日(米国太平洋夏時間)、例年通りに主力製品の新モデルを発表するスペシャルイベントを開催した。

 今回のイベントは、表層的には“いつもの”新製品発表だった。しかしその実態は、主力製品であるiPhoneのラインアップ設計と位置付けの再定義だった。

 「iPhone Air」という新カテゴリーの投入、メインストリームモデルへのPro機能の大幅な移植、そしてProモデルのさらなる高性能化という三層構造は、明らかに異なるユーザー層を想定した明確なメッセージを含んでいる。発表会を現地取材した上で、その概要をまとめる。

現地の様子 Appleから招待を受けた報道関係者やインフルエンサーは、米カリフォルニア州クパチーノの本社内のシアターで基調講演を視聴した
クックさん 基調講演の開始前、ティム・クックCEOがあいさつのために登壇した
タッチアンドトライ 発表会後はハンズオン(タッチアンドトライ)のイベントが開催された

【更新:9月11日18時45分】「全ての新iPhoneに共通する改良ポイント」のセクションに加筆を行いました

iPhone Air:内製技術の統合で実現した“薄軽”の選択肢

 iPhone Airは最薄部で約5.6mmという厚みで、6.5型のSuper Retina XDRディスプレイを搭載しながらも約165gという重量を実現した。手にするとサイズとのギャップから驚くほどに軽く感じられる

 この大幅な軽量化と薄型化は、新型チップ(SoC)「Apple A19 Proチップ」、独自の無線チップ「Apple N1」、新モデム「Apple C1X」と、主要なチップを全て自社設計の最新版としたことで、省電力化と高密度実装を実現したことで可能になったものだ。

iPhone Air AppleがiPhoneファミリーへと新たに加えた「iPhone Air」

 主要なコンポーネントを最小化/省電力化した上で、アウトカメラのベゼル周辺にほとんどを“詰め込み”、物理SIMスロットを排除したeSIM専用機とすることでボディーの大部分がディスプレイとバッテリーのみという超薄型設計を手に入れた。シャシーには80%再生チタニウムを採用し、内部構造の簡素化や部品点数削減などの工夫も懲らすことで、高級感を引き出しつつ、コストの最適化も果たしている。

 「大画面で軽い」という新しい選択肢が加わったことで、iPhone 16シリーズまで設定されていた「Plus」モデルとは異なる選択肢となるだろう。大画面は欲しいけれど重いのはちょっと……と、Plusモデルを敬遠していたのであれば、間違いなく魅力的に映るだろう。

 なおスペース効率を優先させるため、本機は全世界でeSIM専用モデルとなっており、物理SIMスロットを持つモデルは用意されていない。

薄い 手にすると驚くほどの“薄さ”を感じられる

iPhone 17 Pro/Pro Max:熱設計を刷新してパフォーマンスに特化

 一方、「iPhone 17 Pro」と「iPhone 17 Pro Max」は、従来のProモデルの概念を大きく拡張する内容となった。

iPhone 17 Pro/Pro Max 外観から大きく変わったiPhone 17 Pro/Pro Max

 iPhoneでは初採用となる熱間鍛造アルミニウムユニボディー構造は、材料工学的な観点から見ても極めて興味深い選択だ。チタニウムよりも20倍高い熱伝導率を持つアルミニウム合金の採用は、単純な軽量化以上の効果をもたらす。内蔵されたベイパーチャンバーシステムとの組み合わせにより、A19 Proチップの性能を継続的に引き出すことが可能になった。

 このことは、特に動画編集やゲーミングといった高負荷な用途において、スマートフォンの“限界”を大きく押し上げる技術的革新といえる。実際に手にしてみると、重いゲームなどを動かしてもほとんど熱を感じさせることがない

 iPhone 17 Pro Maxの最長39時間という驚異的なバッテリー駆動時間は、もちろん新チップの効率の良さなども貢献しているが、この数字はあくまでeSIM専用モデルのものとなる。海外の一部で登場する物理SIM対応モデルでは、バッテリー容量が小さくなり、この数字は約3時間短くなる。

アルミニウムのユニボディー iPhoneとしては初めてアルミニウム製のユニボディーを採用し、ベイパーチャンバーを組み合わせることで放熱効率を高めている
バッテリー 日本でも投入されるeSIMオンリーモデルについては、バッテリー容量の拡張も行われている

 カメラシステムの進化も見逃せない。アウトカメラは全てが約4800万画素センサーに統一されたことで、ユーザーは使用するカメラを意識することなく、常に最高品質の撮影が可能となった。

 さらに、Proシリーズではクリエイター向けのプロフェッショナル機能への対応度も高めており、センサー情報を“そのまま”全て記録する「ProRes RAW」フォーマットに新たに対応した。また、HDR記録方式として「Apple Log 2」といったプロ向けフォーマットにも対応する。

 これらの機能は、iPhoneを用いて映像制作する現場の要望に応えたもので、複数のiPhoneを同期させる「Genlock」の搭載により、複数カメラを同期撮影させた映像表現にもiPhoneを応用する道を開いている。

動画 プロフェッショナルユースを見据えて、動画回りの撮影機能も大幅に強化されている
ユニボディー iPhone 17 Proシリーズは、外観が大きく変わっている
厚み 機能も多くつまっていることもあり、厚みはそれなりにある
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