Appleが「iPhone」のラインアップを”静かに”再編 進むエコシステムの強化本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2025年09月10日 13時50分 公開
[本田雅一ITmedia]

iPhone 17:“Pro並み”となった基本機能が魅力

 今回の発表で最も戦略的に感じるのは、実はメインストリーム(スタンダード)たる「iPhone 17」だ。「ProMotionディスプレイ」や常時表示機能(Always-On Display)といった、Proモデルの“核”となる要素が複数盛り込まれており、望遠カメラこそ搭載されていないものの、従来の“Pro級”要素がメインストリームモデルにモデルに降りてきている。

iPhone 17 メインストリームモデルのiPhone 17

 SoCの「Apple A19チップ」は、上位モデルで採用されたA19 Proチップよりも性能面で控えめだが、それでも上位クラスの性能を持つ。iPhone 13が採用した「Apple A15 Bionicチップ」との比較でCPU性能は最大1.5倍、GPU性能は最大2倍以上という性能を持つだけではなく、GPUコアにAI(人工知能)の性能を高める機能が追加されていることで、独自のAI機能「Apple Intelligence」の各種機能が快適に動作する。

 アウトカメラは「48MP Dual Fusionカメラ」となり、超広角カメラも約4800万画素のFusionカメラとなった。日常の撮影ではProモデルとの差を感じることは少ないだろう。

 Proモデルを刷新したことで、メインストリームモデルの底上げができたともいえる。

アウトカメラ アウトカメラは超広角側も約4800万画素センサーになった

全ての新iPhoneに共通する改良ポイント

 ここからは、今回発表された全てのiPhoneに共通するポイントをいくつか紹介しよう。

GPUコアに「Neural Accelerator」搭載

 新モデルが採用するA19/A19 ProチップのGPUコアには「Neural Accelerator」が搭載されている。名前からも察せる通り、GPUコアを用いるAI演算を補助するアクセラレーターで、特にA19 Proチップの場合は演算のスループット(実効速度)が「Apple A18 Proチップ」比で最大3倍に向上したことで、最新の「MacBook Pro」レベルのAIワークロード処理が可能となった。

 A19 Proチップであれば、Apple Intelligenceの「ビジュアルインテリジェンス」「ライブ翻訳」といった機能をオンデバイスで高速動作するようになる。

 プライバシーを重視するAppleにとって、オンデバイスでのAI処理能力の向上は極めて重要な戦略的要素となる。こちらは実際の製品で、クラウドAIを使った処理にどこまで近づけているかを確認したい。

GPUコア GPUコアには「Neural Accelerator」が搭載された

A19/A19 Proチップで変わる「Neural」アーキテクチャ

 A19/A19 ProチップではCPUコアにも大きな手が入っているが、AI処理の構造にも変化がある。

 昨今のApple Siliconに搭載されているNPU「Neural Engine」は元々、顔認証「Face ID」を実現するために組み込まれるようになったものだ。その後、Neural Processorは主にカメラ機能の強化を主目的に処理性能の向上など進化を続けてきた歴史がある。

 独立したNPUを搭載する流れは、スマートフォン向けのSoCはもとより、PC用のCPU/SoCにも拡大している。ある意味で時代の先駆けともいえるNeural Engineだが、先述の通り今回AppleはA19/A19 ProチップのGPUコアにもNeural Accelaratorを追加している。

 8年前にNeural Engineという名称を使い始めて以来、AppleはAI処理の“専用化”を推進してきた。その後、CPUコアにも機械学習アクセラレーターを搭載し、多層的なAI処理能力を構築してきた。そして今回GPUコアにもAI処理に向いた演算機能を組み込むことで、AI処理を効率的に処理できる仕組みをより多層的に整備したことになる。

 A19 Proチップの場合、GPUコアの演算能力はA18 Pro比で最大3倍というのは先に触れた通りだ。これは第2世代の「ダイナミックキャッシングアーキテクチャ」の導入によりメモリアクセスの効率が大幅に向上したことが理由だ。さらに、16bit浮動小数点の演算速度も最大2倍に向上しているが、これはGPUコア自体の数が増加したためだ。このトランジスタのリソースをAIでも活用できるようにすることで、AIワークロードの応答性を大幅に向上させることが可能となる。

 シリコン面積の効率的活用、電力効率の向上、そして処理性能の最大化を同時に実現するこのアプローチは、競合他社との差別化要素としても機能するだろう。特にモバイルデバイスにおける電力制約を考慮すれば、業界トレンドになっていくかもしれない。

インカメラは「センターフレーム」に

 「センターフレームフロントカメラ」の導入も、AI技術の進歩を活用した実用的な改善だ。

 この新しいインカメラでは、センサーを正方形とすることでデバイスの向きに関係なく最適な撮影を実現している。単に「正方形の高精細カメラ」を採用しただけではなく、AI技術を用いることでインテリジェントに画角や縦/横位置の最適化も行っている。

 特にビデオ通話やコンテンツ制作では、利便性の大幅な向上を体感できるはずだ。実際に使ってみても、スムーズかつ自然な動きと、手持ち撮影のしやすさに感心するはずだ。

正方形 「センターフレームフロントカメラ」と名付けられたインカメラは、正方形センサーを採用している

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