Apple Watchシリーズの今回の更新は、エコシステム全体の成熟を示している。中でも注目したいのは「Apple Watch SE 3」だ。
Apple Watch SEシリーズは、基本要素をカバーする購入しやすい価格帯のモデルだが、今回のApple Watch SE 3では上位モデルと同じ「Apple S10 SiP」を搭載することで上位モデルと“ほぼ同等”の基本性能を備えている。それでいて、GPSモデルの40mmモデルであれば3万7800円という手頃な価格で購入可能だ。
Apple Watch SE 3では「常時表示ディスプレイ」「ダブルタップ操作」「手首皮膚温センサー」といった機能を備えていることはもちろん、高速充電にも対応する。GPS+Celluarモデルであれば5Gモバイル通信も可能だ。コストパフォーマンスの観点から見ると、極めて魅力的な選択肢となっている。
「Apple Watch Ultra 3」の衛星通信機能搭載は、Apple Watchの新たな可能性を示している。緊急SOSやメッセージ、「探す」機能が圏外でも利用可能になったことで、アウトドア活動や緊急時における安全性が大幅に向上する。
この他、睡眠の質のスコアリング機能なども気になるところだが、これらは別途、実機にて確認したい。
「AirPods Pro 3」の進化は、Appleのオーディオに対する本気度を示している。
「マルチポート音響アーキテクチャ」を採用することで、従来のAirPodsシリーズとは明らかに異なる音質体験が実現された。特に低音の深みとサウンドステージの広がりは、ワイヤレスイヤフォンの音質に対する常識を変える可能性がある。
アクティブノイズキャンセリング(ANC)性能は初代モデルの最大4倍、先代(AirPods Pro 2)の最大2倍に向上し、体感的にも大幅な改良を感じる。通勤や移動中における集中力の向上、音楽や通話の品質向上など、実用的なメリットは計り知れないが、少し聴いただけでも明らかなほど音質も向上している。
まだ聴き込んでいるわけではないが、深みのある低音にはすぐに気付くだろう。空間オーディオの質も向上し、より広く自然に音場が広がって感じられた。
また心拍数センサーの内蔵により、AirPods Pro 3は単なるオーディオデバイスから健康管理デバイスへと進化している。Apple Watchと連携することで、より包括的な健康データの収集が可能になった。
フィットネスアプリ/サービスとの連携も含めて、Appleの製品/サービスなどと組み合わせた価値の提供を狙っている。
ここ数年、円安傾向が定着したことにより、米ドルベースで価格が“固定化”されているiPhoneのラインアップはどうしてもプレミアム寄りになりがちだ。
今回はどのモデルもストレージの最低容量が256GBになったことで比べやすくなったが、スタンダードなiPhone 17でも12万9800円からという設定だ。新カテゴリーのiPhone Airは15万9800円からで、1TBモデルも用意されている。iPhone 17 Proは17万9800円から、そしてiPhone 17 Pro Maxは19万4800円からということで、いずれも“お手頃”とは言いがたい。
新しいiPhoneは9月12日午後9時(日本時間)から予約注文が開始され、9月19日から販売が始まる。評価予測が一番難しいのは、新ジャンルのiPhone Airだろうか。
これまで大画面モデルの販売比率は、少なくとも日本では低かった。iPhone Airは「標準」と「大画面」の中間というサイズ感だが、アウトカメラがシングル構成ということで、どこまで健闘できるのか――販売する携帯電話キャリアの販売戦略も絡んで予想しがたい。
一方で、今回の発表を総合的に評価すると、Appleはエコシステム戦略の新段階に入ったと考えられる。
iPhone、Apple Watch、AirPodsの各デバイスが単独の製品としてではなく、統合されたシステムとして機能することを前提にデザインされていることが感じられる。特にAI機能の強化により、デバイス間の連携がより密接となり、ユーザーはAppleエコシステム全体の恩恵をより強く実感できるようになった。ある意味で、個々の製品力を磨き込んだ上で、連携による価値創出を狙う戦略ともいえる。
Android搭載端末が、「折りたたみ型(フォルダブル)」「アウトカメラの数」「カメラの望遠化」といった先鋭化で差別化を進める中、Appleは基本を磨き込むべく、基礎から見直した印象もある。
ただしAI機能に関しては、クラウドAIを積極的に取り入れるライバルに体験の質で明確な違いを見せられていない。今回の性能強化がどこまでAI体験を高めているかは、実際のレビューで確かめることにしたい。
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