Appleが「iPhone」のラインアップを”静かに”再編 進むエコシステムの強化本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

» 2025年09月10日 13時50分 公開
[本田雅一ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

エコシステムの成熟が分かる「Apple Watch」の刷新

 Apple Watchシリーズの今回の更新は、エコシステム全体の成熟を示している。中でも注目したいのは「Apple Watch SE 3」だ。

 Apple Watch SEシリーズは、基本要素をカバーする購入しやすい価格帯のモデルだが、今回のApple Watch SE 3では上位モデルと同じ「Apple S10 SiP」を搭載することで上位モデルと“ほぼ同等”の基本性能を備えている。それでいて、GPSモデルの40mmモデルであれば3万7800円という手頃な価格で購入可能だ。

 Apple Watch SE 3では「常時表示ディスプレイ」「ダブルタップ操作」「手首皮膚温センサー」といった機能を備えていることはもちろん、高速充電にも対応する。GPS+Celluarモデルであれば5Gモバイル通信も可能だ。コストパフォーマンスの観点から見ると、極めて魅力的な選択肢となっている。

Apple Watch SE 3 Apple Watch SE 3は価格の割に機能が充実しており、コストパフォーマンスがかなり良くなっている

 「Apple Watch Ultra 3」の衛星通信機能搭載は、Apple Watchの新たな可能性を示している。緊急SOSやメッセージ、「探す」機能が圏外でも利用可能になったことで、アウトドア活動や緊急時における安全性が大幅に向上する。

衛星通信 Apple Watch Ultra 3は衛星通信機能を搭載した。ただし、同機能に対応するモバイル通信サービスを別途契約する必要がある

 この他、睡眠の質のスコアリング機能なども気になるところだが、これらは別途、実機にて確認したい。

大幅に音質が向上した「AirPods Pro 3」

 「AirPods Pro 3」の進化は、Appleのオーディオに対する本気度を示している。

 「マルチポート音響アーキテクチャ」を採用することで、従来のAirPodsシリーズとは明らかに異なる音質体験が実現された。特に低音の深みとサウンドステージの広がりは、ワイヤレスイヤフォンの音質に対する常識を変える可能性がある。

 アクティブノイズキャンセリング(ANC)性能は初代モデルの最大4倍、先代(AirPods Pro 2)の最大2倍に向上し、体感的にも大幅な改良を感じる。通勤や移動中における集中力の向上、音楽や通話の品質向上など、実用的なメリットは計り知れないが、少し聴いただけでも明らかなほど音質も向上している。

 まだ聴き込んでいるわけではないが、深みのある低音にはすぐに気付くだろう。空間オーディオの質も向上し、より広く自然に音場が広がって感じられた。

 また心拍数センサーの内蔵により、AirPods Pro 3は単なるオーディオデバイスから健康管理デバイスへと進化している。Apple Watchと連携することで、より包括的な健康データの収集が可能になった。

 フィットネスアプリ/サービスとの連携も含めて、Appleの製品/サービスなどと組み合わせた価値の提供を狙っている。

AirPods Pro 3 AirPods Pro 3は、先代からの進化が思った以上に大きい

新製品の価格と位置付け

 ここ数年、円安傾向が定着したことにより、米ドルベースで価格が“固定化”されているiPhoneのラインアップはどうしてもプレミアム寄りになりがちだ。

 今回はどのモデルもストレージの最低容量が256GBになったことで比べやすくなったが、スタンダードなiPhone 17でも12万9800円からという設定だ。新カテゴリーのiPhone Airは15万9800円からで、1TBモデルも用意されている。iPhone 17 Proは17万9800円から、そしてiPhone 17 Pro Maxは19万4800円からということで、いずれも“お手頃”とは言いがたい

 新しいiPhoneは9月12日午後9時(日本時間)から予約注文が開始され、9月19日から販売が始まる。評価予測が一番難しいのは、新ジャンルのiPhone Airだろうか。

 これまで大画面モデルの販売比率は、少なくとも日本では低かった。iPhone Airは「標準」と「大画面」の中間というサイズ感だが、アウトカメラがシングル構成ということで、どこまで健闘できるのか――販売する携帯電話キャリアの販売戦略も絡んで予想しがたい。

価格 新しいiPhoneは米ドルベースだと「価格据え置き」なのだが、基本容量が256GBとなったので最低価格は“底上げ”されている

 一方で、今回の発表を総合的に評価すると、Appleはエコシステム戦略の新段階に入ったと考えられる。

 iPhone、Apple Watch、AirPodsの各デバイスが単独の製品としてではなく、統合されたシステムとして機能することを前提にデザインされていることが感じられる。特にAI機能の強化により、デバイス間の連携がより密接となり、ユーザーはAppleエコシステム全体の恩恵をより強く実感できるようになった。ある意味で、個々の製品力を磨き込んだ上で、連携による価値創出を狙う戦略ともいえる。

 Android搭載端末が、「折りたたみ型(フォルダブル)」「アウトカメラの数」「カメラの望遠化」といった先鋭化で差別化を進める中、Appleは基本を磨き込むべく、基礎から見直した印象もある。

 ただしAI機能に関しては、クラウドAIを積極的に取り入れるライバルに体験の質で明確な違いを見せられていない。今回の性能強化がどこまでAI体験を高めているかは、実際のレビューで確かめることにしたい。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月11日 更新
  1. 初のカラー対応「Kindle Scribe Colorsoft」の実力は? 通常モデルとの価格差1万7000円の価値を検証 (2026年06月10日)
  2. 「Geminiの技術は使うが、Geminiではない」 WWDC26で見えたApple流AIとプライバシー戦略の核心 (2026年06月10日)
  3. ミニPCに強みの「MINISFORUM」 ミニワークステーションの新モデルから「謎の拡張カード」まで多彩な製品を披露 (2026年06月10日)
  4. 「macOS 27 Golden Gate」が2026年秋に登場 初のApple Silicon専用バージョンに (2026年06月09日)
  5. 「次世代Apple Intelligence」をフル活用するにはどのような条件がある? 「Siri AI」は日本で使える? 知っておくべき対応モデルのハードル (2026年06月09日)
  6. 実売1万円切りでパススルー給電にも対応! KTCの15.6型モバイルディスプレイ「H15F9」は“買い”か (2026年06月09日)
  7. コンパクトボディーにスパコン並みのAI性能! 「NVIDIA RTX Spark」搭載ミニデスクトップPCを見てきた (2026年06月04日)
  8. LGが4K有機EL TVの2026年モデルを発表 映像プロセッサを刷新し120Hz以上の高速表示にも対応 (2026年06月09日)
  9. カプセルトイ「手のひらネットワーク機器」第5弾のラインアップを決める“ユーザー選挙”投票受付を開始 (2026年06月10日)
  10. サンワ、ノートPCやタブレット背面を冷やせるペルチェ冷却クーラー (2026年06月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー