「最初は高いが、かえって安い」顧客満足度1位を支えるモノ作り VAIOの糸岡社長が語る“値上げ”の真意と次なる挑戦:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(3/3 ページ)

» 2026年06月03日 12時00分 公開
[大河原克行,ITmedia]
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「値上げ」は価値を伝えるチャンス? PCが厳選される時代に

―― 2026年1月に、一部製品において、天板に配置されたVAIOロゴの一部が剥がれる事象があり、無償修理を行うことを発表しました。その時点で不具合が発見されたのは、わずか13台ということでした。むしろ、品質に対するこだわりを感じました。

糸岡 VAIOを利用しているお客さまに驚きや不安、残念な気持ちを抱かせてしまったことは大変申し訳なく思っています。私たちは、「VAIOらしいたたずまいで、気持ちよく使ってほしい」という思いがあります。

 天板のVAIOロゴも、PCを気持ちよく使っていただくためには重要な要素です。また、私たちにとっても、日頃より大切にしてきたブランドロゴが、本来の姿でいられない状態となることは、とても心苦しいことです。

 実は、お客さまの使用環境や利用方法が多様化しており、どんな使い方をすると、こうした事象が発生してしまうのか、というところまでは突き止められていません。ただ、きれいに使用していただいているお客さまが、天板を拭く際に、繊維がロゴの間に入り込むといったことで、ロゴが剥離してしまうということも要因の1つではないかとも考えています。

 しかし原因はともあれ、お客さまの利用現場では、こういったことが実際に起きているわけですから、ロゴが剥がれた場合には、無償で修理対応することにし、さらに、開発および生産現場においても、圧着する時間などを見直し、改善を加えています。

 不具合が発生した際のこれまでの動き方は、全ての状況が確認でき、原因が分かって十分な対策ができるという時点になってから、お客さまにお伝えすることが「当たり前」でした。しかし、今回は、原因が分からなくても先に発表し、対策することを優先しました。

 悲しい状態のままのVAIOを使い続けてほしくはないですからね。この取り組みを「ロゴ品質保証宣言」とし、ロゴ品質の向上と価値の維持に継続的に取り組み、お客さまに安心して使用していただける製品作りを推進することを改めて徹底しました。

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―― VAIOは、2026年4月23日から、PCの価格を値上げしました。値上げはぎりぎりまで引き延ばした印象を受けます。

糸岡 あらゆる角度からコスト削減の取り組みを進めてきましたが、生成AIの普及に伴って、DRAMなどのメモリ関連の半導体需要が世界的に拡大しており、これらの部材の価格上昇に対応するために値上げすることになりました。その点は、ご理解をいただきたいと思います。

 一方で、VAIOは、成長戦略を描く過程で、部材価格が高騰する前からサプライヤーと話し合いを行い、年間調達契約を結んでいます。これによって成長に必要な部材を確保することができています。

 ただ、市場環境の変化が激しく、何が起こるか分からない状況ですから、これがお願いした通りに供給されるかどうかは、まだ不透明なところもあります。製品の安定供給および品質維持のためにも、今回の価格改定を実施することに決めました。

 現時点では、VAIOの供給体制は安定しており、大手企業を中心に既存のお客さまだけでなく、新たなお客さまにもアプローチができています。

 PC市場全体を見ると、他の商品の値上がり率に比べてPCの値上がり幅が大きいという指摘もあります。それがPC市場全体に及ぼす影響を懸念しています。見方を変えれば、お客さまがPCを厳選して購入する時代に入ってきたといえます。

 VAIOならではの価値を、お客さまに届けることが、これまで以上に重要になると思っていますし、むしろ今こそがVAIOの価値を伝えるチャンスなのかもしれません。

―― VAIOが重視する経営指標はなんですか。

糸岡 売上高や利益、市場シェアといった数字は追いません。しかし、これらの指標の拡大は目指します。一方で、顧客満足度などの数値については、こだわる価値があると思っています。

―― 2026年度は、VAIOにとってどんな1年になりますか。

糸岡 いろいろな意味で、チャレンジの1年になります。ノジマグループとの連携強化により、個人ユーザーとのタッチポイントを増やすことで、個人向けPC市場でも存在感を発揮することも挑戦の1つです。

 また、メモリが逼迫(ひっぱく)し、調達の課題や値上げといった動きの中で、VAIOが提供できる価値をしっかりとお伝えすることも重要な取り組みです。さらに工場のモノ作りの強化は、この1年で大きく進化させたいと思っていますし、将来への仕込みにも力を入れます。

 社内に向けては、社員一人一人が商品理念や行動理念にのっとってモノ作りを行い、日々の業務に取り組むことを徹底します。人を育てることも、2026年は力を入れる部分です。

 仕事の仕方がAIによって大きく変わります。私たちの仕事の中にAIをどう取り込むかといったことも考えていく必要がありますし、その一方で、お客さまに対してもVAIOを通じて、AIの価値をどう届けるかといったことにも取り組みます。チャレンジするテーマはたくさんありますよ。

ノジマ 傘下 VAIO 糸岡 社長 ノートPC AI PC 顧客満足度 モノ作り 工場 こだわり 新色「ディープエメラルド」などカラーバリエーションが豊富な「VAIO SX14-R」
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