もう1つ、個人的に面白いと思ったのは「個人的にお気に入り、あるいは特筆すべきとしている(Officeの)リリースはどれか?」という質問に対するシノフスキー氏の回答だ。
MicrosoftにOffice製品部門が初めて設置され、同氏が責任者として着任した1994年にリリースされたのが「Office 4.3」だった。思えば、日本でもMicrosoft Officeの“躍進”が始まったのはこの時期からだったと考えられる。
質問 特にお気に入り、あるいは特筆すべきOfficeのリリースはあるか?
回答 (バージョンによって)理由は異なるが、「Office 2007」は本当に(正直いって今も)頂点だったと思う(そのことは「Hardcore Software」でも書いている)。
- 4.x:(バージョン)4.3を完成させた時が、初めてのOfficeだった
- 95:Windows 95と一緒にオンタイムで出荷した
- 97:単なる「アプリの詰め合わせ」ではなく、初めての“本当の”Officeだった
- 2000:法人向けへの移行(重点化)が現実的に
- 2002:Clippy(※1)は引退したが、エンジニアリングに磨きをかけたことで予定通りにリリースできた
- 2003:“旧世代”の最終リリースにして、サーバプラットフォームとしてのOfficeを構築する礎となった
- 2007:ポストに添付した画像を参照
(※1)かつてMicrosoft Officeにバンドルされていたヘルプエージェントの1つ(日本語版ではカイルくんが標準だったので、目にする機会が少なかったかもしれない)
「Office 12」という仮称で開発が進められたMicrosoft Office 2007は、大幅なUI(ユーザーインタフェース)の変更が大きな賛否を呼んだ。シノフスキー氏がHardcore Softwareに書いた「Defying Conventional Wisdom to Finish Office」は、その背景を書いた文章である「Office 95」の最大のミッションは「Windows 95と同時リリース」であり、同氏にとって満足のゆく製品に仕上がったのが「Office 97」なのだと考えられる。先述の通り「Office 2000」は小売店チャンネルの比重が下がったリリースであり、それ以降は別のチャレンジをしてきた――そんな具合だ。
なお、この一覧には含まれないが、日本市場において重要なリリースといえるのが、1997年に登場した「Office 97 Powered by Word 98」だ。
Office 97自体のリリースは“1996年”なのだが、このエディションは日本と韓国でのみリリースされた特別バージョンだ。名前からも分かる通り、このバージョンは「Word 98」をバンドルしており、日本語版では日本語入力ソフト(IME)として「MS-IME 98」を付属していた。
この組み合わせは、明らかにジャストシステムの「一太郎」と「ATOK」の組み合わせへの“対抗”だった。前バージョンの「Word 97」では、Wordの“弱点”とされてきた「縦書き」へのサポート強化が施された。一太郎に対して劣っていた部分を強化しつつ、ワードプロセッサソフトのシェアにおいて“負けている”日本市場に対して、全力投球していることがよく分かる製品だった。
今ならオンラインのソフトウェアアップデートで対応できるような事象ともいえるが、当時は配布メディアの制限から小売店でのパッケージ販売(流通)という形態に頼らざるを得なかった。ゆえにシノフスキー氏のいうところの「1990年代の事情」にのっとった形でのマーケティングになったのだろう。
今でこそPC業界の王者として君臨するMicrosoftだが、草創期はやはりさまざまな苦労を経てブランディングに頭を悩ませていたことが垣間見られて興味深い。
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