新旧Netbookをテストして次世代Atomの可能性を考える:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
インテルが2009年12月に発表した新AtomとIntel NM10チップセットだが、その実力はどの程度なのか。MSIの新旧Netbookでチェックした。
確かに性能は向上しているが……
さて、その結果だが、従来のDiamondvilleベースのNetbookとの差は小さい。しかし、どうやら少しではあるものの、性能は上積みされているようだ。ちょっとひいき目に見積もって、CPUで5〜10%の向上がうかがえる。ただしこの数字は、動作クロックが4%弱に相当する0.06GHz向上しているAtom N280との比較ではないことを踏まえると、正味の性能向上はほんの少しということになる。
グラフィックスの性能向上はもう少し大きく、Intel 945GSE Express内蔵のIntel GMA 950に対し、Atom N450が内蔵するIntel GMA 3150は10〜20%ほど性能が向上するようだ。ただ、メモリチャンネルが1チャンネルしかないため、メモリを追加してもベンチマーク的な性能向上は得られなかった。また、動画再生アクセラレーション機能だが、本稿執筆時点におけるドライバで、MPEG-2に関しては明らかなアクセラレーションの効果が得られたが、H.264の再生に関してはCPU占有率はほぼ100%に張りついたままで紙芝居状態だった。やはりデータシートに記載されている通り、動画再生支援は得られないものと思われる。
一方、バッテリー駆動時間の延長については一定の効果があるようだ。ここでのテスト(BBenchの設定:輝度最高、60秒間隔Web巡回、10秒間隔キー入力、電源設定はバランス)では、標準の3セルでも大容量の6セルでも従来モデルから20%ほどバッテリー駆動時間が延びている。バッテリー駆動時間については、液晶ディスプレイやHDDなどのストレージデバイスに大きく依存するが、ここでのテストはストレージデバイスまで共通化してあり、プラットフォーム間の差がある程度出ていると考えられる。
独自の付加価値を備えた製品の登場に期待
改めて要点を整理すると、Pineviewを用いたPine Trailプラットフォームは、従来の製品に対して実装面積の縮小と消費電力の削減の幅が大きい一方で、性能向上は最小限にとどまっている。この程度の上げ幅では、現在Netbookと価格帯がクロスしているCULVノートPCとの性能面での逆転は起こりそうにない。Netbookは価格的にも性能的にも、CULV搭載機より下という位置付けは不変のようだ。
この性能を上げずに消費電力を下げるというアプローチは、一般的なデスクトップPCやノートPCに使われる、メインストリームPC向けCPUではこれまで考えられなかった。インテルは主力をNetburstマイクロアーキテクチャからCoreマイクロアーキテクチャへ転換した際も、消費電力の削減とともに性能向上をうたっていたほどなのである。
Atomは、元来組込み用途やMID(Mobile Internet Device)といった非PC分野、インテルにとっては未知の市場をターゲットにして開発されたCPUだ。したがって、PC向けのCPUとは異なる開発アプローチをとっても不思議ではない。が、いざ本当にそのような製品が登場すると、やはり驚いてしまう。特にNetbookやNettopのように、実質的にローエンドPCとして売られ、使われるマシン向けのCPUがそのようなアプローチをとったことは驚きだ。
これまでシステムベンダーは、インテルの最新プラットフォームを採用していれば、旧製品に対して「性能の向上した新製品」を売ることができた。ところが、今回のように性能は横ばいでも実装面積と消費電力が削減されたプラットフォームは、そのメリットを訴求できるような作り込みが必要となる。インテルはその方向性として、特定用途向けのチューニングを推奨している。女性向けに特化したNetbook、教育市場向けに特化したNetbook、といった具合だ。こうしたチューニングを行う際に、実装面積の小ささと、低消費電力による熱設計の容易さがもたらす自由度が役に立つということなのだろう。
おそらくPine Trailを用いた製品の第1弾は、従来のNetbookやNettopとそう違わないものになるだろうが、第2弾として従来型の発想では生まれない斬新なデバイスが登場してくることを期待したい。
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