下り最大168MbpsのHSPA+をデモするEricsson、コンテンツ配信はAkamaiと提携Mobile World Congress 2011

» 2011年02月18日 18時42分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Ericsson CEOのハンス・ヴェストベリ氏

 世界最大級のモバイル関連イベント「Mobile World Congress 2011」にさきがけて新製品を発表し、会期中に米Akamai Technologiesとの戦略的提携を発表した通信インフラ大手のEricsson。ホールを借り切って下り最大168Mbpsを実現するHSPA+や最新の小型無線ユニット、AR(Augmented Reality:拡張現実)サービスなどのデモを展開し、大きな存在感を示していた。

 プレス向けの発表会で講演した同社CEOのハンス・ヴェストベリ氏は、今後10年の業界予測を交えながらEricssonの方向性と取り組みを紹介。今後20年は、これまで20年かけて張り巡らせてきたネットワークを使うネットワーク社会になると述べ、コンシューマーから企業や政府、ヘルスケア、教育などの幅広い分野で使われ始めるモバイルブロードバンドが、社会全体にインパクトを与えると予言した。このネットワーク社会を推進する要素としてヴェストベリ氏が挙げるのは、モビリティ、ブロードバンド、クラウドの3つだ。

 音声通話からはじまったモバイルサービスはめざましい進化を遂げ、モバイルマネーなどの新たな用途も生まれている。モバイルの普及がもたらす経済効果を実証する数々のデータもあり、「政府は交通などの既存のインフラに加え、モバイルブロードバンドを重要なインフラと見ている」とヴェストベリ氏は説明する。実際、2010年末時点で6億に達したモバイルブロードバンドの契約数は、2011年には10億、2016年には50億に達するとみられ、同じ2016年には、モバイルのデータトラフィックがPCと肩を並べるとヴェストベリ氏は予測する。

 Ericssonはこうしたモバイルブロードバンド時代に対応すべく、Mobile World Congressの開幕前に新製品として「AIR」(Antenna Integrated Radio)と「SSR」(Smart Service Router)を発表した。AIRはアンテナと無線ユニットを一体化したもので、消費電力を42%削減でき、設置時間を3分の1に短縮できるという。3GとLTEに対応し、LTEの導入や周波数帯の対応をスムーズに行えるとのことだ。同じコンセプトの製品は、仏Alcatel−Lucentからも発表されている(提供時期は明らかになっていない)。Ericssonのブースの説明員によると、AIRの商用出荷は9月を予定しているという。

Photo デモブースではAIRを展示していた(写真=左)。左は通常の無線ユニットで、下部にあるフィーダーコネクションが右のAIRではなくなっている。屋外用のAIRも展示(写真=右)

 SSRはモバイルパケットコアネットワークの土台となるもので、小型ながら高度な処理能力を備え、大規模なデータトラフィックに対応できるという。Ericssonは2011年を通じてIPネットワーク製品のポートフォリオを拡充する計画で、SSRはその第1弾となる。

Photo 既存のIPルータ「Smart Edge」の流れを汲む「SSR」

 無線技術については、2月にシンガポールの通信キャリアSingtelと共同で行ったマルチキャリアHSPAのデモで、下り168Mbpsの通信速度を実現。商用機器上の最高記録を達成した。同社はMWCのブースでも同じデモンストレーションを展開。HSPA+モジュールを搭載したノートPCと小型基地局という環境を構築し、ノートPC側で16の異なる動画を再生しながら1Gバイトの動画ファイルをダウンロードし始めたところ、168Mbpsに近い速度を記録した。

Photo デモ環境。16の動画をストリーミングし、1Gバイトのファイルをダウンロードする

Photo ダウンロード時の速度は、ほぼ168Mpsに到達している
Photo デモで使われた基地局(写真=左)とSierra Wirlessの84Mbps対応のデータ通信端末(写真=右)

 下り168Mbpsという通信速度は、マルチキャリア(4波)と64QAM、もしくはマルチキャリア(2波)とMIMOと64QAMで実現できる。実演していたデモ環境はマルチキャリア(4波)と64QAMだが、MIMOを使うことも可能としている。ただ、MIMOはハードウェアをアップグレードする必要があることから、導入している通信キャリアは少ないという。

 現在、HSPAの商用サービスは下り最大42Mbpsが最速で、15の通信キャリアが提供している。今後のロードマップについてヴェストベリ氏は、2012年に下り最大84Mbpsのサービスに対応するデータ通信端末が登場し、168Mbpsはその1年以上後に登場するとみる。スウェーデンでスタートし、米国や日本でも商用サービスが始まったLTEについては、11カ国16の商用LTEネットワークの契約をEricssonが獲得しているという。

 ヴェストベリ氏が最後に取り上げたのが、クラウドへの取り組みだ。「Ericsson自身が変わる必要がある」とヴェストベリ氏は述べ、Akamai Technologiesとの独占提携により、モバイル市場のクラウド化を加速するソリューションを共同で提供することを明らかにした。

 この提携により、Akamaiが固定網で提供するキャッシュ技術による高速化をモバイルでも実現。固定網ではISP内にAkamaiのキャッシュサーバが設置されているが、モバイルではこれをオペレータ内に置くことで、モバイル端末からのコンテンツへのアクセスを快適にする。「コンテンツ配信のリーダーとモバイルブロードバンドのリーダーが手を組み、モバイルでのコンテンツ配信を高速化する」とヴェストベリ氏は自信を見せた。

 Akamaiの社長兼CEO、デビッド・ケニー氏は、「今日のモバイルは、1995年当時のインターネットと同じ。今後どのようなことが可能になるのか想像もできない。(モバイルブロードバンドでの)今後のイノベーションに期待している」と語った。

 両社はすでに共同の取り組みをスタートしており、今後6カ月でオペレーター側のテストを始め、2012年に一般向けに提供できるソリューションに仕上げる計画だ。

 なお、展示会場では拡張現実サービスのデモも展開。カメラやGPSなどの端末機能を利用して、カメラ越しの風景にデジタル情報を重ね合わせて表示するサービスの活用事例を紹介していた。

Photo カメラを通して映画のポスターを見ると、「予告編を見る」「チケットを買う」「上映している最寄りの映画館情報」などが表示された。
Photo レストランのメニューでは、関連商品の広告が表示された(写真=左)。メニューについてメッセージを書いたり、友人が残したメッセージを読んだりできる(写真=右)

Photo 特定の場所に設置したタグを読み付近をカメラに写すと、フロアガイドが表示されるデモ。GPSの電波が届かない屋内で利用できそうだ(写真=左)。会場内に書き込まれたツイートを表示(写真=右)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年08月22日 更新
  1. 「iPhone 18」シリーズうわさまとめ 秋にPro、来春に無印登場か 「さらなる値上げ」の可能性も考える (2026年08月19日)
  2. 「弊社のモバイルバッテリーが河川等に投棄されている」――運営元が警察および関係各所と連携 (2026年08月19日)
  3. 服の中に風を送る「腰掛けファン」はハンディファンと何が違う? メリットと購入前に知るべき注意点 (2026年08月18日)
  4. 清水寺の「5Gが入らない」をどう解決した? ソフトバンクが挑んだ景観保護とアンテナ設置の裏側 (2026年08月20日)
  5. ソニー、Xperia新モデルを予告 8月25日11時に発表 YouTubeで世界同時配信 (2026年08月21日)
  6. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  7. Pixel 11シリーズ実機レビュー:「薄型化の無印」と「背面が光るPro」、Gemini連動の新機能で何が変わったか (2026年08月20日)
  8. 最大24万強マイル還元のチャンス 新「ANAアメックス」誕生、日常決済で“旅が近づく”特典強化の中身 (2026年08月21日)
  9. きょう発売の「Pixel 11」、結局は何が進化点? Geminiの進化にも注目 (2026年08月20日)
  10. 「新喜皮革」のコードバンを使用したApple Watch用バンド登場 約2万円 (2026年08月21日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー