Windows Phone 7向けIE9が登場したMicrosoft スティーブ・バルマー氏基調講演Mobile World Congress 2011(1/2 ページ)

» 2011年02月16日 13時40分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 かつてどこよりも早くスマートフォンの世界に参入した米Microsoftだが、AppleのiPhoneやGoogleのAndroidといった新興勢力の台頭に、その存在は急激に隅に追いやられつつあった。こうした劣勢を跳ね返すべく、2010年2月のスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2010」で初のお披露目となったのが、コンセプトやデザインを一新したOS「Windows Phone 7」だ。同製品は、2010年10月にようやく市場に投入された。それから約半年、今Windows Phone 7やMicrosoftを取り巻く状況はどう変化し、どういった未来へ向かっていくのだろうか。

続々と登場するWindows Phone 7アップデート、ついにIE9も

Photo 米Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏

 新世代モバイルプラットフォームとしては最後発となるWindows Phone 7だが、それだけにMicrosoftは劣勢挽回にどこよりも心血を注いでいるといえるだろう。まず使いやすさや利便性を向上すべく一新された本体デザインやユーザーインタフェース(UI)について、同社CEOのスティーブ・バルマー氏は「93%のユーザーがWindows Phone 7に満足しており、さらに10人のうち9人が他者に勧めるとの回答を寄せている」と述べ、狙い通りの満足度の高い製品に仕上がったことを強調した。

 またWindows Liveサービスとの連携や、SharePoint Serverを介したMicrosoft Officeとの連携など、Microsoftならではの特徴を生かした作りとなっている点もWindows Phone 7のセールスポイントだ。そしてバルマー氏が特に強調したのは、「開発プラットフォームとしてのWindows Phone」。従来のWindowsプラットフォームで培ったVisual Studioなどでの開発ノウハウをそのままモバイルの世界に持ち込める点が魅力だという。Windows Phoneで音楽や映像、アプリコンテンツを販売できる統合ストア「Windows Marketplace」では、すでに8000以上のゲームを含むアプリが登録されており、開発登録したデベロッパーは3万人、Visual Studioに付随する関連開発ツールのダウンロード数は100万を突破するなど、大きな注目を集めているということだ。

 こうしたWindows Phone 7のこれまでの経歴を振り返る一方で、今後登場が見込まれるいくつかのアップデートが紹介された。まずは今年のCES(2011 International CES)から今回のMobile World Congress 2011(MWC)までの間に提供されると噂されていた「コピー&ペースト」に関する機能を実装するアップデートを、3月上旬に提供開始することを正式に報告。このほか、Facebookに次ぐ、People HubへのTwitter機能の完全統合、Skydriveの拡張により、クラウド内でのOfficeドキュメント共有機能のサポート、マルチタスクのサポートといった新機能の数々が2011年内に提供されることも予告した。

PhotoPhotoPhoto 強力なソーシャル連携機能がWindows Phone 7の強み。撮影した写真を、アプリを切り替えることなしにそのままFacebookなどにアップロードできる(写真=左)。Office Hubの機能を拡張し、Skydriveとの連携が可能に(写真=中央)。オンラインクラウドを介してファイルのやり取りが可能(写真=右)

 このうち、マルチタスクの挙動は、AppleのiOS 4.xでのそれと酷似しており、起動中のゲームなどのアプリの動作を一時的にスリープさせて、タスク切り替え後に瞬時にレジュームするなど、Fast App Switchingを想像するとその動作がわかりやすい。このほか、インターネットラジオをバックグラウンドで流しつつ、他のアプリを操作する様子がデモで紹介されるなど、疑似マルチタスクの形態をとりながら、ごく自然な動作環境を実現していることが分かる。

PhotoPhoto 今回のアップデートで追加されるマルチタスク機能。これはそのデモストレーションで、起動中のゲームをいったん中断してそのまま他のアプリへと切り替え、そちらでの作業が終わったら、先ほど中断した直後の状態でスタートできる様子を見せた。従来まで、こうした切り替えでのレジュームには4〜5秒のタイムラグがあったというが、マルチタスク対応により一瞬で可能になるという

 だが今回、アップデート関連で最も大きなトピックになったといえるのが「IE9 Mobile」のサポートだろう。現在RC版がPC向けに提供されている「Internet Explorer 9」(IE9)だが、このIE9のハードウェアアクセラレーションへの対応やJavaScriptエンジンの大幅な高速化は、2010年春に開催されたMIX10で初めて公表された。その後、未対応だったCanvasタグやVideoタグの正式サポートなどを経て、HTML5標準への対応を一気に高めたIE9ベータ版が公開されたのが2010年9月のスペシャルイベントだ。IE9は、Chromeなどのライバル陣に引き離されがちだったブラウザ競争で、初めて同じ土俵に立ったMicrosoft初の自慢の先進ブラウザだといえる。

PhotoPhoto Internet Explorer 9がモバイル端末に登場。Windows Phone 7でも、ハードウェアアクセラレーションを使った高速描画が可能に。ちなみに最近、この手のステージデモでの鬼門となりつつあるのがWi-Fiを使ったインターネット接続。今回、バルマー氏の基調講演では一度も接続が成功しなかった

Photo 米Microsoftコーポレートバイスプレジデントのジョー・ベルフィオーレ氏

 このIE9のレンダリングエンジンやJavaScript実行エンジンが、そのままモバイル版として2011年中にもWindows Phone 7に搭載されることになるという。デモを紹介した同社のジョー・ベルフィオーレ(Joe Belfiore)氏は、モバイルプラットフォームでもハードウェアアクセラレーションが有効であり、50匹の魚が水槽で泳ぐHTML5のデモページをハードウェアアクセラレーションが有効化されたWindows Phone 7とそうでないiPhoneで同時に表示させ、その差を示して見せた。

 また実行速度の速さもさることながら、バルマー氏はPCとモバイルで同じHTMLコードを実行できることのメリットを強調している。スクリーンサイズの差さえ吸収できれば、もう今後はプラットフォームごとにHTMLやCSSを書き直す必要がないということだ。従来まで、モバイル向けWebブラウザはプロプライエタリな仕様のものが多く、それぞれで独自実装が行われていた。だが最近ではAndroidがWebkitベースの描画エンジンやChromeブラウザのV8 JavaScriptエンジンをv2.2 Froyoで正式実装し、これまで独自形式だったBlackBerryやwebOSがWebkit採用を進めるなど、PC界の標準がそのままモバイルの世界にも広がっていることが分かる。今回のIE9 Mobile採用は、その一端といえるかもしれない。

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